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鈴科ラン①




 「それにしても不憫なものだな」




モノクロに統一された部屋。ヒカリ製薬幹部、須王は例のごとく豪奢な椅子に座っている。


右手でワイングラスをクルクルと弄びながら、ニヤニヤと笑みをこぼす。



 「順当に成長することができれば世界レベルで天才と呼ばれたであろう頭脳がこんな世界に堕ちてくるとはな」


 「そんなもんだよ、世の中」



その隣で狙撃用の銃の手入れをしているのは東城などから『天才』と呼ばれていた人物。舌っ足らずの声と同様、容姿、年齢ともに小学生程度だ。




黒崎ケイトウ。コードネームは『カゲナシ』




なんというか、全体的に覇気というものが感じられない。目は死んだ魚ように薄汚れ、黒の髪はボサボサになっている。



 「ボクだって来たくてこんなとこきたわけじゃないんだ。……だからといって今のじょうきょうに不満があるわけじゃないけどさ」



黒崎は一度も目を銃からそらさずに言葉を紡ぐ。そしてアザミもそれに対しては特に何も言わなかった。



 「それで?例のデータはどうだったんだ?またはずれとか言うなよ」


 「ん?ビンゴだったよ」



そう言って黒崎はどこからともなくクリップで何枚も閉じられた書類を取り出した。そこには白い髪の少女の写真と、その少女の経歴が記されていた。




――6歳の頃、能力に目覚めその頭角を現し始めると同時に、彼女を獲得するために抗争が始まる。その当時から誘拐、拉致などによって転々と移動している。


なお、親族からは捜索願等は出されておらず戸籍も抹消されている。


名は鈴科ラン。



 「ふふ。この娘、一度も幸せというものを感じたことがないんじゃないか?これはまた数奇な運命だな」



黒崎は銃の手入れをする手を止めて、アザミの目を見る。



 「……アンタほどじゃないと思うよ」


 「……」



黒崎の言葉に、アザミは答えなかった。



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