雨
雨の音が聴こえる。今日も何も起こらない。特に変わったことは、何も。
彼女は高校二年生で、それなりの進学校に通っていた。いわゆる中二病というやつなのだろう、常に自分が主人公の空想に耽っていた。部活には入っておらず、かといって勉強しているわけでもなかったが、それでも成績は悪くなかった。
彼女は美しかった。そして彼女はそれを知っていた。だから特に自分の外見を磨くこともしていなかった。短いショートヘアに、細いがしっかりとした身体。日本人にしては淡い鳶色の瞳。与えられた制服を本当にそのまま着ただけだが、それでも確かに彼女は魅力的だった。
運動は苦手ではなく、寧ろ他の科目よりも外での体育を好んだが、肌は病的なまでに真っ白だった。よくハーフやらクオーターやらと間違えられるが、決してそうではない。彼女はごく普通の日本の一般家庭で育ったし、彼女が望んでいるようなそれ以外では全くなかった。
空想に浸る彼女を、人々は近寄り難くさえ感じていた。彼らには彼女の淡い瞳はまるで憂いを湛えているかのように写り、その白い肌がその印象を後押ししていた。そしてその人々のイメージのお陰で、彼女は孤立してはいたが、いじめにあうことなどはなかった。
趣味といえば本を読むことと音楽を聴くこと。そしてそれらのどちらとも、古いものを好んだ。
彼女の名前は安藤鈴。
雨が、静かに降っていた。
主人公は美形です。
そして頭の中は残念です。