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「モモ、今助ける。だから、もう少し待っててくれな」


「ブレイブ、インストール!」


  コンパクトにカードをセットする。コンパクトはいつの間にか元の形状と変わっていて、勇者少女に変身するための剣の柄は消え、コンパクトの底の少し上にカードをセットするホルダーが出来ていた。

  そこにカードをセットすると、コンパクトから光が溢れ出し俺の身体を包み込んでいく。

  服はまるでシャボン玉がはじけて消えるようにどこかへと消えてしまいあっという間に裸になるが、不思議な光に包まれているので肌が見えることはない。

  やがてその光が形を成していく。足を包む光が白いニーハイソックスへ。腰を包む光は若草色の短いプリーツスカートへ。上半身からは白を基調として金の刺繍が入ったノースリーブのブラウスと、そこから足元まで伸びるドレスのようなローブはフリルが施され実に女の子らしいデザインになっている。しかし、前側だけが短くなっていて後側だけが長く、絶対領域を覗かせる魅惑的なデザインだ。両の手には肘まで伸びる手袋が巻き付くように現れる。髪はモモと同じように薄い緑色に変わっていき、首のあたりでリボンに縛られた2つ縛りのお下げが肩から胸にかけて流される。リボンには小さな鐘がついていてそこもモモとお揃いだった。頭のてっぺんにはベールが被せられ、そこにさらに後頭部あたりに大きなリボンがついた。首からは少し小さくなったコンパクトがペンダントのように吊るされる。

  服の形成が完了し、光が手元に集まっていく。やがてその光は細く長く伸びていき、槍の様な物の反対側に、長い少しボロボロな茶色の布が巻かれ、そこからさらに大きな鐘を吊るす欠けた円状の飾りが出来上がる。出来上がったのは鐘のついた錫杖だった。

  手に取り振るとカランカランと心地よい音がなり、俺は一回転をして後ろに伸びた長いローブを翻すと、その錫杖を構えポーズをとる。


  この間、だいたい30秒ぐらいでちょうど「魔法勇者☆マジカルあきな」の変身シーンと同じくらいの時間だ。しかも、俺の意思と関係なくポーズをとっているので、非常に恥ずかしい。

  顔が赤らみ、全身から火が出そうになるほどに熱くなっていく。

  見れば、クリスさんもモモもこちらを見てぽかんとしていた。ルーカスは気絶しているようで倒れたまま動かない。

  あまりの驚きに炎の壁が解除されてしまっている。しかし、そこに魔物達の姿はない。モモが俺の【鐘の守護者】となった時に【下位統率】のスキルが失われ魔物達は攻撃する意思を失い、さらに植物系の魔物であるトレントやドリアードは火を恐れて散り散りに逃げてしまっていたのだった。


「あ、アキナちゃん……その姿は……?」


  クリスさんが俺に疑問を投げかける。けれど、答えている余裕はない。

  首からはぶら下がったコンパクトを開くと、デジタル表示でストップウォッチのように時間が表示される。時間は9:51。1秒また1秒と時間は減っていく。この姿には10分間しかなれないようなので、急いで行動しなくてはならない。


「……あ、ああああああああああああああ!!!」


  モモが思い出したかのように、髪を蔦に変えこちらへと飛ばして来る。まるで鞭のように動くそれは、普通の状態の俺だったら躱せないだろう。クリスさんもそれがわかっていて、助けに入ろうとこちらへ向かうがモモの攻撃の方が早い。

  けれど、俺もいつもの俺じゃない。『身体をどう動かしたらいいかだってわかってる。』


「せいっ!  はぁっ!」


  俺は手に持つ錫杖の石突きで蔦を捌いていく。捌くたびにチリンチリンと鐘が小気味好く鳴り、錫杖の『ある仕掛け』が作動してモモの蔦の動きが鈍っていく。モモが段々と苦しそうな顔になっていく。結構吸い取ってしまうんだな、これ。

  モモの攻撃が止んだ隙に、錫杖の石突を地面へと叩きつける。杖と鐘の間に巻かれた布がはためき、その色がくすんだ茶色から鮮やかな緑色へと変わっていく。布全体が緑色に変わったらチャージ完了だ。


「モモ、今助ける。だから、もう少し待っててくれな」


  モモは特に答えたりしない。けれど、どこか俺のことを信じて待っててくれているように見える。だったら、俺はそれに応えるべきなのだろう。

  錫杖の鐘の部分をモモへと向ける。そして神経を集中させて、大掛かりな魔法を発動させるべく魔力を集めていく。錫杖に内包された魔力が魔法陣を描いていき、1つの魔法が形成される。それを、鐘の音に乗せてモモへと放つ。


「【ディスペル】!」


  チリン、と1回鐘の音の澄んだ音がする。鐘の音に乗った魔法は、発動してから相手に届くスピードが普通の魔法よりも断然早かった。音に魔法効果が乗っているので、音速で相手に届くので必然早くなる。

  その魔法がモモに当たると同時にモモの身体が淡く光り、緊張の糸が切れたように倒れてしまう。倒れる寸前に、慌てて駆け寄りキャッチしてクリスさんにモモを預ける。


「アキナちゃん……なんですよね?」

「うん、とりあえずモモのこと頼む。あと、ついでにルーカスも」


  言いながら、ルーカスに【ヒール】を使う。錫杖からルーカスに光が放たれ、傷を癒していく。外傷はなかったから地味なもんだけど。

  それからコンパクトを確認する。あまり時間は残されていない。


「説明するべきだろうけど、時間がない。フユや、街の方が心配だからそっちにいくよ。クリスさんは身体を休めてから、ルーカスとモモと街に戻ってきてくれ」


  それだけをクリスさんに伝え、返事を待たずに錫杖を鳴らし魔法を発動させる。

  世界樹から枝が伸びていき、俺の前までやって来る。そこに飛び乗って捕まると、枝はさらに伸びていき、上空から街の方へと向かって伸びていく。

  フユとポプリなら大丈夫だとは思うけれど、とにかく街に行ってみよう。残された時間でも、何か出来るかもしれないのだから。

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