表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/15

第10章 黄金の光に満ちる恋の朝

その朝の城館は、柔らかな朝霧が徐々に晴れ渡り、庭園の薔薇を金色の陽光で優しく照らし出していた。

私は自室の窓辺に立ち、昨夜と今朝の公爵の温もりを、静かに胸の奥底で反芻していた。

十九歳の私の体は、まだ甘美なる余韻に包まれたまま、微かな熱を肌に残し、心の奥では愛の炎が静かに、しかし確実に燃え続けていた。

ドミトリー・イヴァノヴィチ・ヴォロノフ公爵が去った後の部屋は、まるで彼の存在を惜しむように、銀の香水瓶と深紅の薔薇が静かに佇んでいた。

侍女たちが控えめに部屋に入り、朝の支度を整え始めた。

彼女たちの視線には、控えめな敬意と喜びが混じり、私の新たな運命を祝福するかのようだった。

私は淡い金色のドレスに着替え、鏡の前に立って自分の姿を静かに見つめた。

頰はわずかに上気し、瞳にはこれまでにない輝きが宿っていた。

心の中で、侯爵の影は完全に薄れ、公爵の情熱だけが、私の人生を黄金に染め上げていた。

サロンへと向かう廊下を歩む私の足音は、大理石の床に優しく響き、壁のタペストリーが祖先たちの静かな眼差しを送っていた。

父と母がすでにサロンで朝食を待っていた。

父のパーヴェル・アレクサンドロヴィチ・ロマノヴァ伯爵の表情には、安堵の色が濃く浮かんでいた。

母のソフィア・ミハイロヴナは、手にしたレースのハンカチを優しく握りしめ、私の姿を見るや否や、目を潤ませた。

「エレナ。」

父の声が、低く穏やかに響いた。

「公爵殿からの支援の書簡が、今朝早く届いた。」

「ヴォロノフ公爵家は、即座に我が家の財政を全面的に肩代わりすると約束してくれた。」

私は静かに椅子に腰を下ろし、家族の顔を順に見つめた。

「父上、母上。」

私は優しく、しかしはっきりと言った。

「ドミトリーのおかげで、私たちの家はもう二度と不安に苛まれることはありません。」

「そして、私は彼の恋人として、来月には結婚の儀式を迎えます。」

母はハンカチを目元に当て、静かに涙を拭った。

「あなたが幸せそうで、本当に良かったわ。」

母は震える声で続けた。

「ボリソフ侯爵のあの貪欲な視線から、あなたが解放されたことを、心から喜んでいます。」

父は頷き、テーブルの上に置かれた書簡を私に差し出した。

「公爵殿の影響力は、想像以上だ。」

彼は静かに言った。

「侯爵の領地は、国王陛下の命令で完全に監視下に置かれ、宮廷への出入りが永久に禁じられたそうだ。」

「前妻たちの疑惑に関する裁判も、正式に始まっている。」

私はその書簡に目を通し、心の奥底で深い満足を覚えた。

ざまあみろ、という思いが、静かに、しかし力強く広がっていった。

あの四十歳の男が、舞踏会の夜に公然と挫かれ、遠くの領地で孤独と怒りに苛まれ、今やすべての権力を失い、過去の罪が次々と明るみに出て、貴族社会から完全に切り捨てられる姿を想像するだけで、胸の棘が完全に消え去るようだった。

朝食の席で、家族の会話は穏やかに続いた。

父は公爵の支援内容を詳細に語り、母は私の結婚の準備について、控えめに喜びを述べた。

私はグラスに注がれた果実水を唇に運びながら、昨夜の公爵の抱擁を、静かに思い浮かべていた。

その甘美なる記憶は、私の十九歳の心を、優しく、しかし激しく満たしていた。

朝食が終わると、私は庭園へと一人で出かけた。

朝露に濡れた小道を歩きながら、深紅の薔薇の香りを深く吸い込んだ。

陽光が木々の葉を金色に染め、噴水の水音が静かに響いていた。

公爵が夕方に戻るまでの時間は、私にとって、愛を静かに育む貴重なひと時だった。

しかし、心の片隅では、この恋がもたらす波紋が、まだ微かに残っていた。

宮廷の新たな噂、そして侯爵の最後の足掻きの残滓。

それでも、今この瞬間、私は公爵の愛に完全に身を委ねていた。

庭園の中央にある白い東屋で、私はベンチに腰を下ろした。

風が薔薇の花弁を優しく揺らし、朝の光が私のドレスを金色に輝かせていた。

心の中で、公爵の言葉が繰り返し響いた。

「君には、あんな男より俺の方がふさわしい。」

「俺の女になれ、エレナ。」

その誓いは、婚約破棄の夜から、ますます深く私の胸に刻まれていた。

執事が庭園の小道を静かに歩み寄り、控えめに声を掛けた。

「伯爵令嬢殿。」

「ヴォロノフ公爵からの急使が、届いております。」

私は立ち上がり、心の鼓動がわずかに速まるのを感じた。

公爵からの手紙は、銀の封蝋で固く封じられていた。

中には、彼の力強い筆致で書かれた言葉が並んでいた。

「エレナ、領地の視察は順調だ。」

「夕方には必ず君の元に戻る。」

「侯爵の件は、完全に決着がついた。」

「彼の私兵の残党も、すべて捕らえられ、裁判の証人となる。」

「今頃、ボリソフは領地の館で、すべての希望を失い、孤独に沈んでいるはずだ。」

私は手紙を胸に当て、静かに微笑んだ。

心の奥底で、ざまあみろ、という思いが、再び甘く広がっていった。

あの男が、私の純粋さを踏みにじろうとした報い。

今、彼は権力の頂点から完全に滑り落ち、過去の罪に苛まれ、宮廷からも領地からも切り捨てられた存在となっていた。

執事が去った後、私は東屋に残り、手紙を何度も読み返した。

公爵の愛は、私の人生を完全に変え、黄金の光で満たしてくれていた。

庭園の鳥のさえずりが、優しく響き、朝の陽光が私の未来を照らしていた。

この朝は、私の恋がさらに深まる予感に満ちていた。

城館の日常は、静かに動き始め、私たちの運命を優しく、しかし力強く見守っていた。






















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ