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月海の願い  作者: Y.A.&H.S.
第2章 偽りの代償・督促
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第6話 『ギセイシャ』の心敵知らず

 

 レイリーに連れられて二階に上がるとベリアル・チャニング、ケニス・カースティンがいてカースティン組の4人が揃った。顔のよく似たベリアルとケニーは服を入れ替えれば、誰にも分からなそうだ。まぁ、口を開けば分かるが。


「御機嫌よう、イェーツ嬢。貴方もカーク君を見に来たのですか?」


 後ろの方に座っていたベリアルは人嫌いではあるが、挨拶をするし、話を振ればそれに答えるぐらいはする。


「おはよ、セレナ」


 その前に座っているケニスは人と話すことすら嫌う。私にだけ挨拶をする程度。もう1人いるカースティン組は5人グループではなく4+1人グループと見られる。そのもう1人のパーディッタは私のことをかなり疎んでいる。私が何をした訳ではないが、一緒にいると空気が悪くなる関係だ。


「イェーツ嬢、うちの古ダヌキがセネット夫人を操ろうとしているようです。お気をつけて」


 ベリアルは、私の過去を知っている。いつから知っているのかは知らない。ただ私があの家に縛られないように、私に告げ口をしたり、ラモーナ義母さんやライラさんが側にいるように取り繕ってくれる。


「そう。ありがとうベル」


 彼はただ、首を振りまた離れていく。彼の背中はどうも頼りにくくて、背中は預けても体を任せて体重をかけるようことは出来ない。あくまで、自立して心の壁で仕切られた向こう側同士の関係。それはとても曖昧で、私も彼もいつか壁から遠くに歩いて行って、壁を作ったことすら忘れて赤の他人になる。そんな、裏と表に分かれる鏡の中の世界はいつか割れて消える。鏡は割れて、私の顔を映さなくなる。割るその機会はあと数年。それまでに割れなかったら曇った鏡をズルズルと使い続けるでしょう。


「セレナ、パーディッタいた」


 向こうを指差したケニスはまた黙る。指差した先にはもう1人のカースティン組のパーディッタ・カースティン。そちらには気づいていないが、仏頂面の顎を組んだ手に乗せ、ジトリと下を睨みつける。その先にはカークがいて、私のせいかな、と思うと少し心が痛い。


「ねぇ、セレナ。パーダ呼んでもいい?」


 レイリーはパーディッタのことを愛称で呼ぶ数少ない人間だ。兄ですら『パーディッタ』と呼ぶのにね。そう視線を向けた先ではケニスが膝を抱えて観客の1人になっていた。

 こうなると此方からは何もできない。勝手に自分の世界に浸らせておく。


「えぇ、私は構わないわ。けれど、パーディッタは私のことが苦手でしょう?あまり来たがらないんじゃないかしら」


 それでもまずは呼ぶわ。とレイリーはパーディッタに手を振った。気づいた彼女は振り返したが私たちを見ると、不機嫌そうにまた下を見た。

 彼女は来ないだろうと下を見ればちょうどカークの番。

 チョクチョク練習してした釘爆弾をイメージした魔導は上手くいったが、火薬多すぎだ馬鹿め。

 私は風と光だから助けられない。灰髪2人組もダメ。レイリーは論外。これはパーディッタしか無理ね。ああ、ちゃんと補助してくれていた。嫌そうな顔だけど、これから消えるわ。下に降りると、灰髪組も付いてきてカークから私を庇うように立つ。全くいくら説教しても足りないわね。魔力量が1番大事だって何回も言ってるのに。

 そう考えていると、パーディッタも降りてきていた。


「戦闘中にボケっとしてると、死ぬぞ?あと、周りの被害考えろ、クズ。もし、防壁無かったら何人死んだと思ってやがる」


 それだけ言うと、スタスタと出て行ってしまった。何よ今の、感じ悪。でも、正論だから仕方ないところもあるけれど。


「パーディッタの言う通りだ。今回は自分で鎮められたから良かったが、毎回魔導の制御に専念させてくれる戦場がある訳じゃない。今回は0点だ」


 すみません、と小さく縮こまるカークの罰を考えていると、ライラさんがレイリーに連れられて走ってくるのが見えた。


「ケニス!セレナ!ベリアル!大丈夫なの?!パーディッタはどこ?!」


 腰まであるオレンジの髪は棚引き、編み込みのされた長い長いロープのようなそれは艶やかにしなっている。左のコメカミの明るい茶色のメッシュが柔らかに主張し、髪とお揃いのオレンジの瞳は不安げに震えている。


「パーディッタ嬢なら先ほどお帰りになられました」

 ライラさんはベルがそう言うとホッとしたように微笑んだ。

「イェーツ、セレナ来てくれ」


 ノックスさんに呼ばれ2人の後ろをついていくと、話の内容はやはりカークの昇格の是非だった。他の金ランクの人の意見は拮抗していて、保護者兼指導者の私と受付嬢の纏め役のライラさんを呼んだそう。


「奥の方で口論、というより罵倒のしあいをしている2人は放っておいてくれ」


 カインとアベルの従兄弟同士の不仲は有名で、ノックスさんも手を焼いている。チラリと軽く流し目をしたライラさんはため息を吐くと会議の司会を受け継いだ。


「分かりました。副ギルド長及び纏め役としての意見ですが、不合格。しかし、一年の挑戦権剥奪、報酬の没収は無しです。力を使い慣れてない子供は道具を使えるようになってから。使われているうちはパーティメンバーに被害対策が必須。いくら力を持っていても、それはただの足手まといです。

 ライラ・イェーツとしての意見ですが、昇格には賛成です。魔力量、攻撃力、制御共に問題ありません。威力が強すぎたとはいえ独自の魔導を開発できるのですから、基本ソロか保護者同伴の彼は問題を起こす事はないでしょう」


 スルー能力の高いライラさんはいつも通りに会議を進める。私は能力はあるが経験が少ない。とだけ意見して、ただ流れに任せてレイリーの淹れた紅茶を啜った。

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