幸せになれない僕
結婚を誓った君は人形になってしまった。
君は今、君の小さな家の椅子に座っている。まるで飾られているようだ。
僕は悲しみに明け暮れた。毎日、君の家に通い一日中泣いていた。そんな僕を幼馴染はいつもそばにいて、励ましてくれた。
どれくらい時がたっただろう。僕には家族ができた。
幼馴染のおかげで立ち直ることができた僕は、優しい彼女と永遠の愛を誓った。子供もいる。とても幸せな暮らしをしている。
もう、君の家にも行かなくなった。
ある日、昼寝をしていると君の夢をみた。起きても君のことが頭から離れず、君の家に行くことにした。すると、人形の君が座っていたはずの場所になにもいなかった。いてもたってもいられず、まわりの住民に話を聞き、君が隣町へ行ったことを知った僕は飛び出した。
隣町へ行く馬車の中、色んなことを考えた。
君は優しいから妻子がいる僕に会わずに行ってしまったんだろう。きっと、君は僕をまってる。まるで物語のようじゃないか。やはり、君は僕の運命の人だったんだ。
町に着くとすぐに、あの時の君が歩いているのが目に入った。こんなにもすぐに会えることに運命を確信し、今まで押し殺してきた感情が涙になって溢れそうになる。
声をかけようとしたその瞬間、
「× × × ×!そろそろ帰るわよ」
懐かしい君の声の、君にそっくりな奥さんと優しそうな旦那が僕の知らない名前をよび、3人は人混みの中に消えていった。
冷水をかけられたような気分になった。
なぜ、君が僕をずっと待ってるなど、とち狂ったような事を考えていたのか。そもそも、妻も子供もいるのに会ってどうするつもりだったのか。
家にもどると、幸せな暮らしが待ってる。しかしもう、彼女や子供を今までどおり愛することは出来ないだろう。
きっとこれは君と彼女を裏切った罰なのだ。