第一章 転生 魔王の種
暑すぎる!
「『魔王の種』ですか....」
こんな時に...
『魔王の種』とは『邪神の種子』の通称で放って置くと種から魔力が放出され、空気中の魔力を変化させる。
そして、変化させた魔力を再び吸収し、魔力が溜まってくると瘴気を放つ、放ってから一日から二日で種が発芽し魔王が生まれる。
生まれて来る魔王にも個体によって強さが違う。
『昆虫型』、『植物型』の魔王は手練の軍隊が千人で倒す事が出来る強さ。
『動物型』の魔王は国が軍隊を全て投入すれば倒す事が出来る強さ。
『龍型』の魔王は全ての国、全ての種族が組み連合軍で挑んでも倒せるかどうかわからない強さ。
そして一番厄介で強力なのが『人型』の魔王である。
魔力や力、知能は全ての魔王の中でもずば抜けて高く、『人型』の魔王は現状セレネの『破壊の神眼』でないと倒す事が出来ない程強力な魔王である。
しかし強力な魔王程生まれて来る確率が低く、大抵は『虫型』や『植物型』でたまに『動物型』が生まれて来る。
そして極低確率で『龍型』、『人型』が生み出されるのだ。
セレネは『龍型』までなら余裕で倒せるのでまだ人類が倒すことが出来ない『龍型』、『人型』を密かに倒している。
因みに以前一度だけセレネは『人型』の魔王が生まれるところを見たことがある、邪神が取り付いた魔物以上に強く、その時は国が滅びかけた。
あの時は大変でしたまさかあそこまで強いとは....勝ちましたけどね。
「それは間違いないのですね?」
「はい、私達三人で確認したので間違いありません」
セレネは再度確認しながら顎に手を置き、対策を考える。
「瘴気は出ていましたか?」
「いえ、瘴気はまだ確認できませんでした」
「ならまだ時間には猶予がありますね。
とりあえずカカ村の村長にこの事を話して種の側には近付かない様お願いしてきてくれますか?」
「そう言うと思ったので〜♪もう言ってありまよ〜♪」
「あら、手際がいいですね」
「長い~♪、付き合いですから~♪」
「・・・・私の方が長い・・・」
「わ!、私の方が長いぞ!」
些細なことで喧嘩をする弟子達を微笑ましく見守るセレネ、首に掛かっているネックレスを撫でていると不意に咳き込む。
「けほっ!、けほっ!」
咳き込むのを見るや否や喧嘩を中断し三人は急いでベットに近づく。
「師匠!」
「お師匠!」
「お師匠様!」
ちょっと咳をしただけなのにみんな心配しすぎだと思うんですけど。
まったくみんな心配性ですね。
「大丈夫ですよ。咳をしただけですから。
そんな事よりお昼にしましょ♪、僕が作るわけじゃないんですけどね。」
「大丈夫なんですか~?」とか「もう寝ててください」とかしつこく聞いてくるのでセレネは切り札を投入した。
ぺたぺた触ってくる三人の頬に「ちゅっ」と素早く口づけする。
一瞬で三人共の心を奪ったセレネはすかさず止めを刺した。
「僕の言う事聞いてくれますよね?」
少し色っぽく声を出すと三人手で顔を背け、口元を隠してから「「「でゅふでゅふ」」」と笑って「「「わらりまひた〜♪」」」と千鳥足で部屋から出て行った。
下から「今日は私が作る!」「今日も〜♪私が作るわ〜♪」「・・・今日こそ私が作る・・・・」っといった声が聞いてきた。
ふふふ。三人共チョロイですね....もっと声低くならないかなぁ。
「ごほっ!ごほっ!」
セレネは前かがみになり口元を隠しながら激しく咳き込んだ。
手には血が付いている。
・・・もう長くはありませんか。
以前、魔王と戦った時にセレネは傷を負い、病にかかってしまった。
『魔力病』と言って生きている限り、徐々に魔力を消費していく病気で、放っておけば魔力を消費し尽くし、体力までもが魔力に換えられ消費していく。
『エリクサー』などの霊薬で治せるのだが『神々の試練』を攻略する時に全て使い切ってしまい、残りの霊薬はホームの宝物庫に眠っているし、作ろうにも素材が何処にあるのかわからない。
元々収集癖があったセレネは少しでもドロップアイテムを手に入れるため最低限のアイテムしか持って行っていなかった。
ホームが使えればこれくらい治せたのですが無い物を強請ってもしょうがありませんよね。
それに自分の力を過信した所為でこの事が起こったんですから治せなくても仕方ありません。
セレネは目を閉じ『ステータス』と念じた。
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【名前】セレネ(病)
【年齢】317
【性別】男?
【種族】神(修行中)
【レベル】300
【HP】5000
【MP】0
【スキル】『剣術LV10』『二刀流LV10』『槍術LV10』『全属性魔術LV10』『治癒魔術LV10』『重力魔術LV10』『時空魔法LV10』『合成魔法LV10』『念力LV10』『槍投げLV10』『無詠唱LV10』『先見の目LV10』『アイテムボックスLV10』『魔力感知LV10』『索敵LV10』『偽装LV10』『並列思考LV10』『極寒耐性LV10』『武具創造LV10』『破壊魔法LVEX(使用制限残1)』『創造魔法LVEX(使用制限残3)』『大天使の羽LVEX』
【固有スキル】『破壊の神眼LVEX(使用制限)』『創造の神眼LVEX(使用制限)』『神の歌声LVEX(使用不可)』『使徒化LVEX』『全知全能LVEX』『限界突破』『龍化』『進化』
【称号】邪神を葬りし英雄 神になる者 世界を救う者 破壊と創造を司りし者 魔王を葬りし英雄 勇者 龍神に愛されし者 大天使に認められられし者
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....やっぱり減っている。
『セレネ寝てないと体に触りますよ?』
不意に頭の中に声が聞いてくる。
「イリスも心配性がうつったんですか?」
『ふふふ、そうかもしれませんね』
「何時になったらしい残りの神様は来るんでしょうか?」
窓から空を見上げペンダントに尋ねた。
『向こうの世界とこっちの世界では時間の流れが違いますからね』
初耳なんですけど。
でも流石に時間の流れが違うって言っても三百年も待たせますかね普通。
「具体的には?」
『う〜ん。向こうの世界の一日がこっちの世界の百年ぐらい離れてます』
遅れるのも仕方がありませんね、すみませんでしたゲーマーの皆さん。
はぁっと溜め息を吐き窓から外を眺める。
今日は少し散歩でもしようかなと考えているとドアをノックした音が聞こえてくる。
お、お昼が出来たんでしょうか?
「は〜い」
「師匠、お昼が出来ましたよ。
さぁ、お手を」
っと言って僕の前に手を出しくる。
別に一人じゃ立てないほど衰えている訳じゃありませんよ?。
ちゃんとこれには訳があるんです、セレネが調子に乗って神話に僕の容姿や格好を書いたからなんですよ。
書いた内容の中に『破壊の神眼は真紅の眼、創造の神眼は空色の眼両目には『神界魔法』の術式刻印が映されている』っとあるのです。
もうお分かりですね?。
そう・・・・目が開けられないんですよ!。
外へ出る時や戦っている時にはフードなり仮面なりで隠せますが家の中ではそうもいかないのです。
最初の弟子を取る時に気付けば良かったのですが全ては後の祭りに成ってしまいました....。
お陰でこっちは眼が見えない演技をしないといけなくなってしまいました、毎日かわゆい弟子達を騙しているかと思うと罪悪感が・・・はぁ。
イリス恨みますよ。
因みに眼をつぶっていても僕には『魔力感知』がありますから魔力の持つ物や生物なら何をしているのかとかわかるんですよ。
『本当にごめんなさいセレネ』
そんな声が聞こえた気がした。
★
今みんなでお昼ご飯を食べているのですが、なんだかみんなが暗い気がします。
なぜでしょうか?
こう言うのはストレートで聞くのが一番なんですよね。
「どうしたんですが?、なんだか今日は暗いですね?」
すると三人はアイコンタクトをし頷くとミーナが重い口を開いた。
「師匠、私達は強くなっているでしょうか?」
真剣な表情で言った
「強くなっていますよ」
セレネは即答した。
確かに強くなった。
この世界でミーナ達に勝てるのは邪神、神龍と言ったお伽話や神話でしか出てこない者達そして『人型』の魔王だけだろう。しかし
「君達はまだ魔王に勝てませんよ」
「なぜ!」
ミーナが勢い良く立ち、椅子が倒れた。だが誰も気に留めず全員セレネの顔を見ている。
「私達は確実強くなっています、師匠も仰っていたじゃないですか!」
「ミーナ達に足りないのはひとつ、実戦経験です。
実戦経験が少ないと必ずいざと言う時にボロが出る。
そして戦いにおいて一瞬の隙が命取りになる。
この意味は分かりますか?」
「・・・・・」
返す言葉が見つからずミーナ達は俯く。
「いずれはちゃんと経験を積んで貰いますよ。
そして何時かは私の代わり魔王からこの世界を守って貰おうと思っています。ですが今じゃありません、
幾ら強くなっているからと言っても初戦が魔王だなんて負ける確率の方が高いですからね」
「今回も僕が魔王を倒します。貴方達は僕のサポートと村の周辺に結界を張って下さい。いいですね?」
セレネは少し厳しい口調で念を押した。
「「「・・・分かりました・・・」」」
「よろしい」
「・・・」
みんな表情が暗いですね、少しきつく言い過ぎましたか?。仕方ありません、ここはひとつあれを使いましょうか。
「しかしこの戦いで頑張った人達にはご褒美をあげましょう」
セレネは笑顔で言った。
その話を聞いた瞬間リリィとミリアが勢い良く立ち、セレネに迫った。
「「本当ですか!お師匠」様」
「本当です。だから冷めない内に食べましょう」
「「はい!」」
みんな満面の笑みを浮かべて席につき、ご飯を食べた。
ミーナを除いて。
「師匠そんな体でまだ戦うんですか...」
その声は誰にも聞こえなかった。
★
「っ!!」
明け方セレネは莫大な魔力を感知し飛び起きた。
まさか!
「ミーナ!、リリィ!、ミリア!」
三人を呼びかけても反応がない。
「くそ!」
ベッドから下りて急いで装備に着替える。
アイテムボックスから白い刀と真紅の槍を取り出し刀は腰に槍は背中にかけ窓から飛び出した。
あの魔力は間違いなく魔王の魔力しかも前戦った『人型』と同じかそれ以上の魔力を感じます、急がないと。
ミーナ達は嘘を付いていましたね。お仕置き確定です。
背中からキラキラと神々しく輝く四対八枚の天使の羽を展開し、空を物凄い速さで魔力源の元まで飛んだ。
間に合って下さい!。
するとそこにはミーナ達と紅の髪の女性が対峙している。
見るからにミーナ達が押されていた。
やはり『人型』でしたか、しかも前戦った『人型』の魔王と比べて強いですね。
紅の髪の女性が炎を纏った剣で斬戟を繰り出す。
咄嗟に槍を背中から引き抜きミーナ達から離れさせようと槍を魔王に向けて勢い良く投げつける。
すると魔王はセレネの魔力を察知し、後方に勢い良く下がった。
槍が突き刺さった所はクレーターができ、セレネはミーナ達と魔王の間に入る。
「僕の弟子達に何をしているんですか?」
日々精進m(_ _)m