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「セクハラですか」 「おたく中身男だろうが!」


「ゴブリン、キング?」

「ああ、ゴブリンの中でもより強大で知能もある。それに、他のゴブリンには無い特殊能力も持っていたりするな。まぁとにかく見たらわかる」


  ディーンさんはそう言った後に、洞窟へ突撃して行く。

  洞窟の入り口を守る鎧を着たゴブリンが、まるでバターを切るみたいにアッサリと斬られて死んでしまった。普通のゴブリンよりも強かったはずなのに……。

  入り口の見張りを全滅させたディーンさんがついてくる様に促している。俺は行きたく無いのだけど、ルーカスさんが降ろしてくれないため、無理やりに洞窟の中へと連れられる。


「ねぇ、いい加減に降りたいんだけど」

「降りた途端にゴブリンにやられる心配がなければ、とっくに降ろしてるっての」


  確かにその通りなんだけど、みんなが真面目に戦ってる中で両手足をダランとぶら下げたままなのはなんというか格好がつかないというか……。

  そんな俺の気持ちをよそに、洞窟の探索は進んで行く。道中のゴブリンは相手にならず、ゴブリンがこちらに近づく前にフユが狙撃をして戦闘にすらならないし、万が一近づけたとしても、ディーンさんとクリスさんが一瞬で屠っていく。

  倒していった魔物の中にはゴブリンジェネラルやゴブリンロードといったゴブリンの中でも強力なものもいたのだが、それもあっさりと倒してしまった。【鑑定】で能力を見た時にはやばいんじゃないかと思ったが、そんなことはなかった。

  ほとんど一本道だったが長い道が続き、目の前に広い空間が見えてくる。その入り口の影になるところに身をひそめる。


「ふう……。恐らく、ここが最奥だ。見ろ、あの奥にいるのがゴブリンキングだ」


  ディーンさんが親指で指を指す。

  指をさした先には、今まで見たゴブリンはよりも何倍も大きく、額に黒く光る巨大な角を生やしたゴブリンがいた。でっぷりと太っていて何匹もの雌のゴブリンを横に侍らせている。どちらも醜悪な顔をしているので見ていてなんというか……キツい。今にも吐いてしまいそうだ。


「……吐いたりとかしないでくれよ」

「なんでわかったんですか」

「腹触ってるんだし嫌でもわからぁ」

「セクハラですか」

「おたく中身男だろうが!」


  大声を出しすぎたと、口を押さえた時にはもう遅かった。

  側近のゴブリンの一匹がこちらにやって来ていた。俺は引きつった笑顔で手を振るが、モンスター相手にそんなのが効くわけもなく。

  ゴブリンが手に持った剣を振り上げると同時に、氷の矢が頭に刺さり倒れる。

  フユが弓を構え矢を射っていた。ただし、その目はこちらをジトッと睨んでいる。


「いや、俺じゃないし。こいつだし」

「こいつっていった!  おたく俺のことなんだと思ってんですかねぇ!」

「……俺を運ぶ係?」

「漫才は後!  来ます!」


  クリスさんが盾を構え直す。それと同時に、ゴブリンキングが咆哮する。

  見ればすでにゴブリン達がこちらに向かって来ている。後方からも、今はまだ見えてはいないがゴブリン達が向かってくる音が聞こえてくる。


「なんで後ろからもゴブリンの声が!?」

「ゴブリンキングは自分よりも弱いゴブリンを操るスキルを持つという。今の咆哮が、そのスキルの発動だったのかもしれない」


  ディーンさんは剣を構えたままそんな考察をした。

  フユが呆れた目で俺とルーカスさんを見る。


「はぁ、何してくれてんでしゅか」

「お、俺じゃないし」

「俺でもないぞ!」

「どっちでもいいでしゅよ。私が後ろを殲滅して来ましゅか?」


  フユがそう提案すると、ディーンさんは少し考えた様な顔をする。けれども、その目は向かってくるゴブリンを決して捉えて離さない。


「そうだね。ゴブリンキングも私一人でどうにかなりそうだ。だったら、安全に帰れるように先に後ろのゴブリンを任せていいかな」

「任されたでしゅ」

「クリスは私が撃ち漏らしたゴブリンを。ルーカスはそのままアキナちゃんを抱えて逃げててくれ」

「あいよ。……なんか俺の扱い酷くねぇ?」

「では……いくぞっ!」


  掛け声と同時にディーンさんが飛び出し、フユが駆け出す。

  後方からゴブリンの悲鳴が聞こえてくる。きっとフユがうまくやっているのだろう。

  問題はこっちだ。広間になっている場所に、ディーンさんが単身で飛び込んで行く。入り口でクリスさんが隙なく構え、ルーカスさんが俺を抱えながら後方に注意を向けている。フユの撃ち漏らしを警戒しているんだろう。


「はああっ!」


  ディーンさんの掛け声が洞窟に反響する。剣を一振り、また一振りと振っていき、その度にゴブリンが倒れていく。

  戦闘の素人の俺にはよくわからないが、ディーンさんってめちゃくちゃ強いんだろうか。

  結局のところ俺にできることなんて何もないので、とりあえず【鑑定】を使ってみることにする。


ーーーーーーーー


  ゴブリンキング  魔物 

HP:3400/3400

力:620

防御:310

魔力:90

素早:110


  スキル

・剣術 C     ・下位統率  B

・炎魔法 C  ・無し


  称号

・ゴブリンを統べる者


ーーーーーーーー


  ゴブリンジェネラル  魔物 

HP:950/950

力:140

防御:85

魔力:40

素早:55


  スキル

・剣術 C   ・無し

・無し   ・無し


  称号

・無し


ーーーーーーーー


  ゴブリンキングの情報を読み取った時、見なければよかったと思った。今までのどの魔物よりも高い能力がそこには並んでいる。強化したフユでも、苦戦するんじゃないのかというほどだ。

  慌ててフユの能力をさらに引き上げようと思ったけれど、どうやらある程度近くにいないとPtを振ることができないらしい。

  能力値だけでなく、スキルの欄には【炎魔法】の文字がある。魔力は辛うじて100には届いていないけれど、遠距離からも攻撃できるのは厄介だ。他にも【下位統率】というものがあるが、これがさっきの、後方のゴブリンを呼び寄せた能力だろうか。

  その情報を、どうにかしてディーンさんに伝えなければ。俺はルーカスさんに話しかける。


「ルーカスさん、ディーンさんにゴブリンキングが炎魔法使うって伝えられないか?」

「なんでそんなことお前が……あぁ、【鑑定】か。けど、まぁ、大丈夫だろ。というか、向こうに突っ込む方がリスクすぎる」


  確かに危ないのはわかるけど、それよりも攻撃するディーンさんがやられてしまう方が危ないんじゃないだろうか。

  そんな疑問が募る中、ディーンさんは周りのゴブリンを全て倒し、ついにゴブリンキングと対峙した。

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