17 それぞれの思惑
紳士クンと静香がヒソヒソ声でそんな事を言い合っている間、
伴兆太郎と令太はそれぞれこんな事を考えていた。
まず伴兆太郎。
(俺が蓋垣の家に遊びに行くだと?
それは・・・・・・悪くない!
だが、問題はこのいけ好かん性悪女だ。
何としてもこの性悪女から、蓋垣を守ってやらなくちゃならねぇ。
その為には、何かしらの理由をつけて、
この女を蓋垣の家に行けないようにする必要がある。
その作戦は、今晩家に帰ってじっくり考える事にするか)
一方の令太。
(このヤンキーホモ野郎も蓋垣の家に来るだと?
そんな事させてたまるかよ!
何としてでもこの野郎は蓋垣の家の敷居をまたがせねぇ。
そうするにはどうすればいい?
とりあえず、帰って今夜あいつ(・・・)と策を練るか)
それぞれ考えがまとまった所で、
伴兆太郎は鋭い眼差しで令太を睨みつけながら言った。
「そうだな、ここは図書委員の姉さんの言葉に従って、
明日は二人で仲良く蓋垣の家にお邪魔する事にするか」
それに対して令太も、その視線を跳ね返すように伴兆太郎を睨んで言った。
「ま、悪くねぇ提案だな。
俺もここで喧嘩してぇ訳じゃねぇし、ここはお互い拳を収めて、
明日は仲良く蓋垣の家で遊ぼうじゃねぇか」
(な、仲良くしそうな雰囲気が微塵もない!)
今にも取っ組み合いの喧嘩を始めそうな伴兆太郎と令太を眺めながら、
紳士クンはつくづくそう思ったが、静香は満足そうに両手を合わせてこう言った。
「それでは話もまとまった事ですし、今日の所は解散しましょう。
乙子さん、明日は頑張ってください。
こちらのお二人が仲良く打ち解けられるかは、
乙子さんの仲立ちにかかっているのですから」
「え、えぇええっ?」
こうして明日の日曜日、伴兆太郎と凄木令太が、
紳士クンの家に遊びに来る事となった。
果たして紳士クンは、この二人を仲良くさせる事ができるのであろうか?
いや、それが土台無理な話なのは著者ですら分かっているのだが、
人生には、最初からうまくいかないと分かっていても、
それでも挑まなければならない事があるのだ。
だから頑張れ紳士クン。
負けるな紳士クン。




