第1話 ~始まり~
(プロローグ)
橋谷 憐…四月に疾風高校の一年になった。
彼女はいない…家族構成は一年前両親が事故で死んで二人の姉と暮らしている。
しかしこの二人の姉が凄く訳ありなのだ…
一番上の姉である美咲は大学一年生で度がつくほどの変態である。弟の憐や梨沙
に数えきれないほどのセクハラをしてくる…次女の梨沙は高校三年でとても天然
とうか純粋すぎるというのか…とても優しいのだがお人良しの部分が大半だ。今
になってみるとよく両親は俺たちをここまで育てられたなとつくづく思うのであ
る。
(普通の日常)
入学してから1ヶ月が立った。
友達もできた。
部活には入っておらず毎日だらだら過ごしているのだ…しかし、すぐ非日常の世
界に飛び込むとは予想すらしていなかった…
明日からゴールデンウィークというのにも関わらずなんの予定も入っていない。
「はぁ…マジで退屈だ…何しよう…」
と考えながらぼーっとしていると、「れん~暇だから遊んでよ!遊んだらきっと
きもちいよ?」と変態発言をしながら美咲が体中をなで回してきた。
「美咲姉やめて…つか何度もいうけど俺にはそんな変態趣味ないから…」
そう言いながら美咲の手をどけようとする。そうしたら「れん~冷たいぃ…もっ
とお姉ちゃんに優しくしてよぉ…」と言うので
「…はぁ……」
とわざと大きなため息をついたら
「れん大丈夫体の調子悪いの…」
と本気で心配してきたので
「大丈夫!健康そのもの!だから安心してな!!」
と元気にこたえておいた。
と言っても明日からとても暇すぎるのではっきし言って憂鬱だった。
そんな雰囲気を読み取ったのか美咲が
「暇なら明日私と出かける?」
と言ってきたので了承しておいた。後で、この事をずっと後悔するはめになると
は知るわけもなかったが…
暇すぎるのでテレビでニュースを見ていると龍衛高校の生徒が連続殺人犯を捕ま
えたというのがやっていた。龍衛高校とは特異能力を持っている奴のみがいける
学校である。特殊自衛隊と呼ばれ、10レベルの犯罪を扱っている。もちろん自分
には一生縁のない話だと俺は思ってチャンネルを変えた。
梨沙は明日から友達と旅行に行くらしい。
旅行に行くのは構わないのだが一つだけ心配な事がある。それは武装グループが
様々な所で犯罪を犯していることだ。
梨沙姉が犯罪に巻き込まれないことをただ願うだけである。
そんな事を考えていると梨沙が風呂が空いたことを伝えにきた。
「わかった。ありがとう。」
と言って風呂へ向かった。
風呂から出たら1日の疲れに耐えきれなくなったのかベッドに倒れ込み眠りこん
だ。
次の日誰かが体を揺するのを感じて目を覚ました。
「だれ………」
そう聞くと
「美咲だよん早くしないと梨沙出掛けちゃうよ」
と答えが帰ってきた。
梨沙が出掛けちゃうという部分を聞いて一気に目が覚めた。あわててベッドから
飛び降りたら美咲に
「そんなに梨沙が好きなの?」
とクスクス笑われながら言われた。
恥ずかしさで真っ赤になった顔をそらしながら
「ち…違うよ…別に…その…か…家族だからだよ…」
と言葉を濁しておいた。
そういう事には鋭い姉はにやにやしながら
「そっか…じゃあそういう事にしといてあげる!」
と言ってきた。絶対面白がっているんだろうな…と思いながらあえて何も言わな
かった。そして何事も無かったように玄関まで向かった。
玄関には準備をすませた梨沙がいた。よほどこれからの旅行が楽しみなのかとて
もにやけている。
「梨沙姉行ってらっしゃい!!気をつけてな。」
と言ったのだがとても浮かれていて、ちゃんと伝えられたか不安だった。でもこ
んなに楽しそうにしている梨沙は久しぶりに見たのでまぁいっかって思うように
した。
そうした事を考えているうちに梨沙は出掛けていった。
梨沙も行ったしもう一眠りしようかなと思って部屋に向かったら美咲に
「れん~これからどこいく好きな場所連れていってあげる!!」
と言われ、美咲と遊びに行く約束をしたのを思い出した。
「そうだな……じゃあ水族館行こうよ!!」
と言った。
正直美咲と二人で水族館に行くのは少し恥ずかしかったが、まぁ…たまにはいい
かなぁ…という風に思ってチョイスしたのだ。
「水族館かぁ…いいね!決定♪」
と嬉しそうに言った。
部屋に戻って支度を済ませ美咲姉と一緒に家を出た。
「れん凄いよ!!魚が沢山いるよ~♪」
と、なぜか手を繋ぎながら美咲姉がはしゃいでいる。
微笑ましく思いながら、そうだね!と言いかけたとたん急に電気が落ちた…そし
て武装グループが銃を向けながら近づいてきた。最近活動している奴らみたいだ
った。
銃を向けられ初めて自分たちが人質になったことに気が付いた。
銃で威嚇されながら、ドラマでよく見るように中央にみんな集められていた。
「れん…大丈夫かな………」
「大丈夫…きっとなんとかなるさ!」
そう言ってからどれくらい時間が経ったのだろうか…
本当に諦めかけた瞬間…目の前に光が差した…そこには、何人かの高校生がいた
のだ。
当然武装グループは「誰だてめぇ達は!ガキが首突っ込むんじゃあねぇよ!」
と銃口をそちらに合わせながら叫んだ。
しかし次に起こったことをそのときは理解することが出来なかった。
その高校生らしきグループの一人が
「俺達はティーカー…」
と言うやいなやみんな走り出し一瞬にして武装グループに攻撃をしかける。
不思議なことに、いくら銃を打っても避けてしまうのだ。
しかもその時珍しげな銃や剣を使っていた。そして気がついたら武装グループの
ほとんどが倒されていた。
武装グループの残党の一人が美咲姉を人質にとった。助けに行こうとしたら、美
咲姉が
「憐来ちゃ駄目!!殺されちゃう!」
と叫んだ。しかし俺は体が既に動いていた。何故か相手の動きがとてもスローモ
ーションになっている。
「美咲姉を放せ!」そう叫んで相手を簡単に殴り飛ばした。しかし、溢れでる力
に戸惑っていた。
美咲姉も心配そうに
「大丈夫…??」
と言ってきた。
ティーカーとやらのメンバーは俺を見ると一瞬驚き、険しい表情となる。
そして近づいてきて、
「君の名前は…?」
と聞いてきた。
「橋谷憐…あなたは?」
「僕は矢口一輝よろしく!ところで君はよくこういう現象は起こるかい?」
「いや…今日が初めてです…」
「そっか…」
などと話していたら、
「あの~憐は大丈夫なんでしょうか?」
と申し訳なさそうに美咲姉が質問した。
「失礼ですが貴女は?」
「すみません…私は憐の姉の美咲といいます。」
と答えた。
「あぁ、お姉さんでしたか!大丈夫ですよ。弟さんは単に我々と同じ特異体質な
だけですよ。」
一輝がさらっと爆弾発言をした。
「特異体質って…この俺がか!?」
と驚き、叫ぶように質問した。
「まぁまぁ落ち着いて…君は選ばれた者なんだよ。普通の人が持っている潜在能
力の100倍の力と何かとてつもない才能があるのを特異体質って言うんだ。もちろ
んコントロールが必要だから龍衛高校に入ってもらうよ!!」
「え…あの龍衛高校に!?大丈夫…なのか…??」
突然で戸惑っているっていうのもあるが一番驚いたのは龍衛高校に強制転校させ
られる事だった。
なぜなら龍衛高校に自分が行くとは夢にも思っていなかったからだ。
「大丈夫…君は特異中特異…マスタークラスだから!」
…まったく説明になっていないような…
「あの…弟にはもぅしばらく会えないんですか…???」
と美咲姉が聞いた。当然である。龍衛高校は完璧寮制なのだ。すると一輝は顔を
曇らせ…
「残念ですが……これから半年は会えないと思ってください。その代わり身の安
全の保証は絶対しましょう。」
と言った。
もちろん納得は出来ないだろうが俺の意思は決まってた。
「美咲姉…俺行くよ…俺にしか出来ないことあるだろうし…もう決めた。梨沙姉
には悪いけどよろしく言っといて!」
美咲姉はもぅ説得が聞かない事を察したのか諦めたようだった。しかし一輝の方
を振り向いて
「1日、1日ください。準備もあるし…」
と頼みこんだ。
一輝は何か感じる物があったのか
「わかりました。明日の朝9時に迎えに行きます。場所はここでお願いします。で
はそろそろ…失礼します。」
と言って去っていった。
美咲姉が
「帰ろっか!その前にプリ撮ろうよ♪」
と言って手をつないできた。
もうしばらく会えないから何か思い出が欲しかったのかもしれないと思って
「いいよ♪」
と言ってゲーセンへ向かった。
ゲーセン行ってプリクラを撮った後、ショッピングモールも行ってへとへとに疲
れたとこで帰宅した。
部屋に戻り疲労のせいかベッドに倒れこんだ。
そしたら美咲姉が部屋に入ってきた。
「れん…起きてる?良かったら小さい時のように一緒に寝ない…?」
と聞かれたのでいつもだったら断っているが今日は
「いいよ。一緒に寝よう。」
と言った。そうしたらベッドにもぐり込んできた。
「れん…気をつけてね…これから大変なことが沢山あると思う…でも辛くなった
り嫌になったらいつでも帰ってきていいからね!」
泣きながら言葉を紡ぎ出す美咲姉に心が痛んだ。本当にこの選択が正しかったの
かはっきり言ってわからなくなってきた。それを察したのか、
「れん!大丈夫…れんの選択は間違ってないよ♪」
と言ってくれた。
悲しみを振り切ったように
「もぅ遅いから寝よう!!お休み♪」
と言って二人とも眠りについた。
アラームの音で目を覚ましリビングに向かった。
リビングに入ると美咲姉が朝食を作ってくれていた。
「おはよう!れん…よく眠れた??」
という普段通りの会話をしているのだが、この後非日常の世界に飛び込むのであ
る。平和という文字の無い世界へ…
9時になった…約束通り黒い車が到着した。
車からは執事らしき男性と一輝がいた。
「では…何かありましたら連絡を差し上げますのでよろしくお願いいたします。
」
と言いながら一輝が恭しく頭を下げた。
美咲姉も、
「れんを…弟をよろしくお願いいたします。」
と言って頭を下げ俺に
「これ…プレゼント…良かったらつけて」
と言って十字架のネックレスをくれた。
「ありがとう…お姉ちゃん…」
そう言ってネックレスをつけ、
「体に気をつけてなお姉ちゃん…」
「うん…れんもね…」
などと会話したあと車に乗り込み、静かにその場所を去って龍衛高校へと向かっ
た。