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バッドエンド①




端的に言ってしまえば、勝敗は火を見るより明らかだった。予知と錯覚するレベルの行動の誘導。そして鈴科の能力。どれを取っても彼が勝利を勝ち取るのを阻むものばかりだ。彼の体は何度も何度も蹴りを入れられたせいでボロボロの雑巾みたいになっていた。須王は気にもとめず自身の右腕を凝視している。



 「鈴科……のもんだろぉが……『それ』はよぉ!!」


 「能力者との体の一体化。割とうまくいったみたいだな」


 「鈴科をどうしたんだって聞いてんだ!!」


 「一応生きてるよ。そうしないとせっかくの能力が消えてしまうからな。……しかし自分で操作できないとなると不安ではあるな。厳密には私が能力を使っているのではなく、鈴科の能力の範囲に私を入れているだけだからか」



自慢げに解説している間も彼は何度も飛びかかるが、時には動きをよまれ、時には不幸にも足がつったり体のバランスを崩したりし、その隙を突かれる。須王は粘着質な笑顔で嬉しそうに言う。



 「君はもう私を殺すことはできない」


 「ウダウダうるせぇ! 鈴科とユリはどこにいる!」


 「だから鈴科は生きてるって。……ユリちゃんは、君ら夏川に動いてもらうための駒だったがいらなくなったから変態さん達に売ってしまったよ」


 「…………ざけんな」


 「私と鈴科に近づいたものは全てバッドエンドへ。これは確定事項だ」



不幸を宿した右手で彼の首を掴もうとした、その時だった。



 「そういう……っ、ごほぉっ、わけには行かない、つってんだろうが……」



声が聞こえた方を向く。会議室の扉に赤黒い肉塊が寄りかかっていた。いいや、アイツは。



 「東城!」


 「何故貴様がここに……烏川はどうした」


 「あいにくこのザマだぜ……ッ」


 「あの噛ませ犬が……」



歯噛みする須王は右手を東城の方に向ける。しかし、東城は立ち止まることなく進む。



 「鈴科は助けた……そんで全部聞いた、カホッ……夏川、もどき。ユリちゃんは南野のいたホテルだ。急げ」

 

 「東城、貴様ァ……」


 「行けよ……名前は知らねぇがテメェには俺の命を賭けるだけの意味はありそうなんだ。…………ユリちゃんが死んだらみんな悲しむだろ……ホタルも連れて早く行け」



黒髪の彼よりもボロボロの体で東城は優しく笑う。左の眼球は無く体もところどころ破損していた。それなのに。



 「……………………あとは……頼む………………」


 「任せとけ。今度、名前教えろよ?」 


 「…………わかった。……絶対死ぬなよ」



それだけ言って黒髪の彼は出口に向かって走る。玄関は夏川達が交戦中。非常口を目指すことにした。



 「待てッ。行かせてたまるか。これはシナリオ外の行動だぞ!!」


 「なんでもかんでもアンタの思い通りに行くと思うなよ……アザミちゃぁぁああん?」


 「ここままではシナリオの修復は不可能……バグを取り除き、修正する!!」



鈴科の右腕をグッと握り締める。目には見えないが何かが確かに動いた。対して東城は前に直進するだけ。手にはヒカリの開発部門で使用者自身も殺す可能性がある可能性があったため非売品となった爆弾が握られていた。



 「貴様、正気か!?」


 「どうせ死ぬんなら花々しく死にたいんでなッ!!」


 「汚らわしい……ッ」



東城は投げる態勢を取る。しかしここで鈴科の能力が発動した。体が一気に気だるくなる。心臓が鷲掴みされたような痛みが走る。心臓麻痺だった。本来、今、この瞬間で。突発的にこの症状が出るにはどれだけの悪要因が重ならなければいけなかっただろうか。しかし、ここには鈴科の能力がある。悪要因なんてそれ一つだけで充分だ。


もう直ぐ死ぬのだろうか。だが、そんなこと関係ない。



 「お、れのっ!勝ちぃだ………………ッッッ」


 「く、来るなっ! やめろ、やめろぉおお!!」



激昂する須王に東城はもう答えない。答える気力。そもそも生気すらもうなくなった。それでも慣性のまま、前に倒れこみ力の抜けた手から、部屋を一掃どころかこの階層すらも吹き飛ばす爆弾がすっぽ抜けた。それは無様に逃げる須王を逃がさない。



 「うぁ…………し、しにたく……っっっ!?」



キュガ――ッ!!! と、熱と空気が膨張した。



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