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もふもふとの遭遇

 「結構時間を潰せていそうだな。」

 サンレイド公国史を読んでいる俺の所にグラッドがやって来る。

 「世界史は読み尽くすのに時間がかかるからな。それより、あんたは国王として仕事をしないのか?」

 「まあな。俺がやるべき仕事は法律の制定や国立施設、臣下の任命の押印と、外交くらいだからな。基本は全部臣下が処理してくれている。それでも、臣下が身勝手なことをしようとするなら国王の権限でどうにか対処するが。」

 「へぇ~、国王権限なんてものがあるのか。」

 「そうだ。と言っても、今まで使ったことは二度しかないが。一度目はウェステリアの武力の全面排除を決行しようとした時、サーティアスはあのとおり覇王ちゃんが武力でサンレイドを纏めようとしているし、イースティアだって、平和主義が何処まで事実か分かったもんじゃない。そんな中で武力の放棄なんて正気の沙汰じゃ無い。だから俺は国王権限でそれを止めた。」

 「じゃあ、二度目は?」

 「あれもなかなかに強烈だった。国王制度を廃止しよう、だなんて馬鹿げたことを言われたからな。」

 「なんだ?この国ってスパイが大量に潜り込んでいるのか?」

 「スパイって略すな。スパイレストってちゃんと言え。でないと香辛料になっちまうぞ。」

 「あっ、済まない。俺の国ではそう呼んでいたから、つい癖で。それにしても、こんな分厚い本を持っていないとこの世界の独自の単語が分からないって不便だな。」

 俺は読んでいた本を置いて諸国文明録を両手で取り出す。流石に広辞苑一冊分なんて片手で持ち上げられない。

 「ん?なんで諸国文明録なんてわざわざ持ち歩いているんだ?」

 「いや、シャドウに渡されて…」

 「まあ、あいつは口下手だからな。大方、本を持つことの良さを布教しようとしたって所だろう。ただ、シャドウは言葉で意志を伝えるのが苦手だからな、そこら辺が起用に出来るといいんだけどな。それより、わざわざ諸国文明録を持ち歩くのも疲れるだろう。仕方ないからインフォを買ってやる。」

 「インフォ?」

 「インテリジェントフォンの略語だ。お前の世界には無かったのか?」

 「一応、俺の世界にもスマートフォンっていうのはあった。」

 「なら話は早い。早速買いに行くぞ!」

 グラッドは俺の手を引っ張り、俺達の世界で言うところの携帯電話ショップに連れて行った。


 「国王陛下、本日はどのような御用件で。」

 店員は頭を下げなら対応する。

 「ああ、この世界に新しく降り立った救世主に丁度いいインテリジェントフォンを渡そうと思ってな。」

 グラッドは軽く質問に答える。

 「それでしたら、直ぐにご案内いたします。」

 店員は俺達を直ぐに案内し、開いていた席に座らせてくれる。そうして数十分経つ頃には俺の手元にメタルブラックの落ち着いた感じのスマホみたいな機械が渡された。

 「そいつには諸国文明録が最初からインストルされているからそんな重たい本をわざわざ持ち歩く必要なんて無いぜ。」

 「ありがとよ、国王さん。」

 「さ、この国ではお前の行動に制限をかける気は無い。勿論、法律には従ってもらうがな。」

 「別に、救世主だから好き勝手させろなんて言わねえよ。そういうのは救世主じゃなくて荒くれ者のやることだ。」

 「おう、お前がこの国を気に入ってくれることに期待しているぜ。」

 グラッドは笑いながら去って行った。


 ウェステリアに融解されてから早三日、俺は既にウェステリアの国民と慣れ親しんでいた。

 「あら救世主さん、いらっしゃい。」

 「おばちゃん、肉味噌コロッケとニンニクトマトコロッケを二つずつちょうだい。」

 「はいよ。合計423レニーね。」

 「ほい。」

 俺は電子マネーカードで支払い、コロッケを食べながら森林地帯を歩いている。たまには森林浴なんてオシャレなことでもしてみようと思っていた。

 「ここら辺は日光が丁度いいな。」

 俺は暫く歩いて丁度いい広場を見つけると寝転がって残りのコロッケを食べ尽くすと頬杖をついてインフォを使ってネット小説の投稿サイトが無いか調べる。この世界に来て暫く出来ていなかったことだけど、久しぶりに異世界無双系のネット小説を馬鹿にしようと思っていた。そんな時だった。

 “にゅーん。”

 “みょーん。”

 “みゃおん。”

 数匹の猫みたいな動物が俺の回りに纏わり付いた。

 「ん?猫?いや、分かんないな。」

 俺はインフォで猫擬きを撮影し、検索項目でこの生物について調べようとする。すると、

 「おい、そこのお前!」

 中学生くらいのガキが駆け寄ってくる。

 「俺か?」

 「お前以外に誰がいる!俺の大切なマフル様達に何をする!」

 「マフル?この生き物はマフルっていうのか。」

 「ああそうだ!マフル様達は俺の大事な仲間だ。」

 「仲間?一体何の?」

 「そうか、お前が王様の言っていた救世主か。言っとくが、俺はまだ信用していないからな!俺はウェステリアが誇るスパイレスト組織の隊長、フリルだ!」

 「フリル?男のくせに随分可愛らしい名前だな。」

 「可愛らしい?お前の世界じゃ、フリルって可愛らしいのかよ!」

 「ああ、女ものの服についているひらひらした奴のことをフリルって言うぜ。」

 「いいか、この世界ではフリルは鋭いものって意味があるんだ!解ったな!」

 「なるほど、大体分かった。」

 「それより、俺のマフルから離れろ!」

 「って言っても、コイツらから俺にくっ付いてきたからなぁ。」

 「ホントかぁ?ならマフル寄せで勝負だ!明日の朝、俺がこの森林に20匹のマフルを放つ。より多く引き連れた方の勝ちだ!お前が勝てば、お前のことを信じてやる!」

 「面白そうじゃん。やってやるよ。」

 「いいか、尻尾を巻いて逃げるなよ!」

 フリルはそう言うと軽い身のこなしで去って行く。それと変わるように俺のいた壁面から轟音が鳴り響き、一台の戦車が壁を破壊しながらやってきた。戦車って事は、おそらくあれがホーンワームだろう。そんなことを考えていると、ホーンワームのハッチが開き、中から懐かしい顔ぶれが見えた。

 「救世主様、ご無事ですか!」

 「お兄ちゃん、久しぶり!」

 出てきたのはフルールとベルであった。

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