夏川ツバキver?
違う。違う。絶対に違う。
「違うッ! 『夏川ツバキ』はあんな髪の色や目の色はしていない!!」
いいや、俺は知っている。能力を発現させるクスリには幾つかの副作用があったはずだ。オリジナルということはクスリが開発されて初期の頃に投薬されている。いわば試作品の段階なのだ。一見ありえない副作用だって出るのかもしれない。
「副作用だって? アイツがオリジナルだとしたら副作用が出るのはおかしいだろ。だってクローンにしかクスリは投与されていないはず……っ」
何を言っている。あのレポートにはこう書いてあったあずだ。適合者を見つけたと。俺のクローンを作る前に水道水か何かから投薬した可能性もあるじゃないか。それにあのアパートの倒壊から風邪のような症状も妙になくなった。
「『夏川ツバキ』は俺のはずなんだ……」
右腕の破損、クスリの副作用の大きさ、風邪のような症状の消失、そしてアパート倒壊時の瓦礫を防ぐことのできる能力。総合的に見れば……
「じゃ、じゃあ俺はいったい……誰なんだ……」
何を狼狽えている。もう、答えは出てるだろう?
思い出せ。自分と同じ顔の人間が次々に廃棄されていく様を。情報共有という能力を無理やり利用されて自分に夏川ツバキの記憶を植えつけられたことを。
「ははっ……そっか……そういうことか……」
俺は。俺は。俺は。
いいや。
俺が。
「俺が……クローンだったのか…………」




