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「わかりました。護衛任務、謹んでお受けいたします」


「あの、私、騎士団クビになるんですか……?」


  クリスさんは涙目になりながらも姿勢は崩さず、けれど声はガタガタに震えながら王様に質問する。一応クリスさんは騎士団を辞める予定だったはずだけれど、いきなり上司からクビだと言われたら自分が何かしてしまったのかもと思ってしまうよなぁ。それも、ただの上司じゃなくて社長クラスだし。

  その様子に、エリックさんはますます深いため息をついて王様へと言った。


「レオンハルト陛下、あの言い方ではマスウェイル副団長が勘違いをしてしまうのは無理もないでしょう」

「え?……あぁ、そうか。そうだね、完全に言い方を間違えた。これは済まないことをした。謝罪しよう」

「いえ!  陛下が謝ることは……」


  クリスさんが慌てているが、悪いのは王様の方だし謝らせておけばいいと思う。


「で、だ。休んでほしいというのはもちろん騎士団をクビになれという意味ではなく、少し各地の様子を見て回ってきてほしいというものだ」

「各地の様子……でありますか?」


  クリスさんが困惑しているが、無理もないと思う。

  聞いている限りでは騎士団の仕事じゃなくて、諜報員とか、それ専用の人たちがいそうなものではある。ルーカスとかそういうの得意そうだし。


「ああ、ディーンから君が事情を抱えて辞めるつもりだと聞いているからね。こちらから別の仕事に就いてもらおうと思ったわけだ」

「その別の仕事というのが、各地を見て回ることとどういった関係があるのでしょうか」


  クリスさんが疑問に思うのも無理はないと思う。横で聞いてる俺も正直意味がわかっていないのだから。

  王様はなぜかそこで話を切り、俺に微笑みながら話しかけた。


「アキナ君、君は異世界から来たとディーンから報告を受けている。あぁ、報告を受けているとは言っても、この件は私とエリックしか聞いていない。他には話していないよ」


  これは王様が俺に配慮してくれたということなのだろうか。まぁ、言いふらされたり勇者だと祭り上げられたり、異世界人だと実験されたりするよりは全然だ。


「そして、君は元の世界に帰ることを願っている。そのための方法を探す旅に出ようとしていることももちろん聞いている。ただ……強力な守護者がいても見た目幼い女の子の2人旅なんて危険でしかない。そこでだ、クリス君を護衛として派遣しようじゃないか。それが、私からクリス君への勅命である」

「なっ……!」


  クリスさんが驚くのも無理はない。これは、クリスさんの願いを叶えつつ絶対の防御力を持ったクリスさんを手元に置いておくための手段だ。

  同時に俺を監視する役目も持っているということだろうか。けど、それなら俺をこの場に呼ぶ必要はないように思える。

  思案する俺の様子を見て、王様はニコニコと笑いながら話を続ける。


「今回のゴブリンの異常行動、それから最後に現れたという襲撃者。やはり以前に聖教国で出された予言の通り、魔王の復活が近いことが原因と考えられる。もしかしたら、もうすでに復活しているのかもしれない。それに、聖教国や帝国でも怪しい動きがあるという報告もある。何か陰謀のようなものが動いているかもしれない中、クリス君がいたら心強いとは思わないかね?」


  確かに心強いけど、なんだか王様のいいようにされている気がする……。けど、乗らない理由もないしなぁ……。


「わかりました。護衛任務、謹んでお受けいたします」

「クリスさん!?」


  俺が考えている間にクリスさんが答えてしまった。


「元々アキナちゃんについて行くつもりでしたし……それが陛下からのご命令になっただけです。何も問題はないですよ」


  確かにそうなんだけども、明らかに裏があるでしょう……。もちろんクリスさんも承知の上なのだろうけども……。

  クリスさんの様子に王様は満足そうにしていた。


「そうかそうか!  なら、とりあえずの行って欲しい目的地を伝えておこうかな。エリック!」

「はっ。……これを」


  エリックさんが取り出したのは簡単な地図のようだった。真ん中と南東に大きな湖のある大陸と、北東の方角に島の描かれた地図だ。


「この大陸の東側が我が国のあるディカルディ王国だ。西側がヴィヴォール聖教国、北側がエルシュテール帝国だな。離れた島には魔族が住んでいて、魔王もこの地で復活すると言われている」


  つまり最終的な目的はこの魔族の島になるのかな。

  しかしディカルディ王国ってかなり大きいんだな……。大陸の半分ぐらいは占めているし、中央の湖は3国に面しているが南東の湖は丸々自国のものだ。水資源に恵まれているといっていい。


「君たちに行ってもらいたいのは……ここ、我が国とヴィヴォール聖教国の間にあるこの小島だ」

「この小島に何かあるんですか?」


  行って欲しいというからには何かあるんだろうけれど、一体何があるんだろうか。

  あんまりにも俺の目的に外れてそうな場所なら行きたくはないんだけど……。


「ここには、勇者伝説に出てくる守護者の1人、緑の鐘の聖女ミレミアの墓があると言われているんだ」

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