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殺し屋、始めました。  作者: カピバラ
モノクロ
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白濁とした怪物





シロとホタルが『正義の味方』に拉致……もとい保護された一方でアパートの一室に一組の男女がいた。両者とも病的なまで細く、髪に白みがかっている。ストレスと薬物による副作用のせいだ。


厄災の女神、鈴科ラン。今では神話上に登場し、厄災を象徴とするパンドラの箱をなぞらえて『パンドラ』とまで呼ばれている。せっかくの白いドレスもところどころが破け、むしろみすぼらしくさえ見えた。自身を取り巻く環境のせいで、髪はストレスで白く脱色し、艶を失っていた。


彼女に後ろから抱きつかれた状態にいる青年。初代、夏川ツバキ。かつてはヒカリ製薬に所属し、戦場を引っ掻き回す……とまではいかなくてもある程度の存在感を放った存在。そしてヒカリ製薬のクローン技術、能力開発薬の被検体でもある。夏川シリーズのオリジナルであり、彼自身もヒカリの影からの投薬のせいで能力を発現させている。クスリの副作用もあり、髪は灰色、瞳の本来黒であるべき部分は、少し白く濁っているだけで遠目からでは白目を向いているようにしか見えない。これでも視力は低下していないというのが驚きだ。


夏川は脱力し、床にあぐらをかいて放心しており、それに鈴科が後ろから抱きついた状態になっていた。



 「どうしたの、夏川くん。元気ないね」


 「……全部、奪われた。逃げられた。殺された。元気出せって言うのが酷ってもんだろ」


 「大丈夫だよ、私がいるもの。かっこいい夏川くんとそれを支える私がいれば他には何もいらない。そうだよね?」


 「……ユリ…………」



互いの会話が噛み合わない。これが実に一時間続いているというのだから驚きだ。



 「私をまた助けてくれたのは夏川くん」


 「ヒカリの残党を殺したついででしかねぇ」


 「このアパートに住めるのも夏川くんのおかげ」


 「金と戸籍されあれば大丈夫だろ。こんな自殺者のいたらしいワケあり物件は」


 「ううん。全部全部ぜーんぶ夏川くんのおかげだよ」


 「……気持ち悪ぃ……」



鈴科を軽くあしらい、長く伸びた灰色の髪をかきあげながら、適当に購入した服に着替えていく。流石に手術衣のままでは気持ちが悪い。鈴科にも着替えを与え、ベッドに身を投じる。



 (あぁ……こんなとこで俺は何をしてるんだ。ユリが助けを待っているというのに)



ユリが夏川シリーズの一人、キングと呼ばれる自身のクローンに殺された、という事実を彼は知らない。知ったら最後。全てをかなぐり捨てて、復讐の鬼神と化すだろう。しかし、今はそんなことは知らない。



 (立ち止まっていられない。……助けに行こう)



テーブルに置いていたヒカリ製薬残党から強奪した拳銃と、日本刀の半分のサイズほどの刃物を手に外界へと足を踏み出す。後ろからはきっちりと鈴科もついてきていた。怪物が怪物を連れて、世界へと解き放たれる。大きな大きな世界の中で。小さな小さな怪物が。




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