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殺し屋、始めました。  作者: カピバラ
モノクロ
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シロ 肆




翌日。



木漏れ日が煌く公園。かつて夏川はここでホタルと出会い、汚い世界に引きずり込まれた。記憶とは曖昧で、それでいて他人の記憶を無理やり埋め込められているのだからしょうがないのかもしれない。ちょうどあの日と同じような昼の寒空。ランニングの休憩にと立ち寄ったのが、偶然ここだったのだ。


……なんてセンチメンタルになってる時間は数秒ほどしかなかった。



 「居たぞ!! アイツだ!」


 「俺達熊谷組の顔に泥塗りやがって!!」


 「取り押さえろ!」



 「なになになになにっ!? なんで俺追いかけられてんの!?」



ゴツイ見た目の大男、ざっと見て10名ほど。各々が鈍器や刃物を持っている。対して、シロの方はスポーツショップで買ったばかりのジャージに素手。ぼんやり歩いていたら、いきなり追いかけられたため反射的に逃げることになったのだ。



 (なんだ、俺って何かしたっけ!? 生後一ヶ月も経ってないのになんで俺の人生はこうも危険が多いんだ。と、とにかく助けを呼ばないと。クロ……は能力者らしいけど、逆にダメ。能力が露見したらアウトだ。同じ理由でドウ……ヒーローもダメだ。そもそもアイツはホントにヒーローなのか? だと、したら残りはホタルと青葉か…………あ……)



とここまで考えて一つ思い出した。誰を呼ぶとか、助けを求めるとかそういう次元ではなかった。結論。彼は携帯電話を持っていなかった。昨日の朝飯代でさえもクロに借りたものだ。携帯など持っているわけない。手元には150円だけあるが、こんな都会で公衆電話が見つかるとは思えない。



 「待てぐぉらあ!!!」



走り逃走する後ろからはなお、怒声が飛び交う。一人で逃げ切るしかない。爽やかな空気の公園を乱さぬよう、塀や柵を飛び越えながら走り去っていく。


逃走劇はここからだ。




 ◇


 ◇


 ◇



シロが謎の男達に追われている一方で。パセリも窮地に立たされていた。心臓が口から飛び出そうになる、というのはこういうことを言うのだろう。目の前の客人、または依頼人用のソファに座るのはブランド物の服を寄せ集めました、というファッションの男だ。灰色の髪の隙間からは白く濁った瞳が見え隠れする。



 「夏川さん……わざわざ事務所まで来られるなんて……言ってくれればこちらから伺ったンスけど」


 「あんなボロアパートに呼ぶつもりはない。それよりさっさとユリの情報を差し出せ」


 「と、言われましても依頼からまだ一日しか経ってないんで情報が集まってないンスよ」



夏川が露骨に舌打ちする。同じ遺伝子とは言え、シロとは大違いだ。シロも大概狂っているように見えたが、こちらは別格だ。逆に、人間とは負の感情を表に出せるのかと関心するほどだ。ひしひしと憎悪が伝わってくる。


パセリは手で錠剤を弄ぶ。



 「夏川さん、情報は集めときますんで今日はお引き取りくださいッス」


 「……わかった。また来る。いつ頃にこれば準備できている?」


 「……今週末には」


 「頼んだぞ」


 「あぁ、それと。カラコンぐらいした方がいいッスよ?」


 「……検討する」



それでは~、とにこやかに見送りをした後、影に隠れさせていた天野を呼び出した。不思議そうな顔の天野。言いたいことは大体わかる。何故夏川がああいう状況になっているのかということだろう。パセリは目でそれをねじ伏せ、インスタントコーヒーを飲んだ後ポツリと、



 「引越しするッス。あの悪魔から逃げるべきッス」



どうやら冗談ではないらしくダンボールに荷物をまとめ始めた。


 

 「あ、あのぉ……夏川さんってそんな悪い人じゃないと思うんですけど……」


 「バカ言ってないで早く仕度するッス。……アンタの知ってる夏川ツバキは死んだと思った方がいいッスよ? あの分じゃカウンセリングなんて焼け石に水程度じゃないと思うッスし」


 「は、はぁ……」


 「頼むから危機感を……まぁいいッス……」




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