長浜美紀2
「じゃあ、そこにかけてください。」
そういい俺は、彼女を事務所の椅子に座らせた。
「えっと……取り敢えず履歴書と………自己紹介?でもして」
俺は、立場的に面接をする機会が少なくない訳だがどうもなれない。面接と言うのはどうも、俺にはあわないらしい。
「えっと、名前は長浜美紀です。25歳です。友達の紹介でここに来ました。」
彼女はニット帽を取り、そう言った。ニット帽を取った彼女の顔は、可愛い系と言うより美人系の顔立ちで、髪は肩甲骨ぐらいまで伸びた綺麗な黒髪だった。
俺はいい子が入って来たと内心ほくそ笑みながら、履歴書に目を通した。すると、驚いた事に彼女の最終学歴はK大卒となっていた。
最近、高学歴でも風俗嬢になる女が増えている(もっとも、高級ソープなどに限られるようだが)と言うのは聞いてはいたが、うちに来るのは中卒、高校中退、高卒、いいとこ三流大学中退といった所で一流大卒なんて、見たことがなかった。
「えっと、K大卒って書いてありますけど、それならこんなとこで働かなくてもいいですよね。」
本来、経緯は聞かないのが通例であったが、つい聞いてしまった。
「あの……お金が必要で……効率よく稼げるとこ探してて……それで……友達の紹介で……」
そう言えば、最初にそんな事を言っていた事を思い出した。友達の紹介とは、結局の所闇金の紹介(なかば強制)と言うのが暗黙の了解であった。
俺は、そう言う事だと納得し
「じゃあ、スリーサイズをこの書類のここに書いといて。後で結果の連絡するから。」
そういい、書類を書かせ彼女を帰した。俺は、その後電話を取り店長に電話をした。
面接は俺がしたとはいえ、採用の最終決定をするのは店長と言う事になっている。しかし、電話をして「使える子ですよ」と言えば即採用許可が出るのだ。
時計は14時近くを刺していたが、電話に出られない時は留守電にしておく人なので、メッセージでも残そうとコールを聞いていた。
ガチャ………
「おう、どうだ使えそうなやつだったか?」
てっきり、留守電だと思っていたが移動中なのか、思いのほか早く電話に出た。
「はい、使えそうないい子でしよ。顔は美人系ですし、身長も丁度いいくらいで、黒髪ですし、極めつけはK大卒ですよ!」
「おぉ、そうかなら雇っといてくれ。じゃあな」
そう言って電話はきれた。
俺は、店長のリアクションが思いのほかなく驚いていた。いつもなら「可愛い子ですよ」と言っただけで「雇え!雇え!」と、小躍りするような声でうるさいく言うのだがそんな感じではなかった。
俺は、用があるとかで連日出ているので、疲れているのだろうと思い、考えるのをやめた。
そして彼女に採用決定の電話をした。