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マフルゲット大戦争

 日は進み、俺とフリルは森林地帯にいる。

 「ふんっ、尻尾を巻いて逃げなかったことだけは認めてやる!」

 フリルは鼻を鳴らしながら言う。

 「まあな。それに、どうせ逃げても探し出されるだろ。」

 「当たり前だ!それより、勝負内容の最終確認だけど、俺が放った20匹のマフルが全員見つかった時点でより多くのマフルを連れていた方が勝ち。それで大丈夫なんか?そんなことやらなくても、半分以上捕まえた時点で勝負は決まるのに。」

 「勝負は何が起きるか分からないだろ。」

 「まあな。それから、これは当たり前だけど、眠り草や毛玉の実を使うのは薬物を使った反則行為で即失格にするからな!」

 ええと、確かマタタビやキウイフルーツのことか。

 「そりゃあ使わねえよ。」

 「本当か?見るからに悪そうな顔をしているから平気で反則行為をすると思っていたぜ。」

 フリルの奴、言いたい放題だな。

 「確かに、フリルの言うとおりだ。道具を使ってもいい勝負なのに道具を用意しないから何か反則行為に手を染めるのかと思っていたが、そんなこと無かったんだな。」

 ラヴェーラはフリルの肩を持つし、俺ってそんなに信用されていないのかな。これでも救世主なのに。

 「さ、そろそろ始めようぜ!」

 「言われなくても分かっている!おい、そこのねーちゃん!」

 フリルはラヴェーラを指さす。

 「えっ!?私か!?」

 「他に誰がいるんだよ!いいから、さっさと開始の宣言をしてくれ!」

 「わかった。それなら、勝負、始め!」

 ラヴェーラは力強く開始の宣言をする。すると、フリルは俺の頭の上を軽々と飛び越えて茂みの中に入る。

 「よっしゃ!そこにいたのはアスナだったか!」

 フリルは早速一匹目のマフルを見つけていた。フリルはとっ捕まえたマフルを檻に入れたりしないで連れ歩くのか。それならチャンスはあるな。

 「おっ!そこにいたのはサキとヒヨリか!それから、そっちにいるのはマユか!」

 フリルは着実にマフルを捕まえていっている。いい調子だな。

 「レイ、そんな悠長にしていて大丈夫なのか?フリルはもう四匹捕まえているだろ。このままだとドンドン点数が離れていくぞ。」

 「大丈夫だラヴェーラ。むしろフリルに最後の一匹まで探してもらうのが狙いだからな。」

 「それがお前の作戦って言ってはいるが、このままの調子でいくと20対0で負ける未来しか見えないんだが。」

 「それでいいんだよ。」

 俺とラヴェーラがのんきに話している頃、

 「よしっ!マナとナオミはそこか!おっ、サクヤもそこにいたのか!」

 フリルは着々とマフルを捕まえていた。

 「あれでも勝てるというのか?」

 「もちろん。そもそもラヴェーラは勘違いしているかもしれないが、俺は別に真面目な勝負なんてする気無いから。」

 「どういうことだ?」

 「まあ見てろって。」

 怪しまれないように、俺もとりあえず探すふりを始める。

 「見つけたぞ、ヨウコ、モア!」

 どうやら、向こうは順調みたいだな。

 「よしよし、ミスズもユナもいい子だからこっちおいで!」

 さて、残りのマフルも半分をきったか。

 「こらこらルイ、ピリカ、それにユカ!そんなにまとわりつかれたら動けないだろ。」

 既にフリルはマフルまみれになっている。

 「さて、そろそろ準備を始めるか。」

 俺も勝つために行動を始める。

 「よし、ルミナもナターシャも大人しくしていたんだな。」

 流石はマフルを手懐けるプロ、マフル用の玩具も持っているんだな。

 「ライハもヒマリも、俺のことを引っ掻こうとしない!ほら、カナも叱って!」

 フリルは二匹のマフルに引っ掻かれそうになり、別のマフルに叱ってもらおうとするが、

 「まー。」

 マフルはのんきに鳴いているだけだった。そして、とうとうフリルはマフルを19匹も引き連れてきた。

 「なんだ?お前はまだ一匹も捕まえていないのか。今なら降参を認めてやるぞ!」

 フリルは鼻高々に言うが、

 「俺はこの状況を待っていたんだよ!」

 俺は靴と靴下を脱ぎ、足下くらいの高さで靴下を振る。

 「くっさ!おめぇ何するんだよ!」

 フリルは鼻をつまむ。

 「別に、嫌がらせが目的じゃねぇよ。真の狙いはこっちだ!」

 そう、俺の靴と靴下から漂う匂いを嗅いだマフル達は一斉に俺に飛びつき、最後のマフルもやって来るなり俺の脇に潜り込んでくる。

 「どうだ?」

 「どうだ?じゃねぇよ!そんなことしても俺が19匹捕まえた事実は変わらないだろ!」

 「何を言ってるんだ?決着は最後の一匹が捕まった時点で多くのマフルがいる方だろ?なら、今俺は最後の一匹を捕まえつつ20匹全部のマフルを連れているんだから勝ちだろ?」

 「うっ…確かに、捕まえた数を計測していない。でも、その靴下に眠り草の成分を染みこませているかもしれないだろ!ちょっと貸せ!検査してやる!」

 フリルは負けを認めたくないのか、手袋を装着し、何かの機械を取り出すと、俺から靴下を奪ってその機械を使って何かを計測している。

 「嘘だろ…本当にただの靴下だなんて…」

 フリルはショックを受ける。

 「レイ、お前一体どんな小細工を施したんだ?」

 「あっ、ラヴェーラも気になるか。本当はもの凄い分の悪いギャンブルだったんだけど、マフルが俺達の世界にいた猫にそっくりだって話しただろ?猫は男性が持つ強い汗の臭いに対して落ち着く反応を示すんだ。だから、フリルに捕まえられるだけ捕まえてもらって、後は根こそぎこっちに引っ張ることを考えたんだ。」

 「マジか…俺がマフルの事で負けるなんて…いいぜ、お前のことを救世主って認めてやるよ。足は臭いけど。」

 フリルはほっぺを膨らませつつ、そう言った。

 「最後のは余計だろ!」

 とりあえず、フリルに納得してもらえてよかった。

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