11 紳士クンも乙子ちゃんも好きという結論
が、それはさておき、もはやこの場で完全に主導権を握った伴兆太郎は、
実に複雑な表情を浮かべている紳士クンを見やりながら言葉を続けた。
「だが、そんな俺の気持ちを、根底から覆す存在が現れた。
それがここに居る、蓋垣紳士の双子の妹の、蓋垣乙子だ」
「あぁ~・・・・・・」
嫌な予感しかしない紳士クンは、思わず心の声が漏れてしまった。
そんな紳士クンの代わりに、令太が強い口調で問いかける。
「それは、一体どういう事だ⁉」
それに対して伴兆太郎は、真剣な眼差しで紳士クンの事を見詰めながら言った。
「俺は中学時代、蓋垣紳士に告白したが振られちまった。
だから蓋垣に見合うようなより男らしい男になる為に、
このエシオニア学園の男子部に入学した。
そしてそこで、俺は奇跡的に蓋垣紳士と再会する事ができた。
が、それは瓜二つの双子の妹の方だった。
そして妹の方と言葉を交わすうちに、
俺は知らないうちにこの妹の方に心を奪われている事に気が付いた。
そう、兄の蓋垣紳士に勝っても劣らない程に、
妹も清らかで優しい心の持ち主だったんだ。その時、俺は悟った。
『あれ?俺ってホモじゃなかったんだ』とな」
「何っっっっだよそりゃ⁉
それはつまり、テメェは双子の兄から妹の方にあっさり心変わりしたってのか⁉
ついさっきテメェは、蓋垣紳士が好きだという気持ちは、
絶対に揺るがないとか何とか言ってただろうが⁉」
令太は今にも伴兆太郎に殴りかからんばかりの勢いでそう叫んだが、
伴兆太郎は何ら悪びれる様子も無くこう返す。
「そうだ!だがそんな俺の気持ちをあっさり覆してしまうほどに、
この蓋垣乙子は魅力的な女だったんだ!
俺はてっきり自分がホモなんだと思い込んでいたが、それは大きな間違いだった。
やはり魅力的な女に恋をする、健全な男だったんだ!
蓋垣乙子は、それを俺に気付かせてくれた。
だから彼女は、俺の恩人なんだ。どうだ、分かったか?」
伴兆太郎の番長然とした物言いに、
流石の令太も顔を引きつらせてそれ以上何も言い返す事ができなかった。
が、次の事だけはハッキリと分かった。
(結局コイツは、蓋垣が男だろうが女だろうが、
関係なく惚れてるって事なのかよ⁉)




