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「なぁフユ……ここ、異世界なんだよな……?」


  目の前にある、大きく仰ぐほど高いそれに俺とフユは驚きのあまり空いた口が塞がらなくなっていた。


「なぁフユ……ここ、異世界なんだよな……?」

「アキナしゃんの世界から見て、という意味なら間違いなく異世界でしゅよ……。けどこれは……」


  流線型のフォルムのそれは、何をどう見ても列車と呼ぶ他なかった。

  巨大な車体にはすでに何人もの人々が乗っており、まるで元の世界で見たような光景に近くもある。けれども、その乗っている人達はただの人間だけではなく、獣人のような人外もちらほらといるあたりファンタジーらしさを感じる。


「お前たちもこれには驚いたみたいだな」

「あれ、ルーカス居たんだ」

「いたっての!  おたく酷いな!」


  何故かいるルーカスがそれの説明をしてくれた。

  正式名称は大型魔道具・魔術式往復列車『シュトラール』。列車にして魔道具であるこれは、巨大な魔術式と大量の魔石を用いてエンジンを動かすという、この世界においても画期的な技術で動いているらしい。見た目は現代にもあった列車とそう変わりがないが、魔術で動いているとなるとまた違って見える。なんというか魔力を感じるというか……。まぁテキトーなんだけど。

  列車というからにはもちろん駅もあり、当然今俺たちがいる場所も駅構内である。よく見れば犬耳のおっさんが駅弁を売っていたりと、やっぱりどこかファンタジーを感じる。


「すみません。お待たせしましたか?」


  俺たちが列車を見上げていると、クリスさんが戻ってきた。

  荷物を貨物列車に預けたりと、なんだか雑用ばかりして貰って申し訳ないのだけれど、王様から貰った特別切符やお金なんかも全てクリスさんが管理しているので俺たちがやることがないから仕方がない。


「いえ、列車を見ていただけなんで待ってないですよ。というか、クリスさんの荷物もここに入れてよかったのに」


  俺はそう言ってポシェットに指を指す。

  実はこのポシェット、【鑑定】をして見ると【無限収納】と言うマジックアイテムになっていて、その名前の通りポシェットの大きさ以上のものでも無限に入っていく不思議ポシェットになっていた。

  それを駆使して俺やフユの荷物は全部この中へと仕舞っているし、なぜかルーカスの荷物も預かっているのだけど、クリスさんだけは自分の荷物は自分で管理すると言っていたのだ。まぁ、女性だし見られたくないものだってあるんじゃないかと思い深く追求はしなかったのだけれど。


「いえ!  それには及びません。後、私のこともルーカスみたいにもっと崩れた口調で良いんですよ」

「そう言われましても……」


  ルーカスとはあの「一緒にお風呂入ろう事件(命名フユ)」から砕けた態度になったが、クリスさんとは未だに敬語のままだ。もっともクリスさんの素の口調が敬語だし、俺もそんなに女性に慣れているわけじゃないので距離を測りかねているというのが正直なところだ。フユ?  あいつはなんか子犬だったし今は幼女だし、元女神でも女神という存在には不信感しか持ってないしで特に敬意はない。

  まぁ、クリスさんが口調を崩してくださいと言っているしそのうちに慣れるようにはしておこう。


「ところで、もう乗らなくていいんでしゅか?」

「そうですね。指定席なので急ぐ必要は無いですけど、中も結構凄いですし乗りましょうか」

「クリスさんは乗ったことがあるんですか?」


  列車の車内に乗りながらクリスさんへ聞いてみる。

  段差に躓きそうになりながらも車内へと入る。通路を進んでいくと、寝台特急のように個室がいくつか割り当てられている。しかし元の世界のそれとは違い中を覗くと、ベッドだけではなくソファーにテーブルまで完備されている。元の世界の狭目の宿ぐらいの設備があった。

  以前に乗った馬車とは違い、ふかふかのソファー。見た目はしっかりとした革の椅子だけれど、触って見るとまるでクッションでも敷いてあるかのようにふかふかで柔らかい。思わずぽすんと飛び乗ってみると、元の世界の車や電車のシートとそこまで変わらないような、むしろこちらの方がふかふか感が強くて座り心地がいい気がする。

  これは快適な旅になりそうだ。


「ふふっ、この椅子、気持ちいいですよね。以前に乗った時に教えて貰ったのですけど、ミノタウロスの皮とハーピーの羽をふんだんに使っているそうですよ?」

「布団もハーピーやロック鳥なんかの最高級品だろ?  すげぇよなぁ」


  なんだか急にシートから降りたくなった。

  クリスさんの言い方からして高級素材の類なのだろうけれど、ミノタウロスもハーピーも、俺の知る限り人型のモンスターなんだよなぁ……。ロック鳥は完全に鳥型だろうけど、かなりでかい鳥だったはず。もちろんこの世界では人に害をなす魔物なんだろうし、それがこうやって人のためになっているのはいいことなんだろうけれど、なんていうか、こう、ビジュアルがなぁ……。

  けれどもそんなことを気にしているのは俺だけのようだ。当然と言えば当然なんだろうけれど。


「しっかし、あれってB級とかA級の魔物だろ。よくもまぁこれだけの数用意できたな」

「私も当時のことは父から聞き覚えでしか無いのですが、女王さまから特別クエストが出て大量に狩られたそうですよ。報酬も通常よりも高かったそうです」

「へぇ……まぁ、それでこんなにいい椅子に座れるんだからありがてぇなぁ」


  ルーカスはそう言いながらすでにくつろぎモードに入っていた。フユもその横にちゃっかりと陣取ってリラックスしている。

  俺もすることがないので、そのままゆっくりとくつろぐことにした。

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