9 番長のカミングアウト
「は?はぁあっ⁉いきなり何を言い出すんだテメェは⁉」
伴兆太郎のいきなりのカミングアウトに、
令太は目ん玉が飛び出しそうなくらいにびっくらこいたが、
伴兆太郎はそんな事には構わずにこう続ける。
「正確に言えば、ホモだった、だな。
俺はこの見た目通り、ガキの頃から番長と呼ばれ、
喧嘩に明け暮れる毎日で、中学に入ってからもそれは変わらずだった。
他の男共は、周りの女子達にうつつを抜かしていたが、
俺は一向にそんな気分にはならなかった。
そんなある日、俺の今までの考えを根こそぎひっくり返すような奴が現れた。
それが今目の前に居る、蓋垣乙子の、双子の兄の(・・・・・)、蓋垣紳士という奴だった」
「蓋垣、紳士?双子の、兄、だと?」
令太はそう呟き、大きく目を見開いて紳士クンを見やると、
紳士クンは何とも言えない複雑な笑みを浮かべ、
右手の人差指で自分の頬をかいた。
そう、紳士クンは以前、
伴兆太郎とこのエシオニア学園で望まざる再会を果たしてしまった時、
再び言い寄られる事を避ける為、
自分は紳士クンの双子の妹で、
当の紳士クンは遠い外国(スパルタ王国)へ留学したと嘘をついた。
そして伴兆太郎はその嘘を信じたのだが、
どうやら乙子ちゃんの方にも胸キュンしてしまったようで、
結局紳士クンは、乙子ちゃんになってからも、
伴兆太郎に片想いをされるという事になっているのだ。
そんな事情の中、伴兆太郎は熱のこもった口調で続けた。
「そう。蓋垣紳士は、俺が今まで出会った事がない程に優しく、
心の綺麗な奴だった。今まで喧嘩三昧で、
目の前に現れる男は全員敵だと思うほどにやさぐれていた俺の心は、
そんなあいつの優しい心根にすっかり洗われ、知らない間に夢中になっちまった。
これが『恋』という感情だと気づくのに、そう時間はかからなかったよ。
そして驚いた事に、蓋垣紳士は俺と同じ男だったんだ。だからその時俺は気付いた。
『あ、俺ってホモなんだ』とな」
「何でそんなにあっさり自分がホモだって認めるんだよ⁉
そこはもうちょっと悩む所だろ!」
令太が鋭くツッコミを入れるが、伴兆太郎は力強い口調でこう返す。
「それは俺の中で、蓋垣紳士の事が好きだという気持ちが、
どんな事があっても揺るがないという確信があったからだ!
そしてその相手が俺と同性の男だと言うのなら、
俺はホモだと認めるしかないだろうが!」
「ぐっ・・・・・・」




