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第9話 魔界の森へ

 んー。

 「マジョコ様」は魔族と人間の中立でいることを貫いている人物なんですよ?

 それなのに……そんな相手に魔王討伐のための協力を求める、とか、こいつ正真正銘のバカじゃないでしょうか。


 わたしがじっと黙っていると、勇者レオンはまたぺこぺこしながら頼んできました。


「お願いだ、頼むよ! 俺、王様から魔王討伐を依頼されてんだけどさ。正直、何の手立ても思い浮かんでなくて。今までモンスターらしいモンスターとも闘ってこなかったしさ。いざってなると、ちょっとその、二の足を踏んじゃって。君さえ良かったら仲間になって一緒に行ってくれないか!」


 はあああっ?

 そんな……ヘ、ヘタレすぎます!

 今までモンスターと闘ってこなかったって……う、嘘ですよね? いざって時に二の足を踏む、とか……何度も言いますが、この人本当に「勇者」なんですか!?

 わたしを仲間にって、開いた口がふさがりません。


 わたしが呆れかえっていると、クラーラさんが言いました。


「そうか。お前は一応、『魔王を倒そう』としているのだな……?」

「あ、ああ! そのためにここまで旅をしてきたんだ!」


 勇者はバンッと勢いよく自分の胸を叩きます。

 今の行動は……うん。ちょっと勇者っぽかったですね。見かけはね……ちょっとそれっぽくて、良かったんですけどね。


「ふむ。マジョコ様、この者がこう言っておりますが、いかがいたしましょうか?」


 クラーラさんはそう言って、振り返ってきました。


 え? いかがいたしましょうかって、そ、それはこっちのセリフですよ!

 わたしじゃとても判断できません!


 そう思っていると、念話魔法でクラーラさんの声がまた聞こえてきました。


 ――マジョコ、ここはこの勇者たちに協力するふりをしましょう。大丈夫、魔王様のところまで本当に案内することはありません。こいつらも、実際その気があるわけじゃないでしょうしね。魔界の森の中をしばらくうろついて、その間にやつらの絆を破壊するチャンスを待つのです。


 なるほど……! わかりました。

 わたしはこくりと頷きます。


「よし、光栄に思うがいい、ニンゲン! マジョコ様はお前たちの頼みに、『案内だけはする』とおっしゃった。あくまでマジョコ様の『気まぐれ』だ。決してお前たちの味方になったつもりはないぞ。それをよく心に刻んでおけ! いいな!」

「そ、それだけでも助かる。ありがとう! 恩に着るよ!」


 クラーラさんがそう言うと、勇者レオンは全力の爽やかスマイルを返してきました。

 女の子たちは複雑そうな顔をしています。

 ツインテールの子は、ひときわ深刻そうな表情をしていました。えっと、敵ながら、そんな状態で大丈夫なんでしょうかね、このパーティー……。


 まあどっちみち、この森に入っても入らなくても、わたしたちが彼らをバラバラにするのは決まってることなんですけどね。


 ――マジョコ。それではこれから魔界の森に入ります。私があなたがたの先を飛んで案内しますので、ついてきてください。


 わたしは小さくうなづくと、飛んで行くクラーラさんの後を追っていきました。

 そんなわたしを見て、勇者たちもそろそろとついてきます。


 

 * * *



 魔物のものか、野生動物のものかはわかりませんでしたが、足元には細いけもの道がずっと伸びていました。

 わたしたちはそこを一列になって進んでいきます。

 森の中はどこまでも木々が連なっていて、魔王の城は少しも見えませんでした。


 ビルみたいに巨大な木が枝葉を大きく広げ、広い空を覆っています。

 奥も暗く翳っていて、なんとも不気味です。


 でも、この森には……わたしたちの敵は存在していないのでした。わたしたちは「魔王の配下」ですからね。中にいる魔族はみな「仲間」なのです。まだ、誰とも遭遇していませんが……。


 わたしたちはそんな森の中を、適当にうろついていました。

 いずれは勇者たちに「かく乱されている」とバレるでしょうけど……その時はその時です。


 しばらくするとなにやら背後の集団に異変が起きはじめました。


「ちょっと、レオン」

「ん? なんだい、アザレア」


 踊り子風の女の子が、勇者レオンに話しかけています。


「たしかにあんたは『魔界の近くへ行く』と言っていたね。そして、あたしもそれに同意した。けどね、なんだか話が違ってきているじゃないか? 魔界の森の『中に』入るなんて……。それとなんで、あんな得体の知れない『魔女様』に道案内なんか頼んだんだい」

「そ、それは……」

「ふん、どうせあの人がとーっても綺麗だから、だったんだろう? どうにかお近づきになりたい、だから頼んだ。違うかい?」

「え? いや。別に俺は……」


 なんだか勇者の慌てたような声が聞こえてきます。


 まあ、今の、このわたしの容姿に思わず一目ぼれしてしまうのもわからなくもないですが……やっぱりそんな不純な動機で森に入ったと聞かされると、改めてドン引きしますね。


 結局、上司に頼まれた仕事をまっとうするより、下心の方が勝ったということですか……。

 ということは「魔王の城に行きたい」というのも「嘘」なわけですね。

 魔王のところに行かずに、どうにかしてわたしだけでもモノにしよう、って……。あああっ! なんって、どこまでもハーレム欲の強い人なんでしょうか。


「まー、あの人、あたしよりも全然見栄えがいいしねえ……」

「そ、そんなこと……」


 アザレアの言葉に、勇者は口をもごもごさせながら言います。


「お世辞はいいよ。ハーレムにおいて、見栄えのいい異性を取りそろえるのは主にとってのステータス。あんたはそれを忠実に実行しようとしただけだろう? あんたのその精神、あたしは嫌いじゃないよ」

「アザレア……」


 今の、フォローしてたんでしょうか。あれで。


 信じられません。

 普通は、自分より綺麗な人や新しい人に、好きな人が目移りしたら絶対「怒るとこ」だと思うんですけど……それを容認してしまってるあたり、やっぱりわたしとこの世界の人たちとの価値観は違うようですね。


 ハーレム推進派、か……。


 アザレアさんは勇者レオンの行動を許したようですが、他の人は……さてどうでしょうか。

 わたしは振り返らないまま、さらに聞き耳を立てることにしました。

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