24 伴兆太郎が『番長』になったイキサツ
「エシオニア学園男子部の番長って、もしかして伴兆太郎の事ですか?」
「そうだよ、お前知ってんのか?
って、そりゃそうか、お前もエシオニア学園の男子部に通ってんだもんな。
あいつはそんなに有名人なのか?」
「そうですねぇ、始業式の日に、
男子部の中で最もガラの悪い十人ばかりの不良グループに
『態度が気に入らねぇ』
って因縁をつけられて校舎裏に呼び出されたんですけど、
リンチに遭うどころか、逆にそいつらを一人でボコボコにして、
伴兆太郎の方が無期限の停学処分になったんですよ」
ちなみに、不良グループをボコボコにしたのは伴兆太郎だけではなく、
他にもう一人居たのだが、それを言うと話が逸れていきそうなので、
莉伊汰はその事を伏せておく事にし、話を続けた。
「場合によってはそのまま退学という可能性もあったんですけど、
生徒会長が男子部の校長に掛け合った結果、
一週間で復学する事を許されたそうです。
その出来事があって、伴兆太郎はエシオニア学園においていきなり
『番長』の称号を得た訳です。
有名どころか、男子部の生徒なら皆知っている話です」
「見た目もバカだがやる事もバカな野郎だな。
それにしてもどうしてそっちの生徒会長が、
入学したばかりの荒くれ者の一年坊主を助けるような事をしたんだ?」
「不良グループの生徒達は皆、大企業や実業家の御曹司で、
学園に多額の寄付金を納めているという事があり、
学園で相当大きい顔をして威張り散らしていたんです。
なので特定の生徒に対するいじめや恐喝、
暴力行為が日常的に行われていたんですが、
学園側はそれを黙認していて、その事を生徒会長はずっと憂慮していました。
そこに入学式での事件があって、
学園はそれをいつものようにもみ消そうとしたんですが、
生徒会長が立ち上がって、不良グループを処分する事に成功したのです」
「じゃあ、その不良グループは退学処分になったのか?」
「いえ、伴兆太郎と同じ日付に復学していますが、
流石に十人がかりで一人の生徒にボコボコにされたのが応えたのか、
それからはグループも解散し、大人しく学園に通っているようです。
まあ、機を見てまた仕返しに来るかもしれませんけどね」
「その様子じゃあ返り討ちに遭うのがオチだろうな。
しかしまぁ、それだけバカみたいな腕っ節なら、
やっぱり二十人くらいメイドを揃えるのは妥当だろう」




