須王アザミ②
「アザミさん」
彼女の名を呼んだのは覇気が一切感じられないぼさぼさ頭の少年だ。小学生相応の格好をしているがその手に握られているライフルが極めて浮いている。
そして呼ばれたのは灰色のスーツに身を纏う20代後半の女性。豊かすぎる胸がキツキツになっているが須王アザミは相変わらず豪奢な椅子に腰掛けている。
しかし、今回ばかりは場所が違う。いつものモノクロの部屋ではなく、大きなモニターの配置された会議室だ。
「ぼくは仕事いかなくていいの?」
「どうにでもなるさ。夏川、東城、ホタルがいれば大丈夫。烏川は知らんがね」
「うかわは早めにころしてたほうがアザミさんにはこうつごうだよ」
「心配ご苦労。もし何かあってもきっと君が守ってくれるんだ。大丈夫」
「……うん」
顔を赤らめて黒崎少年は頷く。
彼もまた、かつて須王に拾われた身だ。突然開花してしまった能力を抑えられず両親にすら気味悪がれ捨てられた彼に優しく手を差し伸ばした。彼にとって須王という存在は夏川にとっての妹に匹敵する存在だ。
彼女は悲しませない。
うるさいハエは全て自分が撃ち落とす。
大きなモニターに映し出されているのは『クロネコ』が占拠したデパートの監視カメラの映像だ。警察らは入手してないがヒカリのクラッキング部の手に掛かれば造作もないことだ。
「……」
「……アザミさん?」
「いいや、なんでもない」
最近、こういう煮え切らない答えが多い。ここで深く聞くほど勇気もないのが現状である。




