第10章 黄金の光に満ちる恋の朝
その朝の城館は、柔らかな朝霧が徐々に晴れ渡り、庭園の薔薇を金色の陽光で優しく照らし出していた。
私は自室の窓辺に立ち、昨夜と今朝の公爵の温もりを、静かに胸の奥底で反芻していた。
十九歳の私の体は、まだ甘美なる余韻に包まれたまま、微かな熱を肌に残し、心の奥では愛の炎が静かに、しかし確実に燃え続けていた。
ドミトリー・イヴァノヴィチ・ヴォロノフ公爵が去った後の部屋は、まるで彼の存在を惜しむように、銀の香水瓶と深紅の薔薇が静かに佇んでいた。
侍女たちが控えめに部屋に入り、朝の支度を整え始めた。
彼女たちの視線には、控えめな敬意と喜びが混じり、私の新たな運命を祝福するかのようだった。
私は淡い金色のドレスに着替え、鏡の前に立って自分の姿を静かに見つめた。
頰はわずかに上気し、瞳にはこれまでにない輝きが宿っていた。
心の中で、侯爵の影は完全に薄れ、公爵の情熱だけが、私の人生を黄金に染め上げていた。
サロンへと向かう廊下を歩む私の足音は、大理石の床に優しく響き、壁のタペストリーが祖先たちの静かな眼差しを送っていた。
父と母がすでにサロンで朝食を待っていた。
父のパーヴェル・アレクサンドロヴィチ・ロマノヴァ伯爵の表情には、安堵の色が濃く浮かんでいた。
母のソフィア・ミハイロヴナは、手にしたレースのハンカチを優しく握りしめ、私の姿を見るや否や、目を潤ませた。
「エレナ。」
父の声が、低く穏やかに響いた。
「公爵殿からの支援の書簡が、今朝早く届いた。」
「ヴォロノフ公爵家は、即座に我が家の財政を全面的に肩代わりすると約束してくれた。」
私は静かに椅子に腰を下ろし、家族の顔を順に見つめた。
「父上、母上。」
私は優しく、しかしはっきりと言った。
「ドミトリーのおかげで、私たちの家はもう二度と不安に苛まれることはありません。」
「そして、私は彼の恋人として、来月には結婚の儀式を迎えます。」
母はハンカチを目元に当て、静かに涙を拭った。
「あなたが幸せそうで、本当に良かったわ。」
母は震える声で続けた。
「ボリソフ侯爵のあの貪欲な視線から、あなたが解放されたことを、心から喜んでいます。」
父は頷き、テーブルの上に置かれた書簡を私に差し出した。
「公爵殿の影響力は、想像以上だ。」
彼は静かに言った。
「侯爵の領地は、国王陛下の命令で完全に監視下に置かれ、宮廷への出入りが永久に禁じられたそうだ。」
「前妻たちの疑惑に関する裁判も、正式に始まっている。」
私はその書簡に目を通し、心の奥底で深い満足を覚えた。
ざまあみろ、という思いが、静かに、しかし力強く広がっていった。
あの四十歳の男が、舞踏会の夜に公然と挫かれ、遠くの領地で孤独と怒りに苛まれ、今やすべての権力を失い、過去の罪が次々と明るみに出て、貴族社会から完全に切り捨てられる姿を想像するだけで、胸の棘が完全に消え去るようだった。
朝食の席で、家族の会話は穏やかに続いた。
父は公爵の支援内容を詳細に語り、母は私の結婚の準備について、控えめに喜びを述べた。
私はグラスに注がれた果実水を唇に運びながら、昨夜の公爵の抱擁を、静かに思い浮かべていた。
その甘美なる記憶は、私の十九歳の心を、優しく、しかし激しく満たしていた。
朝食が終わると、私は庭園へと一人で出かけた。
朝露に濡れた小道を歩きながら、深紅の薔薇の香りを深く吸い込んだ。
陽光が木々の葉を金色に染め、噴水の水音が静かに響いていた。
公爵が夕方に戻るまでの時間は、私にとって、愛を静かに育む貴重なひと時だった。
しかし、心の片隅では、この恋がもたらす波紋が、まだ微かに残っていた。
宮廷の新たな噂、そして侯爵の最後の足掻きの残滓。
それでも、今この瞬間、私は公爵の愛に完全に身を委ねていた。
庭園の中央にある白い東屋で、私はベンチに腰を下ろした。
風が薔薇の花弁を優しく揺らし、朝の光が私のドレスを金色に輝かせていた。
心の中で、公爵の言葉が繰り返し響いた。
「君には、あんな男より俺の方がふさわしい。」
「俺の女になれ、エレナ。」
その誓いは、婚約破棄の夜から、ますます深く私の胸に刻まれていた。
執事が庭園の小道を静かに歩み寄り、控えめに声を掛けた。
「伯爵令嬢殿。」
「ヴォロノフ公爵からの急使が、届いております。」
私は立ち上がり、心の鼓動がわずかに速まるのを感じた。
公爵からの手紙は、銀の封蝋で固く封じられていた。
中には、彼の力強い筆致で書かれた言葉が並んでいた。
「エレナ、領地の視察は順調だ。」
「夕方には必ず君の元に戻る。」
「侯爵の件は、完全に決着がついた。」
「彼の私兵の残党も、すべて捕らえられ、裁判の証人となる。」
「今頃、ボリソフは領地の館で、すべての希望を失い、孤独に沈んでいるはずだ。」
私は手紙を胸に当て、静かに微笑んだ。
心の奥底で、ざまあみろ、という思いが、再び甘く広がっていった。
あの男が、私の純粋さを踏みにじろうとした報い。
今、彼は権力の頂点から完全に滑り落ち、過去の罪に苛まれ、宮廷からも領地からも切り捨てられた存在となっていた。
執事が去った後、私は東屋に残り、手紙を何度も読み返した。
公爵の愛は、私の人生を完全に変え、黄金の光で満たしてくれていた。
庭園の鳥のさえずりが、優しく響き、朝の陽光が私の未来を照らしていた。
この朝は、私の恋がさらに深まる予感に満ちていた。
城館の日常は、静かに動き始め、私たちの運命を優しく、しかし力強く見守っていた。




