夏川ツバキ⑦
黒のキャンピングカー内に夏川はいた。そこには傷を負った東城とホタルも同乗していた。
夏川は節目がちにホタルに声をかけた。
「例のデータとやらはどうなったんだ?」
「完璧だな、依頼完了だ」
そっか、と小さく呟く。ぶっちゃけどうでもいいのだが、せっかく命をはったのだから成功してもらわないと困る、といった感じだった。
ケータイを握り締める夏川に東城は
「お前がやったあの能力者、そうとう強い奴だったみたいだぜ?お前が素人だと思って油断してたみたいだが」
「……たまたまだ、あんなの」
「アザミちゃんも喜んでたぜ?」
「あっそ……そういやもう一人の新入りってのは……」
そこまでいったところでホタルが口を挟む。
「死んだ。……まぁ、当然だな」
「そっか……」
キャンピングカーは揺れる。そこで突然思い出したように夏川が手を挙げた。
「あ、運転手さん。ここで一旦止めてくれ」
「ん?会社までまだ距離はあるぞ?」
「ちょっと寄りたいとこがあるんだ。10分程度で終わる」
「すぐ済ませろよ」
了解、と夏川は言い切るとバッグを手にして一度家に帰還する。
……さぁ、もう一仕事だ。