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夏川ツバキ⑩
時は経ち、時計は7時を指していた。
夏川兄妹はいつも通り夕食を食べている。
「それでね。今日、たかはしくんがさー……」
ユリが学校での出来事を話してくれる。それだけで、夏川は満足だった。いつもの日常。こんな世界に身を置いているからこそ欲する温かい日常。
それを脅かす存在がいるかもしれない。
烏川カブト。赤髪のどこか狂った青年。
あのユリの写真を送りつけたのがアイツだというのならば。
「……おにいちゃん?」
「……ん? あぁ、ゴメン」
「えへへ。眠いんでしょー? きょうははやくねよっか」
「わかった、いいよ。食器片付けるから先に布団行ってて」
カチャカチャと食器をまとめて流し台へと持っていく。蛇口を捻り、出てきた水と洗剤で皿についた汚れを落としていく。
「……」
自分を殺そうとしているのではなく、ユリを狙うというのならば。
「……」
もう、釈明の余地はない。




