長浜美紀5
彼女が来なくなって数日が経とうとしていた。仕事が仕事なだけに休みを取る人は少なくない職業とはいえ、無断欠席は許されることでは無い。しかし、彼女に電話すら繋がらないため、俺は内心かなり心配していた。
店長もここ何日か出たっきりになっていた。俺は一応連絡をと、店長に電話をかけた。
「もしもし八木さん、ここのところミキちゃんが休んでるんですけど、なんか連絡入ってないっすかね?」
「入ってねぇな、なんかようでもあんのか??」
「いや、用ってほどのことじゃないんですけど……」
「なんだよ、なら電話なんかしてくんじゃねぇよ!」
「いや、あのミキちゃんのピアスを預かってまして」
「あの、いつもつけてたやつか?」
「はい」
「そうか、ならなんかあったら連絡するわ。じゃ」
そういって、電話は切れた。
その日も、ミキちゃんが来ることはなかった。
その日、俺はいろいろ考えながら家路を急いでいると、突然頭に痛みを感じ気を失った。
目が覚めると、手足を椅子にしばりつけられ、何処かの事務所のような場所にいた。目を開けた時気が滅入りそうになった、何せ目の前にいたのはバリバリのヤクザ数名だったからだ。
「おい、起きたかよ?なんでお前がここにいるかわかってんのか」
俺が首降ると、そのヤクザはためらいなく俺の腹に拳をぶち込んで来た。
「ゔっ、なにするんですか?」
「すっと、ぼけてんじゃねぇぞクソガキ!!おめぇ、持ってんだろ?アレをよ」
「アレってなんですか?知りませんよ!」
「しらばっくれてんじゃねぇぞ!」
そう言うとまた、数発殴られた。
「ここまで、だんまりならしゃあねぇ。ホラ、言わねぇと打っちゃうぞ?」
さっきとは違うヤクザが拳銃を出してそう言った。おれは慌てて
「と……取り敢えず話し合いましょ……あなたたちの欲しいアレとかいうものなんか僕持って無いですからね。あの…だからそれ下ろしてもらえませんかね?」
「あっ?てめぇがうちの組から持ち出したもんだよ!!」
「知りませんて!」
「しゃあねぇ、なら……」
そのヤクザは拳銃の引き金に手をかけた。
「その辺にしとけや」
突然野太い声がそれを遮り、少し大柄な男が入ってきた。そして、その顔は俺も知っている顔だった。
「く、組長!!」
この辺のヤクザの長、鷹山組組長鷹山剣山だった。鷹山組はつい20年前まで日本一のヤクザだったらしい。しかし、前組長が死んだことにより海外マフィアや関西勢の台頭によってかなり規模が小さくなったらしい。
「お前らその辺にしとけや、そいつしらねぇっていってんだろ?」
「でも……」
「一旦俺に預けろ、おめぇらこっから出てけ」
「……はい」
そう言うと部屋にいたヤクザ数人は部屋から出て行った。
「なぁボウズ、俺はちと探し物をしててなぁ。ピアスなんだ、少し大きめの赤い奴」
俺は驚いた。赤いピアス、それは俺が預かっている物だった。
「その顔、知ってんだな?持ってんなら出してくんねぇかな?てめぇが持ってた事は秘密にしてやっからよ」
その言葉には、はっきりと出さなきゃ殺すという事を意味していることは、俺にもわかった。俺は大人しくポケットの中から、それを取り出した。
「持ってんじゃねぇか、なら早く出せよ。まぁいい、ならとっとと帰んな」
俺は縄を解かれた途端、走ってそこから出て行った。