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殺し屋、始めました。  作者: カピバラ
モノクロ
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シロ 壱




情報屋、青葉パセリ。ピアスが顔面に散りばめられ、見る人にとっては不愉快を通り越して、生理的嫌悪感まで覚えることだろう。そういうレベルまでの『軽薄』。特に意識しているわけもなく、それが彼の性質だった。情報屋としての事務所、普段は探偵事務所と銘打っているが今日の客は、情報屋としての自分に訪れたようだ。


依頼人の顔を見て、内心ほくそ笑む。



 「やぁ、シロさん。全治二週間よぉく耐えたッスね。オレの手配した医者、完璧だったッスよね?」


 「その件についてはどうも。おかげさまで動けるまでにはなったよ」


 「そりゃあよかったッス」



二人の会話を遮らぬように、他の従業員がお茶を持ってくる。どうも、とシロは頭を下げる。パセリは常時ニコニコしながら話しを進めた。



 「そんで、今日呼んだのは他でもないッス」


 「もったいぶるのはバカのすることだ」


 「キビシーッスね。教師とかだとウザイタイプ。そんな怖い顔しないで欲しいッス。話しを戻すッスね。言ってしまえばお仕事の依頼ッスね。とある組織を潰す簡単なお仕事ッス。もちろんクロちゃん達も行くッスよ。お金は払うし、シロさんには割といい話だと思うンスけど……どうッスか?」


 「俺はそっち話から手を引こうと思ってるんだ。残り少ない人生、俺みたいな奴がいていいのかわからねぇけどグダグダ生きていくって決めたんだよ」


 「ふ~ん。いい選択ッスね」


 「だろ? だから済まないがこの話は――」


 「……しかし、最善ではない」



背筋にひんやりとした感触があった。嫌悪感、恐怖感。どれに値するか判断に迷った。あのふざけた口調が一転、冷たく鋭い口調に変わったのだ。ちょうど、夏川のように。いいや、こっちの世界で生きていれば『こう』なってしまうものなのか。



 「……簡単に足を洗えると思ってるンスか。笑わせんな。そうしたくてもできねぇ奴らをオレは五万と知ってるんだよ」



目つきも態度も声色も。心を突き刺す。そう思わせる声。シロはただ警戒し、硬直することしかできなかった。



 「……人生をやり直したいだぁ? 無理ッスよ、ンなもん。アンタには戸籍がない。これがどこまで影響するかわかってるンスか。夏川ツバキの知り合いにあった時にはどうするンスか。頭のいいシロさんならわかりますよね? 自分でわかってますよね? ……逃げてるだけなンスよ、アンタは」


 「……」


 「否定の言葉が見つからない、って感じッスね。ま、別に無理強いするわけもないッスから。最後に決断するのは自分自身ッスから。返事は一週間後までにお願いしますね」



あぁ、とぎこちなく返事をする。視界の端で従業員がオロオロしているのが見えた。営業スマイルをして軽く会釈をし、情報屋を後にする。シロもいなくなり二人だけになって部屋で、従業員は戸惑う。彼女を見て、パセリはため息をついた。



 「だーかーらー。いくら記憶をコピーしてるからってどうでもいい記憶なんて移られてるわけなっしょって言ったじゃないッスか。そもそも夏川自身が覚えてるのかも微妙なンスよ。聞いてるンスか、天野さん」


 「わ、わかってますけどぉ……」


 「はぁ……この野次馬根性娘は……」


 「や、野次馬って……私はただ非日常を愛しているだけで……っ!」


 「ハイハイ、わかってるッス。もう何十回も聞いたンスから……お? 電話みたいッスね。非通知……」



天野を部屋の外に出して、電話に出る。



 『情報屋、でいいんだな……?』


 「ウッス。こちら青葉パセリ。最近のマイブームはショートカットッス」



抑揚のない声だった。何人もの人間を見てきたパセリにはわかる。この世界にある無数の悲劇に触れた者特有の、感情の壊れた喋り方。かつてクロもこんな漢字だったッスね、と感慨にふける。

そして聞き覚えのある声でもあった。むしろ今さっき聞いたばかりの声。パセリは冷や汗をかきながら、冷静に対応した。



 「それで、そちらさんの名前は?」


 『夏川ツバキだ。探して欲しい人がいる。オレの妹だ』


 「オッケーッス。年齢、特徴、その他諸々教えてもらっていいッスか?」



聞くと夏川は一つ一つ、子供に教えるようにいって言った。それを律儀にメモしつつ、パセリは考える。



 (やっべー……これどうしたらいいンスか。正直に言ったら言ったで恨み買いそうッスし……)


 『……このぐらいでいいか?』


 「え、えぇ。充分ッス。報酬は事務所の方にお願いするッス。最近戸籍と口座がない人が多くて……。あぁ、それでなンスけど。もし、妹さんがお亡くなりになられていた場合は……」


 『殺した奴を追加で探せ』



途端、ブツッ!!と乱暴に切られた。地雷ッスなぁ……とのんきに呟き、自分の机の引き出しから2、3粒の黄色の錠剤を出した。彼の最後の切り札。彼は特別、身体能力が強いわけもなく頭も切れるわけでも能力を持っているわけでもない。だからこそ、切り札を持っておく。それは今から起きうる中で、切り札を使わねばいけないほどの、事態になりうると判断したからだ。


彼は自嘲気味に笑い、天野に告げる。



 「オレが死んだら遺産は天野さん宛でいいッスか?」


 「青葉さん……借金まみれじゃないですか……」


 「あ……」



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