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夏川ツバキ⑨
ユリと手を繋いでキャンピングカーに戻る途中、アザミのに電話をかけていた。
「そちらさんの会社の寮、使わせてもらっていいんだよな?」
『もちろん。家賃はあるがあの設備なら格安だと思うぞ』
「どうも」
それより、とアザミが付け加える。
『今さっきの。それが君のケジメか?』
「ケジメつーか……自棄ですかね。ていうか見てたんですか」
『まぁな。私は部下を大事にすることで有名なんだぞ?』
「そりゃすごいですね」
『……君はこれでよかったのか?』
「えぇ……そうですね」
「もう俺は堕ちるだけですから」
ピッ、と通話をきる。不安そうなユリの手を血で汚れていない左手で強く握り締めた。