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「なぁ、フユ。あれ、味方も危ないんじゃ」 「気にしたら負けでしゅ」


「やぁおかえり。フユちゃんの腕前はどうだったかな」


  テントに戻ってくるなり、ディーンさんが明るい笑顔で話しかけてくる。もっとも、明るい雰囲気を出しているのはディーンさんだけで、他の人たちは真剣というか、鬼気迫る様子だった。

  その迫力に気圧されていると、クリスさんが耳打ちしてくる。


「フユちゃんはばったばった簡単に倒していたけれど、普通の人にとってはゴブリン一匹でも手間取ったりするのよ。油断すれば死んでしまうの。だから、みんなああやって真剣になってるのよ」


  納得だった。

  さっきのフユ無双で感覚が麻痺しそうになっていたが、モンスターと戦うのは命懸けなんだ。油断して死んでしまっては元も子もないだろう。

  ふむ、とディーンさんが何か考え、騎士団や冒険者たちに指示を飛ばす。

  ゴブリンはかなり広い範囲で暴れているらしく、3、4人のチームになって散らばって殲滅して行くそうだ。


「私とクリス副団長、ルーカスは親玉を潰しに行く。アルフレッド、君はこの場に残って全体指揮を取ってほしい。頼めるか」

「はっ!  お任せください!」


  アルフレッドと呼ばれた騎士が威勢良く返事をする。なんでもここにいるメンバーの中ではナンバー3の腕前らしく、ディーンさんやクリスさんからの指示がないときは彼がいつも全体指揮を行なっているらしい。

  ところで、ディーンさんたちが親玉を倒しに行くとなったら、俺たちはどうするんだろうか?


「あの、ディーンさん。おれ……私たちはどうしたら」

「はは、わざわざ口調を直さなくてもいいよ。アキナちゃんとフユちゃんには私たちと一緒に来てもらう。フユちゃんの殲滅力で梅雨払いをしてもらい、私とクリスで突撃して親玉を潰す。ルーカスにはアキナちゃんの護衛と、不測の事態に備えてもらおうかな」

「ーーえっ?」


  俺たちもディーンさんたちと一緒に行く?  話を聞く限り1番危険な場所に?


「不安になってるみたいだけど、私たちと来たほうが安全だよ。ほぼ全員が村から出払うから村は無防備、それに自慢じゃ無いが私もこの部隊の隊長として実力はあるつもりだ。クリスとルーカスもこの中じゃ突出して強い。それにフユちゃんも相当な使い手なんだろう?  実力者4人に囲まれていたほうが安全ということさ」

「ぐぅ」


  そう言われると反論できなくなってしまう。

  クリスさんやフユは目の前で実力を見ていたから強いのはわかる。ディーンさんも雰囲気で強いというのがわかる。ルーカスさんは……よくわからないけど、ディーンさんが強いと言っているから多分強いんだろう。

  けども、だからって、前線に行くのはどうなんだろうか。場所的には1番危険だけど、周りにいる人たちは強いから安全……。ゴブリンがどう動くかもわからないし、村に残るのもそんなに安全じゃ無い……。


「団長!  ゴブリンがっ……ゴブリンが突然村に攻めて来ました!」

「なっ!?」


  慌てて飛び出したディーンさんや他の騎士団の人を追いかけて行くと、群れをなして進んでくるゴブリンの姿がそこにあった。

  ただのゴブリンだけではなく、鎧でしっかりと身を固めたゴブリン、まるで魔法使いの様な格好をしたゴブリン、他のものよりも二周りも身体が大きいゴブリンなど、様々なゴブリンが、一直線にこの村を目指している。


「怯むなっ!  一匹一匹はそう強く無いぞ!  かかれっ!」


  アルフレッドさんが騎士たちに号令をかける。それに合わせて、冒険者たちも各個にゴブリンを倒して行く。

  確かにゴブリンの能力はそう高く無い。俺は改めてゴブリンと、相対した騎士の能力を【鑑定】で見比べる。


ーーーーーーーー


  ゴブリン    魔物

HP:250/250

力:20

防御:10

魔力:5

素早:20


  スキル

・剣術 E    ・無し

・無し       ・無し


  称号

・無し


ーーーーーーーー


  ノーリュス・アケロイ    ヒューマン

HP:700/700

力:60

防御:55

魔力:10

素早:50


  スキル

・剣術 C     ・無し

・無し       ・無し


  称号

・無し


ーーーーーーーー


  これなら問題なく倒せるだろう。

  ただ、問題なのはその奥にいる相手だ。数匹だけれど、明らかに騎士よりも強い個体がいる。数人がかりでどうにかなるか、という能力値だ。


「アルフレッド、私とクリス副長、ルーカスにこの子らはボスを狩りに行く。一日早くなったがこの場を任せられるか」

「はっ、どうにか押さえておきます。隊長もご武運を」

「よし、ルーカス!」


  ディーンさんがそう叫ぶと、フッと俺の足が地面から浮く。見ればルーカスさんに担がれている様だった。脇に抱えられたそれは、何をどう見ても誘拐ルックである。


「ちょっ!  ちょっと!」

「緊急事態だ!  黙ってねぇと舌噛むぞ!」


  ガックンガックンとハイスピードで揺れるので非常に酔いそうになる。下手な絶叫マシーンなんかよりも怖くて気持ちが悪い。

  ディーンさん、クリスさん、ルーカスさんが全力で駆ける。後方からフユも追いかけてくる様だった。

  その行く手を、大量のゴブリンが塞いで行く。前方はディーンさんとクリスさんが片付けて行くが、後方からもかなりの数が追いかけてくる。もう、他の人たちは見えなくなってしまった。


「あの数じゃ後ろも不味いんじゃ……」

「餞別でしゅよ。ーー【流星雨】」


  フユが頭上に向けて氷の矢を放つ。氷の矢は空中で破裂し、無数の氷塊となってゴブリンに襲いかかる。まるで流星が降るかの様だ。阿鼻叫喚の地獄絵図がそこにある。若干、騎士や冒険者も被害受けて無いか?


「ナイスだフユちゃん。今のうちに本陣へ切り込むぞ!」

「なぁ、フユ。あれ、味方も危ないんじゃ」

「気にしたら負けでしゅ」

「負けでも何でも無いよねぇ!?」


  そんな俺の叫びを無視し、フユは高速で動き目で追えなくなってしまった。周りを見渡せば氷の矢が刺さったゴブリンが倒れているのでついて来てはいるんだろう。

  そんな中、一匹のゴブリンが俺の方へと飛びかかってくる。うわぁっ!  と悲鳴をあげてしまうが、その時には頭にナイフが刺さってゴブリンは死んでいた。


「なっさけない悲鳴出すねぇ、嬢ちゃんは」

「ルーカスさんがやったのか……?  ちゃんと強かったんだ」

「あんた俺のことなんだと思ってたんですかねぇ!?」


  ギャイギャイと騒ぎながらも、俺たちは進んで行く。

  ゴブリンの猛攻が少し止んだあたりで、洞窟が見えて来た。村の方へとやって来たゴブリンよりもさらに強そうなゴブリンが守りを固めた、明らかに何かありそうな洞窟だ。


「さて、あれが今回の大ボス。ゴブリンキングのいる洞窟だ。気を引き締めて行くぞ」

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