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襲撃は何時も突然、誰にも言わずに忽然

 「今日はいろいろ楽しめたなぁ。」

 ラフワールによるサーティアス観光の帰り道、俺とラフワールを乗せた車はグランドとウィンドの乗るバイクに誘導されながら夜の街を走っていた。

 「そう?救世主に喜んでもらえるなんて鼻が高いわ。」

 一応ラフワールは喜んでくれているみたいだが、目が笑っていないからどうとも言えない。

 「おい、本当にそう思っているのか?」

 俺はラフワールに対する疑いからそんなことを言う。すると、

 「あんたね、ラフワール様を侮辱しているの!?」

 前の座席に座っていたバンが睨みながら言う。

 「まさか。例え自分たちの切り札になるような奴相手でも余裕を見せる姿、素晴らしいものがある。流石はお前達の覇王だな。」

 俺は内容がペラッペラなことを素晴らしいかの如く言う。バンみたいなある種の狂信者には、これ位適当なことを言っておけば、その場の流れで納得してくれる。

 「あら、男のくせによく分かっているじゃない。素直にそう言っていれば、あんたを殺す必要なんて無いわね。」

 ほらな。ただ、まさかバンから命を狙われていたとはな。

 「やめなさい、バン。あなたまた救世主を殺すつもりだったの?」

 ラフワールはバンに対して呆れるように言う。

 「待て待て、バンは前にも救世主を殺そうとしたのかよ。」

 ラフワールの言葉に俺は驚いた。理由は二つ。一つはバンが救世主を殺そうとすることをラフワールは把握していたこと。もう一つは俺の前に来た救世主がバンに殺されていたことだ。

 「そうなのよ。バンは救世主だろうと、男だって分かった途端にすぐ謀殺しようとするのよ。」

 ラフワールはため息をはく。

 「相手は男なのですよ!どんな卑怯な手を使ってくるか分からないですから!」

 おいおい、謀殺は卑怯じゃないのかよ。呆れて声も出ないが、そんなことを言えばバンが何をしでかすか分かったものではないから黙っておく。そうしていると、無事にラフワールの城にたどり着く。

 「ふぅ~、ようやく着いたぁ!じゃあ一っ風呂浴びるかぁ!」

 俺は車から降りて軽く伸びをする。いくら昼間に温泉に入ったと言っても、家の風呂はまた別格だ。一人でゆっくりと入る風呂に勝るものなんて無いからな。

 「おいおい、お前また風呂に入るつもりかよ。」

 「そんなに風呂に入っているとふやけて消えちまうぞ。」

 グランドとウィンドは俺のことを笑う。

 「そのまんま消えてしまえばいいのに。」

 そんな二人の会話を聞いてバンは呟く。

 「…」

 そんな中、ラフワールは眉をしかめる。

 「ん?どうしたんだ?」

 俺は思わず質問した。

 「分からないの?」

 ラフワールは険しい顔を崩さないまま何時ものような口調で俺に言い返し、

 「敵襲よ!」

 ラフワールは叫ぶと俺の金の袋を蹴り飛ばす。

 「うぐっ…」

 俺はあまりの鈍痛に呻き声をあげながらうずくまる。

 「うわぁ…」

 ウィンドは言葉を失い、

 「想像するだけで、痛い。」

 グランドは痛そうな仕草をしつつも俺を持ち上げて物陰に隠れる。すると、そのタイミングで夜空を舞う飛行機から爆撃が放たれ、辺りに爆発が発生する。

 「なんだ、この世界!爆撃機の製造技術まであるのかよ!」

 「そうね、あれはつい最近出来たばかりの兵器よ。ホーンワームの大砲の技術が活かされているわ。」

 俺の言葉にラフワールは楽しそうに返す。移動出来る大砲の事を話しているから、ホーンワームっていうのはおそらく戦車のことだろう。しかし、ホーンワームって確か芋虫の英名だろう。若しかして細っこいのか?

 「気を付けなさい。こんな大雑把な攻撃を仕掛けてくるのは、ウェステリアよ!デスベロス、レイを警護しなさい!ウィンドとグランドは私と一緒に降りてくる奴らを迎え撃ちましょう!」

 ラフワールは運良く無事だった車から戦斧を取り出す。すると、爆撃機は城の屋根上よりやや低い位置でホバリングし、そこからがたいのいい男が飛び降りてくる。

 「よう、久しぶりだな!覇王ちゃん。」

 男は軽い口調で言う。

 「相変わらず、人のことを考えない攻撃方法ね。」

 「何言ってんだ!敵国の事を考える戦争があると思うか?」

 「貴方には、領土にする国が少しでも綺麗で使える方がいいって考えは無いのかしら?」

 「無えな!ぶっ壊れたら一から作り直す!人が減れば人口が増えるように努力する!それがウェステリアのルールだ!」

 ラフワールの言葉にも男は笑いながら対応している。

 「なぁ、あいつ誰?」

 「あの男はウェステリアの国王、グラッド。」

 「じゃあ、あいつが話しに聞いた粗暴な暴君で独裁者?」

 「ん?口調こそ乱雑かもしれんが、ウェステリアは正統な王制国家だ。グラッドも普通によくある王のはずだ。」

 俺の疑問にデスベロスは解りやすく答えてくれる。

 「おっ、そこにいる奴がサンレイドに降り立った救世主か。確かに、戦えなさそうな見た目だが、救世主の存在は大きい。そいつは貰っていくぞ!」

 ウェステリアの王、グラッドは見るからに重そうな大剣を持ち上げる。

 「悪いけれど、譲る気は無いわよ。」

 ラフワールも負けじと戦斧を持ちながら睨む。

 「おいおい、誰が何時主君同士で戦って勝った方が救世主を手に入れるって言った?俺がここにいるだけで、お前は俺に救世主を渡さざるを得ない。」

 グラッドは上を指さし、ラフワールが見上げると、そこにはさっきの爆撃機が停滞していた。

 「お前達はこの爆撃機をどうにも出来ないはずだ。それに対して、俺は指示一つでここの商業施設を木っ端微塵に出来る。戦う必要なんて、端から無いんだよ!」

 グラッドの言葉通り、ラフワールは国民と領地を人質にとられている状況で攻撃をすることは出来ず、

 「救世主を、レイを渡せば撤退するのね。」

 「そうだな。救世主にはそれだけの価値があるんだ。それが手に入るなら別にすぐ帰ってもいい。」

 「そう。レイ、グラッドの所に行きなさい。ウェステリアに行きたがっていたみたいだし、丁度いいでしょ?」

 ラフワールは事実上の降参をした。

 「そうか。案外、サーティアスも限界が知れたな。それじゃ、宜しく頼むぜ、国王さん。」

 俺はグラッドに腕を握られながら爆撃機に乗せられ、ウェステリアに連れて行かれた。

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