囚われの姫と仮面少年
初めての投稿で見直しなしの一発勝負とさせて貰ったので、変な文になっていたらすいません。
「これが、、異世界??」
見たことのない場所。謎のステータス表。本当に信じてはなかったが、本当に飛ばされるとは思わなかった。でも、私は帰る事出来るのだろうか?
「僕、か弱い女の子が好きなんだよね。」
付き合って5日目の彼氏に急なカミングアウト
これ今週何回目だろうか、なぜそんなに私と付き合うのを拒むのかは分かっている。
柳生美佳子。親子代々通ってる道場で柔道や空手などを習ってから、類い稀なる才能とひたむきな努力により私は中学生にして最強のヤマトナデシコになった。私はそして、華の女子高生となり恋愛に目覚めた。だが、恋愛は柔道より簡単なものではなかった。高校生活の最初は自分で言うのもなんだが、容姿もいい方なので結構の男子から言い寄られたが、何故かみんな3日も経たずに別れてしまう。もうすぐ夏休みとなるのに告白された回数は30回くらいだった気がする。全てにおっけーしたわけではないが、たしかに途中から無理だろとも思ったが
「必ず、別れたりしないから」
と言い信じるも、、3日後には
「ごめん。やっぱり、無理なんか。」
と言ってくる。何が無理なのか具体的に言ってほしいものではあるが、私はそれ以上に口約束でも、破るのなら、二度とそんなこと口にしないでほしい。
もし、嘘でそんな事言うなら、思いっきり殴ってやりたいが、そんな事をしても無意味だし、私は人を傷つける為に武術を習ったのではない。それにもう武術はやる気はない。
「あー、彼氏欲しいな〜。」
そんな事を思いながら、私はいつもの通り帰り道を歩いていた。道場に行かず、遊んでばかりである。けど、何も良いことはないあるはずもない。全て3日で終わる恋愛だから、あー考えると泣けてくる。やっぱり、私に恋愛は無理なのだろうか?だが、告白してくるものは多い。一度女性でも行ってみようかな?結構良いかもしれん。歩きながらそう考えていると、私気づかないうちに変な路地に入っていた。可笑しい私は何か考えていても、こんなふうに間違えてりすることは一度もなかった。すると、私は後ろから、気配がしたので気配がする方向へ私は誤って手刀をかますと、バシっと鈍い音がした。振り向くと、変な格好の変な人がいた。
「イッター!」
「あ、ごめん。」
そこにはフードを被ったやけに怪しいというかこんな格好で歩いていたら、間違えなく目立つのになぜ目立たないのだ?
「いたいではないか!」
ものすごく痛そうにしながら、叩かれたである箇所を抑えている。これは私が悪い謝らないと
「すいません。不審者かと思った。」
「不審者!?まぁ、間違えられても仕方ないか。」
そう言ってフード少年は立ち上がった。
「感知能力も筋力も情報以上と。、、本当にすごいな。」
「?どうかなさいました?」
「ん?いや、なんでも良い」
「まぁ、それはいいとして、今の世界に満足してる?」
この子供は何を言っているのだろうか?
「君、大丈夫??」
「私はこれでも、156歳の魔法使いだぞ。」
「はぁー??」
何をおかしな事を言っても全てその格好が納得させてしまう。正直格好だけ見たら納得せざるおえない。
「どうなんだ?言ってみろよ。」
「、、満足はしてないですね。」
なんで、こんな事を小学生くらいの変な子に言わなければならないんだろ?
「じゃあ、おまえ異世界に興味はないか?」
「異世界??」
今日は変な日だ。全く知らない小学生に異世界に興味があるか聞かれてしまうなんて
「楽しいなら、行ってみたいかも」
「よし!なら良いな。」
そう言うと、この自称魔法使いの小学生は変な道具を出して何か準備し始めた。
「これを、、こーして」
「あのー?」
「あ、少し待っててくれ」
そう言ってごにょごにょ言いながら自称魔法使いが準備している事少し見ていた。
「これでよし、、、おい!」
「はいはい。」
「この四角形の中に入って」
そう言って、白色で書かれた四角形真ん中に立つと
「よし。とりあえず、スキルとかはこっちで決めとくから。」
「はぁー。」
「それと、あっちの世界着いたら、降りた場所に少し整備された道っぽいのがあるからそれを辿って行ったら、町に着くとはずだ」
「、、そうですか。」
ん?これはそう言う遊びではないのか?いまいち信用出来ないが大丈夫か?
「では、転送!」
すると、私の入っていた白い四角形が浮き上がってきて私を覆った。
「あの、四角形なんですか?」
「一応、異世界に移動するためのゲートみたいなものだけど」
へぇ―じゃあ、私異世界に行けるんだ。本当に結構ガチそうだし……
「いや、マジで行くの?」
「マジも何も行くために四角形中に入ったんじゃないんですか?」
あ、マジか。結構流れできちゃったけど、行きたくはない。正直。でも、これも運命かな。オークに陵辱されなければ良いや。
「わかった。もう良いや。」
「あ、そうですか。 」
もし私がどんな運命になっても、受け入れるつもりではあるから、フラれても、負けても、怒られても別に気にはならないが、異世界転生はびっくりだよ。
「それじゃあ、もうそろそろ転成されると思うので」
「あ、はい」
それに何か理由があって転成されるんだろうに決まってる。理由なしだったら、もう……とりあえず、誰か殴ろう。
「あ、それと、町に着いたらカステルって店を訪ねてくれ。そんで、その店にいる。ロイスという女にマホトマに転送された者と伝えてくれ」
「あ、わかりました。」
「あと、魔物が出てくるがおまえの武器はない。が、素手で十分戦うことはできるから心配することはない」
魔物が出てくるんだ。何一つ良くはないが、まぁ、とりあえず頑張ろう。
「あと、最後に」
まだ何かあるのだろうか?
「あの世界を助けてあげてくれ」
「あ。」
私はこう言う誰かに救いを求められるシチュエーションに弱い。だから、少し緊張感みたいなのを感じてしまうが、もう異世界って時点で心臓バクバクでよくわからないのに、さらに、世界を救えって正直よくわかんないし、どう助ければ良いのかそれすらもわからない。今私の背に乗ってる重りはとんでもない物だ。
「それでは、頼む。」
けど、こんな大変そうな事が楽しく思える気がして仕方がない。
「はい。行ってきます。」
そう言って、ニコッと笑い返すと、突如目の前が真っ暗になってなにもかも消えた。
物分かりがいい子だったな。
ゲートが一瞬で消えてあっちの世界にあの子が送って行かれる時、最後笑って行ってくれて良かった。
死んだような顔をされたら、それこそ行かせにくいと言う者だ。どうか、どうか救ってくれる事を願って君の事を見届けてあげよう。だが、少しだけ寄り道してから帰ろう。私はもう少し故郷を見てから帰る。どうかその間無事でいてくれ。
やっと着いた異世界は開始ちょっとでもうくじけそうだった。正直少し整備した道らしきものを見つけるのですら、一苦労だった。けど、道を見つけてからそこまで、辛くはなかった。少し整備した道と言うか、全然獣道と変わらない。とは、言えひとまず街に向かって歩いていると言うのが現状である。とりあえず、今の所魔物が出て来てないのが一番の救いだ。出て来てないと言うよりか、見つけてもスルーして来たと言うべきであろう。
大蛇みたいな魔物。スライムみたいなの。私はあまりゲームをやらないからわからないが、よく3個年上の姉がやってたので覚えている。
そうこうしていると、峠みたいなところに着いた。
少し景色が綺麗だった物で上を見ていた。
「街は…あった。」
下の方にそれなりに大きな街があった。
「あれかな。」
まだ少し距離があるので走っていくことにした。坂を下っていくと、途中で足が何かに引っかかってしまった。何に引っかかったのか確認する。
「シャー!」
それは先ほど、一度確認した魔物の大蛇だった。
(うわ、面倒なことになってしまった。)
そう思いながら、逃げ切ろうとしたら、後ろで女の子が倒れていた。どうやらこの蛇はこの女の子を食べようとしていたら、私がこの大蛇の尻尾を踏んでしまったそうだ。だが、人の命がかかっているなら、戦わないで何の為に武術を習っているのと言うのだと言う話だ。けど、私は…
そう考える私の手は震えいた。
「シャーッ!」
こちらを威嚇してくる大蛇。人の命のために戦おう。ここは戦おう。その大蛇ある程度の距離を取り、大蛇の様子を伺いつつ攻撃のチャンスを伺う。すると、しびれを切らしてその長い首で私に噛み付こうとして来た
「気をつけて!そいつ毒を持ってるから」
と何処からか聞こえた。
「シャーー!」
大蛇はの怒涛の攻撃をひらりひらりとかわしていく。
攻撃しないといけないのだが、私はもう武道はやらないと決めた。
私はその攻撃スッと交わして大蛇の懐に入り、正拳突きを決めた。
すると、大蛇こちらに向けて、倒れて来た。倒しか?と考えていると
「シャー」
大蛇は鳴きながら、私の肩に思いっきり噛み付いて来た。
「この!」
剥がそうとしても、なかなか剥がれてはくれないので
「これで、どうだ!」
そう言って、大外刈りで大蛇地面に叩きつけると噛み付いていた。頭がコテっと落ちた。
「フー、これで良いかな。」
なんとか勝つことができたが、次は勝てるとは限らない。サボって自主トレをしたなかったからだろうから、少ししなきゃな。
それは良いとしてい、これをどうしようか?それとさっきの声は一体?声がした方向を見ると、小さな女の子が起き上がって立ち上がって拍手をしていた。
「すごいわ。あなた。毒大蛇を素手で倒すなんて」
女の子はこちらに寄って来て、不思議そうに私の事を回りながら見ていた。
「あの〜。ちょっと……」
「そういえばあなた、さっき噛まれていたけど大丈夫??」
すっかり忘れていたが、私は噛まれていたのだった。けど、不思議と傷跡はあってもじわじわ毒が広がっていくような感じも痛みも立ちくらみもなかった。もしかして、あの魔法使いが耐性的なものを少し付けてくれたのだろうか?
「さっきから、毒っぽい痛みがないんだよね。」
「もしかしてあなた平気なの!?」
驚きながら聞くと言う事は相当すごい事らしい。
「平気というか、、、それより…」
「すごいわ!あなた!」
そんな事を話していると女の子の顔はドンドン笑顔になっていく
「でも、服はボロボロね。そうだわ!私の家まで来て!」
「だから!」
「さぁ、こっちよ!」
(頼むから、話を聞いて〜!)
その子に手を引かれながら、街の方へと歩いていく。
「私はクーシャ。あなたの名前は?」
「美佳子。柳生美佳子。……あの、ちょっと待って!」
そう言って掴まれている手を払うと
「どうしたの?」
「さっきからずっと待ってって言っているんだけど」
そう言って女の子はぁ!っとした顔をさせて
「ごめんなさい。私あまりにあなたが素敵だから、少し聞こえてなかったわ。」
「そ、そう。なら良いけど」
「それでどうかしたの??」
そう言ってやっと話を聞いてくれた
「私、カステルって店のロイスって人に用があるんだけど」
「カステル……あ!ロイ姉に会いに来たのね!」
ロイ姉と言うくらいだから、この子知人か何かか?
「知ってるの?」
「いいえ、知らないわ。」
じゃあ、そのロイ姉呼びはなんなんだ。すごい知ってる感じしてるんだけど。
「あ、そう。」
「でも、お兄ちゃんなら知ってるわよ。」
お兄さんが居るのか……いかんいかん!お兄さんが居るからと言って彼女居るとか聞きたくなってはダメだ。
「お兄さんの今居るところわかる?」
「多分家にいると思うわ。ちょうど家に着いてると思うけど」
家に着いてると思うけど、という事はお兄さんは学校か何処かに言ってるのかな?
「そうなの?なら、お家連れてってくれない?」
「分かったわ。行きましょ!」
また走って行きそうになったのでクーシャが引っ張る手とは逆向きに手を引っ張った。
「まだ何かあるの?」
「少し聞きたいこともあるから。歩いていかない?」
「そうね。私もあなたの話が聞きたいわ。」
そして、クーシャの足取りがゆっくりなったのを見て、私はゆっくり歩き始めた。
「美佳子は…」
「美佳で良いよ。」
子をつけられるのは昭和くさくて嫌だ。
「分かったわ。美佳はどこから来たの?」
どう説明したら良いだろうか?少し分からないが
「日本と言う遠い遠い国から来たの。」
「へぇー。そうなの。」
こう説明するしか他ならない。これ以外にいい言い方もないし、本当のことを言うのがベストだ。
「とても強いけど、美佳は何かやってたの?」
「あーうん。少しね。」
昔の事はあまり思い出したくはない。というか、辛すぎて今でも涙が出てくる。
「どうして泣いているの?」
「いや、何も」
おっと、本当に涙をこぼしていたようだ。涙を拭くと
「今度はこっちが聞いてもいいかしら?」
「えぇ、良いわよ?」
「私あまりこの世界のことに詳しくなくて、ちょっと教えてもらえない?」
そういうとうーんっとクーシャは考える。その姿は少し可愛らしく、妹にしたい。
「ごめんなさい。私もあまりうまく話せないから、お兄ちゃん聞いてみたら?」
「分かった。ありがとう、クーシャ。」
「うん!」
ニコッと笑ってくれるその笑顔はやっぱり可愛らしい女の子そのものである。
「そういえば、いくつなの?」
「10歳よ。」
「へぇ〜」
私の5歳下とは思えないほど、しっかりしてそうだな。
「美佳は」
「15よ。」
「私と5歳も変わらないの!?」
そんなに驚かれることなのだろうか?正直それぐらいに見えるのが妥当ではないのか?
「そうだけど、どうしたの?」
「いや、強いし、大人っぽいからもっと年だと思ってたわ。」
なるほど、確かに少しこの世界の女の子の顔つきは10歳だとしても、少しより子供っぽく見える。そうなると、私の顔も少し年に見えても仕方ないか
「そういえば、さっき死んだフリしてたわよね?」
「よく分かるわね!流石、美佳。」
やっぱりそうだったんだ。もしやられているなら、元気すぎるのが不自然すぎる。
「でも、なんで?」
「あの蛇はね、息をしてない生物を食べない習性があるから、死んだフリをするの」
なるほど、そうすれば、食べられずに、やり過ごすことができると
「でも、それでも、食べられることがあるから、少し注意しないと死んじゃうわよ?」
「なら、私は助けてよかったのか?悪かったのか?」
「分からないけど、無事だったし良かったんじゃないかしら?」
確かに、どちらにしろ無事ならいいか
「それと、お兄さんは学校にでも行っているか」
その話をすると、クーシャは少し寂しそうな顔をして
「お兄ちゃん、魔法学校に行ってるの。」
「そうなんだ。何のために通っているの?」
「冒険者の資格を貰うためよ」
なるほど、冒険者になるためにクーシャのお兄さんは学校に行くのか
「学校を卒業した魔法使いは魔法で使う道具などの売り買いが認められているの」
「へぇ〜。」
色々と物入りなんだなこの世界も
そんなことを色々と話しているとあっという間に街へと着いた。近くで見ると、意外と街は活気付いた感じでとても賑わっていた。
「楽しそうね。みんな、何か今日あるの?」
「いいえ、いつもみんなこんな感じよ?」
そうなのか。でも、私たちの世界も昔は毎日これぐらい活気付いてはいたのかもしれない。
「私の家はこっちよ。着いてきて。」
「あ、うん。わかった。」
そうクーシャが指をさすのは、街中から外れた少居住地のような感じがする場所だった。私はどちらかというと、このうるさい感じは好きではなかったので、正直嬉しかった。なんでかは忘れてしまったが、少し嬉しかった。
路地に入ると二本に別れた道を左に行くと少し大きな建物が一つあった。
「ここが私の家よ。」
「ここがクーシャの。。。」
見た感じは洋画の昔事をテーマにしたストーリーに出てくるようなおうちに似ていた。少しボロくて、ちょっと広い庭がある、そんな感じであった。すると、家の後ろからボンッとなる音が聞こえた。
「あ、お兄ちゃんいるみたい」
あ、それでお兄ちゃんいるのわかるんだ
「ちょっと呼んでくるから待ってて。」
そう言ってクーシャは兄を呼びに裏庭へと消えていった。周りを見渡してみると、小さい子がそこらへんで遊んでいたり、お母さんが子供を連れて一緒に買い物から帰ってきていたり、色々な姿が見えた。 どことなく懐かしい感じがするが、この懐かしさは今はもう感じることのできなくて、また感じる時はまだまだ先の未来なんだろうなぁーというような遠い目をしていた。
「お兄ちゃん、ちょっと来て!」
「待って!クーシャ。せめて、杖だけは降ろさせて」
「良いから!早くこっち来て」
クーシャの声っと少し高めの声がこちらまで響きながら、その声に音源はだんだんとこちらへ近づいていく
「美佳。これが私の兄のサラよ。」
「よろしく……」
本当にお兄さんだろうか?長い髪の毛があたまにフードを被っていてもよくわかるくらいに長かった。
「お兄さんだよね?」
「そうよ!少し可愛らしい声をしているけど、立派な私の兄さんよ。」
少しどころか、後ろから声をかけられたら間違えなく、男と勘違いするだろう。
「あ、あの…」
「あ、すいません。蚊帳の外で。」
「く、クーシャこの方は?」
「さっき私を助けてくれた勇敢な方よ!」
「へぇ〜。そうなんだ。」
ジーッとこっちを見ているのはなんとなく視線を感じるのでわかる。
「お兄ちゃん!そんな格好してないで、ちゃんと喋って!」
「ちょっ!クーシャ」
強引にローブを脱がそうとするクーシャに対してお兄さんはとても嫌そうでローブを脱ごうとしない。
「せめて、フードはとって!」
そう言ってバサリとフードがお兄さんの頭から抜ける。すると、ちょっと中世っぽくて少し男の血が強い感じのような顔をしていた。
「は、恥ずかしいよう。」
「どうして?とても素敵な顔をしてるじゃない?」
確かにとても素敵な顔をしている。こんな子が彼氏なら私も嬉しいのだがっとそんな事を考えていると好きになってしまいそうだ。なんだか顔も暑くなってきた気がする。
「どうしたの美佳?顔が赤いわよ。」
「いや、これは、なんでもない。」
ダメだ意識するだけで顔が暑くなる。あーなんて可愛い顔をしているんだ。
「やっぱり僕がこんな変な顔だからだよね。ごめんね。」
私が赤くしてるのに対してお兄さんは青ざめたような顔になっていた。
「そんなことないわ。あなたの顔はとても良い顔よ。」
「クーシャ…そんなこと言ってくれてありがとうね。」
「そうよ。自信を持って!」
お兄さんはみるみる顔に生気が現れて来る。が、お兄さんはこっちの方を睨みつけてきた。
「で、君は何の用だ?」
「え?私は…」
「クーシャに僕の話を聞いて、わざわざ笑いに来たのか?」
お兄さんのその口調からは怒りを感じた
「違うわ!私は道を…」
「嘘をつくな!僕に用事があったんだろう?どうせ、クーシャが僕の事を話をしてて気になって見に来たんだろう?」
だめだ。こっちの言ってることが全く通じてない。
「お兄ちゃん、違うわ!美佳は…」
「クーシャは黙ってて!」
クーシャが止めに入っても、一切話を聞かず、一方的に自分の考えだけを押し通すようだ。なんだろう?なんか嫌だ。自分が一番知ってる誰かを見ている気がする。
「で、どうなんだ?正直僕は今の君と話す気にはならない。ただ、クーシャに危害を与えなかった事は感謝する。」
こうなったら、これしかない。
「まさか、危害を与えているのか?おい、聞いてるのか?」
徐々に近づいてきて、私の肩にお兄さんが触った瞬間
「フンっ!」
「うっ!」
溝打ちをお見舞いした。すると、お兄さんはバタッと私の方へと倒れてきた。
「え?お兄ちゃんが倒れた?死んじゃったの?」
慌てふためきながら、私の元へとクーシャがやって来る。
「違うわ。少し眠ってもらってるの。」
「あ、そうなの。」
そう言ってお兄さんを背負うと
「中に入れて貰える?」
「えぇ、お兄ちゃんが起きないと結局、私たちはその家に行けないんだから」
それもそうかと思い私はクーシャの家へと入った。
「どうぞ。」
「お邪魔しまーす」
中は本当に外の感じのまま中に持ってきた感じだった。お兄さんをベットの上に寝かせると、
こっちに座ってと言わんばかりに、クーシャ椅子を用意してくれた。
「ありがとう。」
「良いわよ。気にしないで。」
とても良い子だ。そりゃ、お兄さんがあんなに大切にするわけもわかる。
「お兄ちゃんのことだけど」
「お兄さんがどうしたの?」
クーシャは良い子だと思ったのは、ついさっきだった。正直第一印象は人の話を聞かないおてんば娘といった感じでそこまで良くはない。だけど、お兄さんの態度を見て思う事はただ一つ。何かあると
「お兄ちゃん学校に通ってるって話したじゃないの?実はその学校でお兄ちゃん…」
それを言おうとした。クーシャの顔は怯えていた。言っていいものか考えている顔だ。当たり前だ。こんな年の子、いや、こういう年の子だからこそ考えるのかもしれない。
「言わなくて良い。」
「で、でも」
「大体分かるから。それで、お兄さんはそんな状況でも、学校に行ってるの?」
「えぇ、毎日辛そうだけど行ってるわ。」
なんだぁ、全然違った。
何か口ごもって泣きそうな顔をするクーシャ。仕方ない。この話こそ本当に他の人に話すようなことではないが、話させてもらおう。
「クーシャちょっと聞いてもらって良い?」
「何?美佳」
「1人のどうしようもない少女の話。」
そう言うとクーシャは少し出た涙を拭くと
「聞かせて」
と、少し大人びた声で言った。
「女の子は生まれた時から武道を習っていたの。」
「武道?」
「拳術のこと」
「あぁー、なるほど」
「女の子は毎日毎日武道の練習をしていたの」
話していくうちにだんだん懐かしいものを見るような眼差しになっていく気がした。
「辛くはなかったの?」
少し困ったような顔でクーシャは尋ねた
「辛くはなかったよ。最初は」
「最初は?」
「そう最初は」
最初はと言うよりは、小学生の時はそこまで本格的にはやっていなかったし、少しお遊びのような感じでやっていた節もあった。けど、練習は大変なものばかりだったけど、周りにたくさんの仲間が居たし、そんなに辛くなかった。けど、中学に上がる少し前
「けどね。女の子はある女の子に負けちゃったの。」
小6の冬の大会で私は負けた。一本負けである。
「そんでね、そこからは負け続け」
以前は負けることのなかった、同世代の子にも負け始めた。空手の大会も初戦で負けてしまった。
「その時思ったの。私って大したことのないただの一般人なんだって。けど」
「けど、どうしたの?」
「諦めたくなかったの」
私にはこれしかなかった。
「私の手はもうね。投げたり、殴ったりするだけしかできないように、体がそのように細工されていた。」
本心で諦めたくないと言う気持ちもあったが、それ以上に私には何もなかった。
「だから、必死に練習した他のことは何もできなくなるように、ただただひたすらに」
「それで?」
「勝ち進めてね。最強になったの」
そして、中学一年生にして最年少で世界一になった。
けど、それはある意味どん底へのはじまりだった。
「けどね、最強という事はねとても辛い事なの。」
「どうして?」
あぁー、思い返すのも嫌になってくる。けど、話を続けなければならない。
「最強って事はつまり誰もかなわないくらい強いって事なの」
「それがどうしたの?」
「つまり…」
これだけ言って理解してほしい。けど、彼女はまだそんな経験するはずもない子だ。別れという方が無理な話である。
「誰も練習する相手も仲間もなくなる。」
「なんで!?」
あまりに変な発言だったのか驚いたように急に立ち上がった。
「私が強すぎて、周りが相手してくれないの。強すぎる相手に勝てると思ってぶつかってくる人なんていないでしょ?」
「そうだけど」
「そうしてみんな私から離れていった。」
離れて絆を戻す方法なんて物は私は知らないし、私はそれ以上に臆病だった。そのせいか、学校でもあまり誰とも馴染めなかった。
「それで、女の子はどうしたの?」
「女の子は逃げたわ。逃げて、逃げて。結局最後は真っ暗になった。」
学校に行くのも嫌になって、道場にも行かず、とうとう引きこもりになってしまった。
「じゃあ、女の子はひとりぼっちのままなの?」
一番この先がつらくきつい話になる。
「いいえ、女の子はある日、1人の少年と出会ってその子を守るために戦ったの」
「へぇー。その少年とどうしたの?」
「…」
話したくない。口が開かない。開くわけがない。あぁ、嫌だ。もう私は拳は出さないと決めたのだ。だから、貴様は出てくるな。
「ねぇ?美…」
「その辺にしてあげな、クーシャ」
すると、先程まで寝ていたお兄さんがベットから起き上がって私達が喋ってる方に近づき話しかけてきた。
「お兄ちゃん…」
「美佳さんだっけ?妹に変な話をするのはやめてくれないか?」
少し嫌そうな顔でこちらを見ながら言ってきた。
「あ、ごめんなさい。」
「まぁ、良いけど。それで、僕に用って?」
「え?」
さっきまであんなにキレてた目が少しだけ穏やかになっていて少し驚いた。
「なんだい?そんなおかしいような人を見るような顔は?」
「いえ、なんでもないの。」
「なら良いが」
言動は男の子だ。完璧に
「本当かい?」
疑った顔で私の顔をまじまじとみてくる。
「兄さん!」
怒ったように声を出すクーシャ。
「わかったよ。で、用って?」
「えーっと、ロイスって女の人がやってる店を探してるの?」
「へー。ロイスさんのやってる店をね……!!」
サラは驚いたように急に立ち上がった。
「てことは君は異世界の人か?」
「あーそうなるわね。」
「まぁ、そうだよね。」
すると、私の格好を上から下へと目を動かして見ていた。
「美佳って異世界の人なの!?すごいわ!」
跳ね上がるように立ち上がってわ机をバンバン叩くクーシャ
「ちょっと、静かにして。クーシャ。」
「あーごめんなさい。お兄ちゃん。」
「良いさ、異世界からきた人に興奮するのは仕方がないことだから」
少しシュンっとなってしまったクーシャの頭をサラが優しく撫でていた。
「ちなみに誰に召喚されたんだい?」
「マホトマって人に」
「マホトマ?知らないな。」
あの小さい人はそんなに有名な人ではないのか
「とりあえず、ロイスさんのところへは明日連れて行くよ。今日はもう遅いから、とりあえずご飯を食べて寝よう。」
「そうね!私ご飯作ってくる。」
そう言って台所の方へと走って行くクーシャ。
「火加減気をつけなよ。」
「わかっているわ!任していて」
「大丈夫かな?」
そう言って私の向かいにある一人用のソファに腰をかけた。
「美佳だっけ?」
「そうよ。えっと。」
「サラで良いよ。」
「ありがとう。サラはさっき……」
「違う。クーシャに聞かせたくなかっただけだ。」
「そう」
確かに小さい子に話して良いようなお話では決してなかった
「だから、もう話さなくて良い。」
「ありがとう。助かるわ。サラ。」
「そんな事より、君はクーシャとどこで知り合ったんだ?」
そういえば、話してなかった。
私は森であったことを全てサラに話した。最初は顔を真っ青にして聞いていると思えば、いつの間にか顔を真っ赤にして聞いていた。
「そんなことがあったなんて…」
「信じてくれるの?」
「信じるも何もクーシャとあれだけ仲良い人が嘘をつくとも思えないからね。」
優しい人なのかただのシスコンなのかよくわからない人だ。
「でも、すごいな。冒険者でもないのに。流石異世界から来た人だ。」
「その理論はよくわからないけど、そうね、昔から武道の心得を教わってるものとして当然よ。」
「そうかまだ知らないのか。まぁ、明日そのことはロイスさんに聞くと良いさ」
「サラがそう言うなら、そうさせてもらうわ。」
私たちはたわいもない話を続けた。
「それでクーシャと出会ったのか」
「そうなのよ。最初はかなりびっくりしたわ。」
「毒大蛇と言うよりは、クーシャにか?」
「そうね。」
そう言って、軽くため息を吐くと、サラは深くため息を吐いた。
「クーシャは昔からああ言う子なんだ。多分母さんのせいなんだけど」
「お母さん?どんな人なの?」
「いまは居ないんだ。ちょっと長旅に出ていて」
サラとクーシャのお母さんか。ものすごく気になるが、あまり掘り下げないほうがいい気がした。
「でも、話を聞いてると、すごい強いんだね。美佳は」
「まぁ、一応ね。」
「すごいなー本当。」
「で、でもね。」
私は隠していることがる。過去を隠していることもだが、その前に1つの大きな事に
「でも、どうしたんだい?」
「武術は捨てたの。」
サラと私の間には少しだけ間ができたが、サラが
「なんで?そんなに強いのに?」
「なんでもいいでしょ。」
言いたくない。周りからしたらしょうもない理由なのかもしれないけど、私からしたら、私自身がすごい不安定にされるくらいな大きな理由だから
「…わかった。」
「ありがとう。」
聞き分けが良くて助かった。
「けど、1つ良いかい?」
「何??」
「君の武術は君のものだ。君の手も足も君のものなんだから」
サラこちらを見て言ってくれた言葉は
なぜだろう涙が出てきてしまいそうになった。
「どんな過去があったのかはしれない。けど、それだけは事実だよ。」
「そうね。ありがとう。サラ」
涙目な目で少しジッとサラの方を見つめていた。
「どうしたの?美佳??」
料理ができて呼びに来たクーシャが慌てて涙目な私に近づいてきた。
「お兄ちゃんがやったの?」
「違う!僕じゃない。」
「本当?」
そうね。これは私の心のもろさだもの。
「違うわクーシャ。ごめんね。」
「そう。よかったわ。美佳」
そう言って、クーシャは私の向かって抱きついてきた。
「美佳ー。あのね〜」
私は抱きついてきたクーシャの頭を優しく撫でながら話を聞いてあげた。
「何?クーシャ?」
「私のお姉ちゃんになって」
「いいよー…え?お姉ちゃん??」
「そう。お姉ちゃんになって」
内容も聞かずに適当に頷いてしまったが、こんな可愛い妹が来たらどれだけいいこと……
「クーシャ!」
怒鳴るような大きな声でクーシャの名をサラが叫ぶと
「そのような事を言うなって言ったじゃないか?」
「あ、ごめんなさい。」
クーシャは少しションボリとしていた。
「ごめん。急に大きな声を出してしまって」
「良いわよ。ただ…」
まぁ、そのことはいいのだけど
「流石の私でも、そこまでいやがれると泣いちゃうかも」
流石にキレてまで、そんなこと言うんじゃないと怒られてしまうのは、、、ちょっと心に響く
「違うんだ。美佳はそのなんだ」
「良いのよ。」
強いからって何よ。がたいがちょっと良いくらいじゃない。女子としては、女子としては!
「可愛いし、凄いモテるだろうし、僕なんかじゃね?」
僕なんかじゃね、もったいないからね。って言うのが大体別れ男の言う定番のパターンセリフよ!
「それに美佳は美佳は」
「もう良いから。反省するなら、態度で示して欲しいし」
ちょっと嫌味な言い方になっちゃた。でも、良いよね?少しくらいなら
「わかった。態度でだよね?」
そう言って、私の前までやってくると床に膝をつき
「許してください。お姉様!」
と上目遣いで合掌しながら頼みこんできた。
「グハッ」
口から効果音が出てしまうほど、本当に、ほんっっとうに可愛かった。あ、本当に女性として負けた。だめだこれは
「ダメか?これでは」
そのまま状態で首を傾げてこちらをみてくる。やめてほしいが、これ以上惨めな気持ちになる前に
「うん。ありがとう。」
それ以上にサラとは仲良くなれてる?気がした。でも、それで良いというかこれでよかった。
「それで、、美佳。」
「何?」
「いや…何でもない。」
「そう?」
サラは何か言いたげの顔をしていたが、口を開くような雰囲気ではなかった。
「それはそうとご飯が出来たわ!食べましょう。」
「そうだな。さぁ、食べよう。」
気を取り直して私たちは食堂へと向かって夜ご飯をいただいた。
『さぁ、懲らしめよて、僕をいじめるあいつらを』
だめだ。もうあなたには関わらない。私は誰にも手を出さない。私はもう人を気づけたくない。
バサッと布団から起き上がった。隣では寝間着のクーシャが気持ちよさそうに寝ていた。
「なんだ。夢か。」
とりあえずクーシャを起こさないように布団から出よう。私そう思いゆっくりと布団から出ると
「おきてるかい?」
ドアの向こう側から誰かの声がした。少し驚いたがその声の主がすぐにわかった。
「サラ?おはよう。早いわね。」
「おはよう。美佳。君の服はドアの前に置いておくから、着替えたら出てきてくれ。」
そう言って、サラの足音が聞こえなくなってきたぐらいで私はドアを開けた。すると、綺麗に畳まれた私の服が置いてあった。私は昨日ごはんを食べてお風呂に入った後クーシャからクーシャのお母さんの服を借りた。少し大きかったが、別に問題にならないくらいだったので、喜んできた。
流石に寝間着のまま行く事なるかなっと覚悟は決めていたが、朝早くからサラが乾かしてくれたらしい。やはりクーシャが好きなだけあって、良い人だ。私はそこに置いてあった私の服に着替えて、脱いだ服をあまり畳んだことがないので少しぎこちないが、クーシャの部屋の机に置いておいた。
私は階段を降りて出て行きサラがいるであろう居間へと行った。
「あ、来たね。」
「おはよう。サラ。」
「おはよう。美佳。」
そう言ってサラは手に持っていたマグカップを渡してきた。
「コレアだ。」
「コレア?」
ココアしか聞いたことしかないから、コレアも名前が似てるし、ココアみたいなものかな?一口冷ましながら飲むと
「苦!」
「やっぱり、最初は苦いよね。」
凄い苦い。例えるなら、昔、抹茶の粉の量を間違えて大量に入れてしまって、それで抹茶を作ってものすごく濃い抹茶の100倍は苦い。
「でも、体に良さそうで良いわ。」
「もちろん。ものすごく良いよ。」
そう言って、冷ましながらコレアを飲んでいると、全くと言っていいほどに何もしてこない。
まさか、これを飲ませるためだけではないよね?
「もしかして、これを飲ませるためだけではないわよね」
迂闊にも、声に出して話してしまった。すると、サラはマグカップ震わせながら
「な訳ないだろう?ほら、あれあれだよ。」
多分それだけだったんだろうな。それだとしたら、申し訳ないことを言ってしまった。
「えーっと。そう!ロイスさんに会いに行くため」
「あーなるほど。(棒読み)」
わっかりやすいくらい今考えた感じの言い方だが
「早く行った方が、良いだろう?」
それはよくわからないが、たしかにちょっと早めに行ったら人も少ないし、あまりこの格好を見せたくないからちょうど良いわ。
「そうね。行きましょうか?」
「そうと決まったら、さぁ、いこう!」
そう言って、マグカップに残っているあと少しを飲みきってマグカップを洗い物置き場に行きスッと置き、クーシャにバレないように静かに家を出た。
家を出ると、あたりは少し霧かかっており周りが少し見にくかったが、私の世界ではあるまいし、そこまで危険な感じはしなかった。
「さぁ、行こう!」
「そうね。」
そう言って私はサラの後ろに付いて行った。
10分ほど歩くとちょっと小汚くていかにも変な人が住んでいるような家の前についていた。
「ここがロイスさんのところだよ。店自体はまだやってないから、ちょっと待ってね。」
そう言ってまだcloseとかかっているドアを開けてお店の中に入っていった。中から声がしたが何を言ってるかはさっぱりわからなかったが、聞く必要のないことは事実だろう。
すると、こっちに近づいてくる足音がした。
「あら?ずいぶん可愛い子を選んだのね。マホトマも」
扉の向こうには綺麗な大人の女性が立っていた。
「いらっしゃい。私がロイスよ。」
「よろしくお願いします。美佳です。」
と言うと、ロイスさんは私の体のいろんなところを触りながら確認していた。
「解析」
なんて言ったかわからなかったが、何か呪文を唱えたのだと思う。
「なるほどね。わかったわ。たしかにあなたが美佳ね。」
「はい。そうですけど。」
私はそう言っているのに?
信じてくれていないのだろうか?
「ごめんなさい。ステータスが確認できないから、こうするしかないのよ。」
「なるほど」
「それより、こんなところで話をするより中で話しましょ?」
「そうですね。」
私はそう進められて中へと入っていった。中は色々な草や本が置いてあった。中には動物の死骸なども
「あまりジロジロ見ないでね。」
「あ、はい。」
そう言って周りを気にしていた私に注意するようだった。
「ちょっとここに座ってて、多分サラがお茶を持ってくるから」
「あー…はい。」
サラを知ってる?どういう関係だろうか?
「私とサラの関係はね〜」
心が読まれた!?それとも、声に出して言った?どっちか分からないがこの人やばいな
「恋人かな?」
「!?」
あれ?なんでこの人に敵対してるんだろう?分からないけど、私はその言葉がとても嫌いだ。なんで?分かんない。
わかりたくない。
「師弟関係でしょ?」
「あははは、そうだったね。」
お茶を持ってくるサラが何をおかしなことを言ってるんだこの人はと言った顔でロイスさんを見ていた。
「いやー、ごめんね。騙すようなことを言って」
「いえ、別に」
「でも、面白いのは見えたよ。あと、それとね、」
そう言って、ロイスさんは前かがみになって私のアゴをクイッとして
「私はこっちの方が趣味なんでね。」
「はひ〜?!?!」
なんだこの人はこのままキスされるのだろうか?ドンドンと顔が近づいてきてこのままも唇が触れ合いそうな具合で
テーブルにドンッと何かを置いた。サラではなかった。
「ロイちゃん〜?何、客人に手を出してるの?弟子にお茶を出させるのはいいとして」
「マリ、これは違うんだ。」
「今週これで二回目よね?またやるの?」
そう言って、その女性はケーキをカットするナイフをロイスさんの首に押し付けて
「次はないって言ったわよね?」
「マリ、違う。これは挨拶だ。私の母国の挨拶だ。」
うわ、見苦しい言い訳だな。かなり見苦しいな。
「問答無用!この女たらし!」
女性はナイフを振り上げてロイスさんに刺そうとすると
「マリさん落ち着いて!」
「離して!弟子くん!私はこの人と心中するの!」
え?ここで死にきなの?それはやめてくれ。
「ソモノリエート!」
「うっ」
すると、女性は気を失ったように静かになった。
「安心したまえ。寝ただけだ。」
「はぁ、そうですか。」
「サラ、マリを寝室で寝させておいてくれないか?頼むよ?」
「わかりました。」
そうしてその女性を抱えてサラは行ってしまった。
「じゃあ、本題に戻ろうか。」
「そうですね。」
「意外と動揺しないね。」
まぁ、異世界に飛ばされて森で知らない生物から女の子救ったりしてるからね。
「まぁ、いいや。本題に行くね。」
「はい。」
「この世界はいわば君の世界とは違う空間の世界だけど、パラレルワールドとは違う。なんて言えば良いかな?あっちが表ならこっちは裏の世界と言ったところかな。」
「裏ですか?」
「そう。美佳が暮らしてた世界を仮に表世界。私たちの世界は裏世界だ。なぜ、私はこう説明するかというとだね。この世界とあの世界の時間軸は同じように流れている。」
「だから、表と裏ですか?」
そうやって聞くとロイスさんは首をゆっくり横に振って
「そんな簡単なことではないんだ。今から言うことは少し難しいかもだけど、ちゃんと付いてきてね。」
「はい。」
「すまないね。じゃあ、話を続けるよ。」
ロイスさんは少し咳払いをして少し口を開けて
「私たちの世界と美佳の世界は境界率と言ったものが存在するんだけど、これは目では決して見えない比みたいなやつさ」
「へぇー」
「今のところこの事を知ってるのはあまりいないから、あまり他言しないでくれ。」
「まさか、今回マホトマさーが美佳を呼んだのはふつうに世界を救わせるためだよ。」
普通にはおかしい気がするが、私にそんなことが出来るだろうか?けど、それよりも
「具体的にどうすれば良いのでしょうか?
「今からそれを説明するね。」
「はい。」
ちょっと焦りが見えたのでちょっと小さく深呼吸をした。
「大丈夫?」
「大丈夫だわ。」
「それじゃあ、少し話すね。今魔王を倒してくれってことではないんだ。なんなら、少し魔王に協力してあげてほしい。」
「魔王を倒すのではなく、何を倒すのか?」
「もちろん。この世界にあだなすものだよ。」
あだなすものとは一体どういったものなのだろうか?
けど、私は
「すいません。私、、、戦えないです。」
「何故だい?」
「あまり言いたくはありませんが、私はもう誰も傷つけたくないんです。」
「なるほどね。なら、わかった。おーい、サラ。」
はーいと言う声とともにサラがこちらへ寄ってきた。
「何でしょうか?ロイスさん」
「すまないが、美佳とともに毒大蛇の鱗を手に入れてきてくれないか?1匹分ね」
「わかりました。けど、美佳もですか?」
「そうよ。美佳もよ」
そう言ってロイスさんは私の手をぎゅっと握んで私の目じーっと見てきた。
「サラだけじゃ荷物持てないから、お願いね。」
単なる荷物持ちで安心した。とりあえず、戦闘はサラ中心に任せて私は自分の任せられたことをやる。
「それで、カバンは背負ったね?」
「はい。背負いました。」
「やりました。」
「それじゃ行ってらっしゃい。出来るだけ早く頼むよ。」
「はい。わかりました。」
そうして私とサラはロイスさんの店のドアを開けて出て行った。
森に着くと、私たちはすぐに毒大蛇を探した。
「すぐ見つかるから気にしないでいいよ?」
「まぁ、そうだよね。」
「美佳、君はさっき戦えないと言ってたけど」
「…」
私は臆病者だ。黙っていれば大丈夫と思う臆病者だ。
「大丈夫だよ。美佳は戦わないで。僕がやるから」
そういうサラの声はとても頼もしかったが、その体はとても小さく見えた。
「美佳、あそこにいる毒大蛇が見えるかい?」
サラが指差す方向には寝ている毒大蛇がいた。少し小さいから子供かな?
「あいつを仕留めて、鱗を剥ごう。そして、帰ろう。」
「そうね。」
サラと私はゆっくりと毒大蛇に近づいた。すると
「シャーッ!」
蛇はこちらに気づいており、私たちを睨みつけて大きく叫んだ。すると、毒大蛇の後ろの草むらに小さい蛇や少し大きな蛇がいた。
「あ、あっ…」
「ど、どうしよう。」
あまりの状況に足が崩れ落ちたように座り込むサラ。
戦わないと、戦うんだ。手が震えるけど、戦わないと、でも、それでも、私は
『これは復讐なんだ。美佳』
やっぱり、体が思うように動こうとしてくれない。
「魔法障壁」
サラが小声でそう言った。
「大丈夫。君は僕が守る。」
「何をしてるの?」
「この障壁は魔物には見えないんだ。だから、君は戦わなくて良い。僕が身代わりになる。」
「そんな……ダメよ!」
「君はあいつらが消えたら、ゆっくりと逃げてくれ。大丈夫。多分、1匹くらいなら倒すから」
サラ、何勝手に死のうとしているの!?ダメよ!あなたには、クーシャが待ってるのよ!?
「クーシャには、よろしく言っといてくれ。」
そう言うと囲んでいた蛇がしびれを切らしたかのように攻めてきた。
「炎!」
必死に抵抗するサラ。
ダメよ!彼を1人で行かしてはいけない。けど、足が動かない。私はあの小さい背中に任せて良いのだろうか?ダメよ。けど、体は動かない。
必死に攻撃しながらも、蛇たちは彼の皮膚を引き裂こうとしていく。
『大丈夫。君は僕が守るから』
大丈夫。サラはあいつとは違う。あいつのように私を利用するようなことはしない。
『復讐だよ。美佳?』
あいつは自分のためでしか必死になれないが、サラは違う。私のためにあんなに必死になってくれる。異世界から来たばかりの私を。だから、私もサラのために戦う。
そう覚悟を決めると、魔法障壁の前で深く深呼吸をした。
「ふーー………フッ!」
正拳突きで魔法障壁は一瞬で粉々になった。
「どうして、どうしてそんなことするんだい?美佳!」
大声で叫びながら、蛇たちと一度距離を置いて私に近寄ってきた。
「君だけでも、逃したかったのに」
「あなたの気持ちは嬉しいわ。けど、私はやっぱりあなただけに任せることなんてできない。」
蛇たちは1人増えて驚いたのか、少し距離を置いてこちらの出方を様子みしていた。
「そんなに僕が心配か?やっぱり僕が…」
「違う!あなたは自分を悲観視することが多いけど、私が言いたいことはそれだけじゃない。」
「じゃ、なんだい!」
サラは何も分かってない。だから、私が言う。
「あなたにだって待ってる人がいるでしょ?待たせられてる人の気持ちが、あなたにはわからないの?」
「そ、それは…」
言い返す隙なんて与えない。
「少なくとも、クーシャは待っているはあなたの事を。それだけじゃない。ロイスさんだって」
「美佳が居れば…」
「あなたの代わりはいないわ!それに私が居ても、あなたのことをどう説明したら良いの?私にはそれはできないわ。」
こちらを睨みつけてくる蛇。
そろそろ、蛇も攻撃してくるからこの言い合いを終わらせないと
「それに、、私だってあなたには死んでほしくない。あなたには生きて欲しい。だから、だから、死なないで!」
初めてこの人には生きて欲しいと心から思った。だから、私は叫ぶような大きな声で言った。
「だから、あの」
「…分かったよ。もう良いよ。」
そう言って、羽織っていたローブを脱いで
「さぁ、2人で倒そう!美佳!」
「えぇ!」
私たちは蛇に群へと向かって行った。
本当に僕は情けない男だ。顔だけではない。心も全て
『死なないで!』
初めてそんなことを言われた。本当美佳には感謝している。彼女自体何かに囚われている気がするのに、それを退けた。本当にすごいよ。さぁ、あと一体だ!頑張ろう。美佳
私達は蛇を全て倒すと全ての蛇から鱗を剥ぎ取って、それをロイスさんへ持って行った。
「随分たくさん持ってきたね。」
「はい。そうですね。」
私達は2人で20匹近い蛇を倒した。けど、そのどれもが毒大蛇というわけではなかったが、とても辛いものだった。
「もう当分要らないね。」
「そうですねー。一ヶ月近くは要らないですね。」
笑いながらサラが答えると
「なら、一ヶ月後にまたよろしく。」
「またですか!!?」
2人は仲よさそうにずっと話していて、話の間に入ることができない。サラが鱗が入ったリュックを持っていくと
「それで、美佳。」
「は、はい。」
急に呼ばれて変な声が出てしまった。
「戦えたようだね。」
「…はい。」
「いつでも、戦えそうかい?」
「それはわからないです。」
「そうかー」
少し上を向いてため息を吐くと
「まぁ、少しずつ慣らしてけばいいさ。」
「ありがとうございます。」
そう言ってにぱっと笑うロイスさん
「それとありがとね。正直、この量の蛇達が居て帰ってきてくれて、本当に心から嬉しく思うよ。」
「ありがとうございます。」
「今日はゆっくり休むと良いよ。」
「はい。」
ニコッと笑いながら話す姿はとても優しいお姉さんのようでホッとした。
「サラも休みなよ。」
「はーい。」
奥の部屋から反応するサラの声がした
「それとね。今日君の冒険者登録をしておいたから、すまないがこれからはよろしく頼むね。」
「あ、ありがとうございます?」
冒険者登録??なんの為にだ?
「あれ?まだ言ってなかったのか?実は…」
「あーあー!師匠!鱗入れといたので、あとはよろしくお願いします。」
奥の部屋から大急ぎでサラが走ってきた。
「うん。わかった。」
「それじゃ、僕ら帰るんで!」
そう言って私の手を引っ張り大忙しで外を出て行った。
少し行ったところまで行くと、急に止まって
「美佳!」
「はい!」
息を乱しながら、大きな声で呼ばれてビックリした。
「僕とパーティーを組んでください!」
私に告白のように言ってくるその姿は少しぎこちなく、とても私の理想とは違ったが。
『君が僕は守るから。』
その言葉が脳裏に浮かんだ。
「ええ、よろしくね。サラ。」
こうしてサラと私はパーティーを組むことになった。まだ2人だが、いづれはもっと増えればいいかなと思っている。
「それより行きましょう!クーシャが待ってるわ!」
「あ、ちょっと!」
私はの過去は所詮過去なのだ。どんなことがあってもそれは過ぎたこと、嫌なことしかなくても、だから、あの頃には帰ってやり直そうと思っても無理。けど、今を変えることはできる。そして、私の手を握ってくれてるこの手は私の手を私の事を決して裏切ることはない。根拠なんてないけど
「さぁ、行きましょう!」
それでいいと私が思ったから。
この本を読んでいただきありがとうございます。
もし、またお会いすることがあったら、よろしくお願い申し上げます。