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「だったらどうすればいいのですか!」


「あ、ああ、ああああああああああああ!!」


  モモが叫び出す。それと同時に、ドリアードやトレント達が一斉に襲いかかる。木の根や枝、蔦がうねる様にして俺たちに向かってくる。

  それを見たクリスさんが前に出て、それを一身に受け止める。


「くっ、【ウォークライ】!」


  クリスさんが敵の注目を自身に集める技、【ウォークライ】を発動する。けれども、敵の数が多すぎるのかあまり効果がある様に感じられない。

  もちろん何匹かはしっかりとクリスさんの方へと攻撃を向けているのだけど、【ウォークライ】の効果から外れてしまっている魔物が俺たちに向かって攻撃を仕掛けてくる。


「【氷壁】!」

「だりゃあああああああ!!」


  フユが氷の壁を魔法で作り、いつの間にかこちらに戻ってきていたポプリが地面を叩きつけ、その威力で土の壁ができる。フユの魔法ほどではないけれど、目眩し程度にはなっている。

  その間に俺はルーカスに抱えられ、ミレミアの墓石の裏側まで連れてかれた。


「奴さん方もこの木には手を出さねぇみてぇだからな。嬢ちゃんはここに隠れてな。さすがに今回は、嬢ちゃんを抱えながって訳にはいきそうにねぇ」

「わかった。どのみち俺は戦えないからな」


  ルーカスはニッと笑うと、敵の群れに突撃していった。ナイフを両の手に持って、枝や蔦を刈り取っていく。

  フユの魔法や弓矢の技で大幅に数は減っていっているけれど、なかなか終わりが見えそうにない。

  やっぱり、あの群れの大元、【下位統率】のスキルを持つモモをどうにかしないといけない。


「ちぃっ、キリがねぇなこりゃ」

「いいからしゃっしゃとと手を動かしゅでしゅよ、【流星雨】!」


  フユの持つ技の中でも広範囲の敵を倒すのに特化した技、【流星雨】が天に向かって放たれる。どういう理屈かはまるでわからないけれど、上空で矢が無数に別れそれが敵に降りかかるという技だ。

  けれど、今回は場所が悪かったと言える。的に当たる前に、世界樹に当たってしまい大半が無効となってしまったことと、トレント達が頭部の葉で受け止めてしまいまともにダメージにならなかった。


「面倒な場所と相手でしゅね」

「だったら私が引き受けます。【フレイムアロー】!」


  クリスさんの頭上に、1本の炎の矢が現れる。盾を構えてその攻撃を狙いをつけて発射するものの、敵からの攻撃を受けながらなので、結局当たらずに変なところへと外れてしまう。

  その結果を見て、クリスさんが苦虫を潰した様な顔をする。


「クリスしゃん、しょの魔法の使い方は多分クリスしゃんには向いてないでしゅ」

「だったらどうすればいいのですか!」


  クリスさんが苛立ちのあまりフユに強く言葉をぶつける。彼女にしては珍しく冷静を欠いている。


「この大軍を相手に、私は守ることしかできない。突破口を開くこともできないんですよ。このままじゃジリ貧です」

「守る力は私にはないので羨ましいのでしゅけど、今はそういうことを言っている場合じゃないでしゅね。いいですかクリスしゃん、魔法はイメージが重要なんでしゅ。私の真似をしてもダメでしゅ。慣れない弓のイメージよりも、盾のイメージで魔法を放った方がいいんでしゅよ」

「盾の……イメージ……」


  クリスさんが目を瞑り集中する。

  その間の敵の攻撃は、フユとポプリ、それにルーカスが受け続けている。遠距離から根や蔦が鞭の様に撓って襲いかかるので、フユやルーカスは躱しながら攻撃を当て続けていた。ポプリは正面から敵の攻撃を自らのパンチを当てて撃ち落とし、時には相手の攻撃を捕まえて相手の魔物を盾にして躱している。

  そして、クリスさんが集中を終えて目を開ける。


「みなさんお待たせしました。いきます!  【フレイムウォール】!」


  クリスさんの持つ盾から、ごおぉっ!  と炎が吹き上がる。それは敵へ向かうのではなく、横へ横へと伸び、トレント達と俺たちを分断する壁となった。燃え盛る壁は魔物達の攻撃を燃やし尽くし寄せ付けない。

  俺たちは一時の安全を確保することができたのだった。

  それを確認できたのか、今まで攻撃に回っていた全員が俺の元に集まった。


「まぁ、及第点でしゅね。ああ、無理して話に参加しないで、そのまま壁を維持しゅるでしゅよ」


  フユがクリスさんになかなかに厳しいことを言う。

  クリスさんも言い返す余裕がないのか、額に玉の汗を浮かばせながら炎の壁を維持するために集中して盾を構えた。その顔は何か言いたげだったけど、とりあえずは気にしないでおこう。


「んじゃあ、打ち合わせ通りといくか」

「わかったゾ。こんなに早くに動けるとは思わなかったゾ」

「私の教え方が良かったからでしゅね」


  打ち合わせ通りとか言っているけれど、俺は全く聞かされていないので何のことだか全くわからない。

  けれど俺のことは御構い無しに、みんなそれぞれに行動を開始する。

  フユは行動を開始する前に俺の方へと近づき、そして手をぎゅっと握りしめた。


「この作戦は、アキナしゃんにかかってます。あの子のこと、モモのことを頼んだでしゅよ」


  フユはそれだけ言い残すと、ポプリと目を見合わせる。


「んじゃあルーカス、先にいくゾ」

「ああ、向こう側は頼んだぜ」


  それだけ言うとポプリはフユをむんずと掴む。そして次の瞬間。


「そりゃあああああああああああ!!」

「その投げ方は聞いてないでしゅよおおおおぉぉぉぉぉ!」


  ……何か打ち合わせと違ったらしいが。とにかく、フユは吹っ飛んでお空の星になってしまい、ポプリもそれの後を追う様にトレントの群れの中を突っ切って行ってしまった。その過程でトレントが何匹か倒されている様だけど、今はそれは置いておこう。

 

「さて、と」


  ルーカスが俺に向き直り、話し始める。


「この壁の中にあの嬢ちゃんを連れてくるから、お前があの嬢ちゃんを説得しろ。その隙に、俺があの隷属状態をどうにかする」


  どうやら、随分な大役が回ってきてしまったらしかった。

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