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「お前知ってたのか!  知ってて言わなかったのか!」


  案内された目的地が観光地だった件について。


「いやー、相変わらず盛況だなぁこの街はよぉ」

「お前知ってたのか!  知ってて言わなかったのか!」


  俺は飄々としているルーカスに胸ぐらをつかむ勢いで詰め寄るが、そんなのはなんのそのといった様子で俺の言うことなど気にもしていない。クリスさんにはしたないと諌められたが、納得していない。いや、できなかった。

  エルフのお姉さんが苦笑いで、まず最初に町長の家に行くように促される。町長が直々にこの街の滞在許可証を発行しているので、最初はそこに行かないとどうにもいかないらしい。

  ちなみに無視して逃げるとどうなるかというと。


「その時は我々が全力を持ってしてお相手させていただきます」


  と、エルフのお姉さんの談。お出迎えのお姉さん達は全員魔術の手練れらしい。腰に下げてある杖が怪しく光る。その笑顔も結構怖いです。

  1人ならまだしも、俺らを全員接待するように俺らの人数と同じ人数のエルフのお姉さんがいる。優雅に俺らを楽しませるように見せて、ずっと監視をしていたというわけだ。言われるまでぽっちも気がつかなかったけれど。お姉さん方も接待に手を全く抜いていないし、悟らせないようにしていたから仕方がないのかもしれないが。

  少し歩き、そう遠くない位置に立派な建物が一つ。人が住む家というよりは、大使館とか領主館といったように見える建物だ。

  案内され応接室で待つこと数分。1人のエルフの女性が部屋へと入って来る。背中まで伸びた長い金髪の美しい、少女のような見た目のエルフだ。

  けれど、そのエルフはただのエルフじゃなかった。金髪に長い耳はエルフの特徴だけど、案内役のお姉さん方よりも幼い見た目と、その背中にある、透き通るほどに薄く透明な4枚2対の羽根。そんなものは他のエルフにはなかった。


「おいでなすったな。エルフの中でも上位種、ここの街の代表者、ハイエルフさんよ」

「ハイエルフ?」


  ただのエルフじゃなくハイエルフという上位種。それがどういったものなのか気になり、ルーカスに疑問を投げかける。

  しかし、その疑問は彼女の言葉により遠くに投げられることになる。他ならぬ、ハイエルフの彼女によって。


「もう、そんなにすぐバラさなくてもいいじゃないエルフ」

「!?」


  ちょっと待って。意味がわからない。今なんて?

  キャラ作りにしても酷いというか悪ふざけが過ぎると思うんだけれど。語尾?  語尾なのそれ?  語尾だとしたら他にもっとなかったの?  というか語尾自体なくても良かったのに。なんというか、残念美少女だ。


「紹介が遅れたエルフ。私はこの街で町長をさせて貰ってる、ティーミリアエルフ。よろしくエルフ」

「ティ、ティーミリアエルフさん?」

「ティーミリアエルフ!  エルフは種族名で名前にはつかないエルフ!」


  なんかすごい混乱して来た。ティーミリアさん……でいいのかな。ぷりぷりと怒っている姿はかわいいと思うけれど、その語尾は本当にどうかと思う。というかルーカス笑うのをやめろ。

  案内していたエルフのお姉さんがどうどうとなだめ、飴を舐め始めたあたりで落ち着いたようだ。……子どもかっ。

  紹介もほどほどに、ティーミリアがなにやらカードのようなものに手をかざし、そのカードがふわっと光る。なにやら魔法?  を施されたカードを渡された。


「それがこの街の滞在許可証になるエルフ。無くさないように気をつけるエルフ」

「許可証とかいう割にあっさり渡されるんですね」

「悪い人なら見たらわかるエルフ。仮に見抜けなくても、みんなで警備してるから大丈夫エルフ」


  案内のお姉さんが笑顔で手を振っている。……確かにそれは安心そうだ。

 

「それで、あなた達はなんでエルフの島、フォーレスに来たエルフ?  この時間じゃ定期便も来ないはずエルフが……」

「ポプリの力で無理やりですよ。目的は森の方にね」

「ミレミアの墓のある森エルフか?」


  ティーミリアの疑問に、ルーカスがすらすらと答えていく。ものすごく手慣れた様子だ。

  王国からの使いで、聖教国や帝国、魔王復活の動向を調べるために動いているということと、その一環として過去の勇者伝説、その守護者の聖女ミレミアの墓のことも調べるために立ち寄ったと正直に話していた。

  ってそんなに正直に話しちゃっていいのかよ。そう思ってルーカスに耳打ちすると、ニッとわらって返事をして来た。


「エルフ達は別に敵じゃねぇし、ミレミアの墓の調査なんて他の奴らももう何度もやってるんだよ。だから別に隠すことでもなんでもねぇんだ」

「だったら調査なんて無意味なんじゃないのか?」

「今までならな。けど、今回はお前さんがいるだろ。今までと何か違うことが起きるかもしれないだろう?」


  確かにそうか。俺がいくことによって、これまでと違った何かを見つけたり、また何かが起こったりするかもしれない。俺のスキル、【守護者の主】によって何かが起きると考えてもおかしくはない。

  ティーミリアは何か考えるように腕を組み、改めてこちらを向く。


「別にダメと言うつもりはないエルフが、今はやめたほうがいいエルフ」


  真剣な面持ちで言うティーミリア。その顔は本当に真剣で、思わず息をのみそうになってしまう。

  少し間を空けて、ルーカスが先を促すように話し始める。


「それで、やめたほうがいい理由ってのは一体どういうものなんですかねぇ」

「今あの森にはちょっと面倒な魔物がいるエルフ。帰って来なくなった冒険者もいるエルフよ」

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