争奪戦④
廊下はバカでかく部屋も無数にある。割ったらヤバそうな壺や花瓶もある。貧乏人生を歩んできた夏川にはいまいちわからない趣味だった。
(地下への入口を探すつってもなぁ……)
キョロキョロと辺りを見回していると、前から女が来た。
「先ほどは申し訳ありませんでした。南野はどうやら手当たり次第に人員を確保しているらしく情報がきちんと確認されていなかったようです」
態度をガラの悪い傭兵に切り替える。
「……あぁ、気をつけろよ」
声からして、どうやらインターホンの女のようだ。恐らく、南野の秘書などといったポジションなのだろう。
「ところで、お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
「……安藤だ」
平然と嘘をつく。
秘書の女はタブレットを起動し、何かを確認する。
しばしの間の後、女はにこやかな笑みを浮かべて舌打ちをした。
「……安藤さんですか。そのような方は雇ってはいないのですが」
「……」
沈黙があった。
それを女が引き裂く。
躊躇なく女の拳が夏川の肺を打つ。狼狽える夏川にさらに追い討ちをかける姿はマニュアル通りといった体の動きなれた所作だった。
マニュアル通りの横なぎの蹴りが夏川の腹部にヒットする。無様に転がる夏川を女は満足げに見下す。
「運動神経は宜しくはないようですが……本気で行きますが文句は言わないでくださいね」
「……オイオイ。忘れたのかよ……」
「はい?」
「くっくっく……俺の能力はなんだったかなぁ!!」
「しま――ッ!?」
驚き、腕でガードの態勢を作り目をつぶる。無駄だと分かっていても体がそう反応してしまう。先ほどの狙撃手が殺された実例を見ていたからだ。
しかしそれはただのハッタリ。
その女の首筋にスタンガンを押し付けた。気を失い倒れこむ女の口にガムテープを貼り、テープで拘束しておく。もしも、助けを呼ばれたら面倒だ。
「さてと」
夏川はケータイを取り出し、アザミと連絡を取る。きっちり3コール目、回線がつながった。
『調子はどうだ』
「予定とは多少のずれがありますがひとまず南野邸へ侵入しました」
『わかった。既に袋野班も乗り込んでいる。東城には待機させるように言ってろよ。何をするかわからん』
「わかってます。……それよりも地下への行き方がわからないんですが
『……そうか、見つからないか』
『……なら視点を変えてみよう』
「?」
『時に君は、アリの巣に水を入れたことはあるか?』




