逃走
「話は後だリク、『ファイヤーボール』」
じいちゃんはそういうと5センチぐらいの火の玉を10個作り出した。
「待ってくれじいちゃん。ちょっと妹に聞きたいことがある」
俺は痛みで今にも意識が飛びそうだがなんとか意識を保って凛に話しかけた。ちなみに俺は地面に倒れている。
「凛、何故俺をそんなに憎んでいるんだ」
「それはね…………あれ?なんだっけ?まぁいいや…『ファイヤーボール』」
「えっ!?ちょ…まっ…」
火の玉10個が作られ俺の方に向かって飛んでくる。しかしじいちゃんのファイヤーボールとぶつかり相殺される。
「リクよ、今からわしの最強魔法を使う。じっとしとれよ」
「待ってくれじいちゃん…」
「見せてやるわしの魔法を…『転移』」
俺の言葉を最後まで聞く前にじいちゃんは魔法を唱える。そして俺たちの下に魔法陣が現れあの時と同じく激しく光って、姿を消した。
「あーあ、逃げられちゃった。でも次は絶対殺すから」
誰もいない草原で凛は呟いて、その場から姿を消した。
♢♦︎♢
俺たちが転移した場所は俺が異世界に来て最初にいた場所、そうじいちゃんの家だ。
「これがわしの力だ。伊達に『逃げのモーゼ』『卑怯のモーゼ』と呼ばれてないわ」
じいちゃんはドヤ顔で言ってくる。
じいちゃんはいろんなところで悪評が立っているようだ。
「そんなことはどうでもいいから、早く治療してくれ超痛い」
「すまん、すまん」
じいちゃんは急いで救急箱を取りにいった。
じいちゃんが部屋から出て行くと俺はいろいろあって疲れたせいか眠ってしまった。
数日経って俺は目を覚ますと右腕に違和感があった。俺は右腕の方を見てみるとあるはずの無いものがついていた。それは実の妹である凛に切り落とされたはずの右腕だった。
「ゆ、夢だったのか?」
しかし右腕をよく見ると鉄でできていた。決して切れたところからまた右腕が生えてきたとかではない。ただ義肢を取り付けただけである。
「どうだ。体の調子は」
「ああ、なんともない」
「そうか、それは良かった。ところでリクよ、その義肢はどうだ」
じいちゃんにそう言われて右腕を動かしてみると、違和感がほとんどなくて少し驚いた。
「ああ、すごくいい」
「そうか、特注で作らせた甲斐があったな」
「ありがとう、じいちゃん」
「元気になってなによりだ。それよりリクよ、お腹空いただろご飯にするぞ」
俺はこの後、何故じいちゃんはあの場所に来たのかと聞いてみたが教えてくれなかった。またじいちゃんの謎が増えてしまった。