episode1
一番最初に思った言葉は、『私は誰?』。
二番目に思った言葉は、『貴方達は誰?』で。
三番目に思った言葉は、『どうしてなの』だった。
一瞬にして、私は自分を失った。
点滴と機械に繋がれた私の部屋には、6人の男の人達がいて。
彼等は目覚めた私にこう言った。
「俺にお前の記憶を戻させろ」
「僕に貴女の記憶を戻させて下さい」
「私に貴女の記憶を戻させて下さい」
「僕にキミの記憶を戻させてっ」
「え……?」
一番最初に言った言葉は、『私は誰……』。
二番目に言った言葉は、『貴方達は……』で。
三番目に言った言葉は、『どうして、私なの』だった。
「あ、あの…」
何を言うわけでもなく、私は6人に声を掛ける。
「なんだ?」
狼を思わせるような、ライオンのような、絶対的な支配者のような男の子が答えた。
6人の中でも一番派手な服装で、仁王立ちをしている。
「…ンだよ。俺が答えたのが意外だってのかよ」
「あ、ち……」
「否定すんなよ。分かってるってーの」
「……」
高圧的な笑みを浮かべ彼は言った。
「あーはいはい。そこまでー!時間がもったいないからちゃっちゃと進めちゃお?」
今度は6人の中で一番背が小さい男の子。さっきの人より派手ではないけれど、ふわふわしていて、重そうな服を着ている。
「もう。で、えーっと、キミの名前は…あぁ、イオリちゃんか!いい名前だね」
イオリーー……。
その名前を聞いても、何も感じなかった。
私の名前を言った男の子は、ネームプレートを見て言ったのか。私の背後を見ていたが、すぐに視線を私に変えた。
「僕の名前はロズウェル。気軽にロズって呼んでね!」
人懐っこい笑顔でロズウェルことロズは手を伸ばしてきた。
私は意味がわからず首をかしげる。
「……?」
「握手だよっ。あーくーしゅ!ほら、手!」
そう言われて手を伸ばすと、ロズは手を握って思いっきり振る。
それが終わると、彼は一歩下がった。入れ替わるように前に出たのは、眼鏡をかけている人だった。特に何を話すわけでもなく、私をじっと見つめる。
格好は軍服のような、執事のような不思議な格好。それなのに、その服はその人によく似合っていた。
「……初めまして、イオリさん。私はラーヴェ。ラーヴェ・アルシェリア・フロムです。どう呼んでくれても構いません。よろしくお願いします」
無機質な顔。でもすごく綺麗だった。
ラーヴェさんは軽くお辞儀をすると、一歩下がる。そして初めの彼が前に出た。
「ふん。俺様の名ははラスだ。お前は特別にラス様と呼んでも……ーーいって!何すんだよ!この、クソ眼鏡!」
「クソ眼鏡とは心外です。彼女は私達の主となる方。高圧的な態度をとってこれからの事に支障が出たらどうするんですか」
「……ッチ」
高圧的な態度をとったラス。そんな彼の後頭部を叩きつけたのはラーヴェさん。
これからの事って、何だろう。私は、そんなことを思っていた。