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殺し屋、始めました。  作者: カピバラ
モノクロ
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カゲナシVSヒーロー



赤凛ドウ。二重人格者でありヒーローのチカラそのものは彼のものではない。ということで現在はヒーローと呼称しても差し支えないだろう。当のヒーローは二つの組織を相手にし、当たり前のようにのしていた。しかし、まだ終わらない。ホタルの乗っていたヘリは墜落し轟々と燃えていた。ホタルはギリギリで脱出し逃げ切るも、着地の衝撃で動けずにいた。新たな襲撃者のせいで。



 「発砲音のない弾丸……とうとう来たかカゲナシ」



小柄な体。変声期前の甘ったるい声。目の下の隈。ヒーローという脅威の前で丸腰で来たのは黒崎ケイトウだった。



 「はろはろー。キングとか呼ばれてる人の仲間ってことでおっけー?」


 「問題ないな。シ……キングは私の戦友といってもいいかな」


 「そう……ボクがしたいのはさ。あいつにボクと同じ思いをしてほしいんだ。だからさ、おまえらぜいいんしんでもらうから」



ガシャコン!! といきなり黒崎の手にライフルが現れる。能力を誇示したようにも見えるが本質は別。俺はこういうことをするんだぞと、俺にはまだ別の手があるんだぞという意思表示の他なかった。黒崎は迷いなく引き金を弾くも、ヒーローの体を傷つけることはなかった。



 「銃でのそんしょうはみられず。だいにフェーズへ移行」



ヒーローが何か言う前に黒崎はライフルを投げ捨て新たな武器を取り出す。身の丈に余る程のランチャー。またも躊躇なく引き金を弾く。カシュッ……と小さな音が聞こえた。標準は的外れにヒーローの頭上近くへまで行き、起爆した。中身は火薬ではなく、液体。ヒーローを中心に液体が撒き散らされる。



 「この匂い……野郎!!」



ガソリン。気づいたヒーローは凄まじい勢いで黒崎へと走る。だが、黒崎の表情は変わらない。



 「なるほど。熱はダメなのか。いいことをしった」


 「忘れては……くれないか!」


大きく踏み込み、跳躍する。走り幅飛びによく似ていた。黒崎の視界を塞ぐように迫る。銃弾ですら貫けなかったヒーロースーツで。しかし、黒崎は脅威を少しも感じなかった。なぜならば


 「ころす気がないならていこうするな……ッ!!」


 「ハハ……バレた?」

 

 「子供あつかいするな!!」


初めて表情の変化があった。負の感情を塗り固めたような、普通の人生を送り、ましてや小学生程度の年でする表情ではなかった。それだけの経験をした。それだけの挫折をした。それだけの憎悪があった。だから、黒崎はここにいる。


 「クソやろう……死んじゃえばいいんだよ!!」


迫り来るヒーローに発火弾を向ける。ヒーローは空中で身じろぎした。熱を受けるから、だなんて自分の都合よりも黒崎の心配をしたからだ。ここで自分が燃えれば彼もただでは済まない。例え彼が自分を狙う敵だとしても殺していい理由にはならないのだ。彼もまた、黒崎と同じだけの経験をし乗り越えた。


挫折し復讐の阿修羅となったもの。それが黒崎ケイトウという人物像。

世界を見渡し、汚れた部分を正そうと立ち上がった者。それが赤凛ドウ(ヒーロー)という人物像。

人生の分岐点において、後ろを向いた者と前を向いた者。これはそういう戦いなのだ。


 「私はッ!! 例え君が私を敵視し、殺そうとしていてもッ! そんな負の連鎖から君を『救って』見せるッ!」


 「うるせぇ! よのなか全部きれいごとでおさまると思うなよ!! このぼくが救われるわけないだろぉおおおがぁぁあああ!!!」


火炎弾を、放つ。ヒーローは咄嗟にヒーロースーツと同じ材質の箱を作りだし、火炎弾をそれに封じ込めた。しかし完全に抑えた込めたわけだはない。隙間から炎と爆風が吹き荒れる。二つの叫び声が響いた。火花は周辺に大きく飛び散り、黒崎がヒーローにガソリンをぶちまけた道路が轟々とバカみたいに燃えている。そして当人達は。


 「あっつぅ……クソぉ……」


 「バカが……」


黒崎は爆風などで皮膚が少しやけどを負っているものの重症には至らなかった。今倒れているのは痛みというよりも悔しさからか。それよりも重症なのはヒーローだ。ヒーロースーツがガソリンに濡れていたため炎は激しく燃え、スーツ内の体が焼け爛れてしまっていた。ヒーロースーツが半分ほど焼け落ちていた。これは強度というよりもドウ自身の能力制御ないし『ヒーロー』という人格の操作が手につかなくなったからだ。ドウはヒーローには頼らず自身の力で立ち上がる。


 「君が……それだけの悲劇を経験したのかは知らない。今となっては知るすべもないことなんだと思う。でも、その悲劇がシロや僕らを殺すことで終わることなのか?」


 「……そうだ」


 「違うだろう。君はただ、何も思いつかないからとりあえず行動を起こしているだけだ。そんな思いつきだけで人生を棒に降っちゃいけないよ。まだ、若いんだ。なんだって出来る」


 「……さっきからだまってきいてれば」


 「綺麗事だって言いたいのか? じゃあ逆に聞こう。その悲劇はそんな簡単に幕閉じしていいものなのか? 所詮そんなものなのか?」 


 「……」


 「……」


 「……じゃ、じゃあ」


黒崎の口が小さく動いた。妙に聞き取りづらい声だった。黒崎は涙ぐみながら言葉を紡ぐ。


 「じゃあどうすればいいんだよ……どうやったってアザミさんは戻ってこないんだよ……僕だってかんがえた。まちがっているんじゃないかって。でもアザミさんの仇を取りたかった。それだけだったんだ……」

 

 「考えよう。僕たちと一緒に」


 「……うん」



黒崎はヒーローから差し出された手をとった。もう、大丈夫。そうドウは確信した。彼の心にだって正義はある。



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