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「すげぇ……これがSランク冒険者同士の戦い……」


「おま、ポプリ……なんだってこんなところに……おわぁっと!?」

「ルーカス久しぶりだぞ!  とりあえず食らうゾー!」

「お断りだっつーの!」


  外に出て行ったルーカスとポプリを追いかけて行くと、ルーカスに向かって拳のラッシュを放つポプリと、それを紙一重で躱していくルーカスがいた。

  ズバババッ!  と繰り出されるポプリの拳はも目に見えない速度になっている。ボクシングでラッシュな得意な選手でもあんなに早くはないんじゃないだろうか。それに、一撃の威力がおかしい。ルーカスに当たらなかった拳が周りの物を次々に破壊していく。ただ壊れるだけじゃなく、粉砕だ。当たったものが粉微塵になっていく。あんなものが当たってしまったら死んでしまうんじゃないだろうか。

  一方でそれを避けるルーカスの動きもすごい。あの当たったら一撃で粉砕されてしまう拳を、全部紙一重で躱している。しかも落ち着けだのいい加減にしろだの喋りながらあの身のこなしを見せているのだ。ゴブリンとの戦いの時も俺を抱えながら駆け回っていたし、もしかしてあいつすごいやつなんだろうか。


「すげぇ……これがSランク冒険者同士の戦い……」


  そう呟きながらフーコーが酒場から出て来た。何か気になることを言いながらだ。


「Sランク冒険者?」

「ああ、アキナ嬢ちゃんは知らないのか。ポプリっていやぁあの腕力と怪力でドラゴンも殴ったなんて話もあるぐらいに有名な冒険者だぞ?  それにルーカスもあまり目だった話は聞かないが、あの回避力に斥候としての腕は確かだって聞くぜ?」

「やっぱりそうでしゅか。そこそこできるとは思ってましたが、まさかSランクとは」


  え?  フユはわかってたの?  ルーカスがすごいやつって気がついてなかったの俺だけ?

  そりゃクリスさんは元々知り合いみたいだし知ってておかしくないけど、フユは何で……って戦いができるような人にはわかるのかな。


「Sランクってやっぱり強いのか?」

「そりゃあ強ぇよ。A級の魔物が1体でも現れたらこの規模の街だってタダじゃいかねぇが、それを単独でどうにかできちまうような連中だぞ?  そんなやつらはこの国、いや、この世界でだって10人もいやしねぇよ」

「そ、そうなのか」


  そんなにすごい人たちなのか……。確かに人間やめているようにしか見えないけれど。

  というかいい加減に止めないと。けれど、あそこに割って入るなんて俺には出来そうにない。俺の、この【戦闘不能】のスキルのせいで戦いようがないのだ。

  ここに割って入るとしたらフユか、もう1人ーー


「そこまでにしてください」


  ガキィィン!  と拳と鉄とがぶつかる音が響き渡る。ポプリの拳を、クリスさんの盾が受け止めたのだ。

  クリスさんの防御力は数値にして24,454。いくらSランク冒険者といったって、チートで増強したクリスさんの防御力を貫通できるとは到底思えないけれど。

  そう思いポプリに鑑定を試みる。


ーーーーーーーー


  ポプリ・エグリス    ドワーフ

HP:4589/4589

力:7943

防御:3682

魔力:481

素早:763


  スキル

・拳闘術  EX     ・怪力  A

・鍛治   E     ・無し


  称号

・龍殺し

・怪力無双

・蹂躙者


ーーーーーーーー


「いっ……!?」


  俺はその能力値を見て驚愕する。

  今まで見て来たステータスの中じゃあデタラメすぎる能力値だ。特に力の数値。そしてドワーフという種族。

  ドワーフと言えばファンタジーじゃよく出てくる種族だ。ずんぐりむっくりの髭もじゃの鍛治師、なんてのがよくいるドワーフじゃないだろうか。

  目の前の彼女は確かにちょっとちんちくりんではあるけれど、髭ははえてないし、けれども鍛治スキルはある……ランクは低いけれど。


「勝手に見るなんて、いい趣味とはいえないゾ?」

「なっ!?」


  さっきまでクリスさんの盾に拳を当てていたポプリが、何故か俺の喉元に拳を当てている。けれどダメージはないので相当に手を抜かれているに違いない。

  見ればクリスさんでさえ驚いているようだった。素早さのステータスはそう高くないのにどうして……。


「ポプリ、その嬢ちゃんに手ぇ出すのはやめてくれよ。……敵にまわさねぇといけなくなんだろ?」

「んん?  それはそれで面白いと思うんだゾ?」


  ああダメだこれ止まる気なんか全然ないぞ。バトルジャンキーってこんなに厄介なのか。ルーカスとは仲間だって言ってたと思ったんだけど、戦えそうってなってめっちゃ喜んでるじゃん。

  というか拳が怖い。これ小指で突かれただけで死んでしまうだろうな、俺は。

  なんて考えていると、ポプリの笑みがさらににぃっと強くなる。


「いい加減にしゅるでしゅよ」

「そこまでにしてくださいと言ったはずですよ」


  見ればフユが弓を構え、クリスさんも完全に戦闘態勢に入っている。氷の弓矢は今にもポプリのこめかみを射抜く準備ができており、クリスさんはポプリから一つも目を離さない。何があっても攻撃を防ごうという意思が見て取れる。

  クリスさんのステータスはあれから特に変えてないけれど、フユのステータスはかなり上げてある。素早さに特化した構成にしてあるけれど、氷の弓の特性上、攻撃と魔力もかなり高めにしてある。それでもあのポプリに勝てるかどうかは微妙なところだ。

  一方のクリスさんはステータスは変えていないとはいえポプリに負けることはないだろう。けれど、勝てもしない。


「……わーかったゾ。やめやめ、やめにするゾ」


  どういった心境なのかはわからないけれど、どうにか拳を収めてくれそうだ。

  フユは依然として警戒しているが、他の面々はすでに落ち着いた雰囲気になっている。どうにかなりそうでよかった……のかな。

  どこかギスギスした感じのまま、とりあえずこの場を移動することになった。

  ところで。


「フユはなんで俺のこと守ってくれたの?  ポプリもさすがに俺には攻撃しなかったと思うんだけど」

「アキナしゃんが死んじゃったら私が帰れなくなるじゃないでしゅか」

「あ、そう……」


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