再生
気づきたくなかった。
気づいてしまった。
拠り所を無くした船のようにあてどなく彷徨った。
ふと、暗闇の中に光るものを見つけた。
ぼんやりと光る灯に引き寄せられて、
僕は歩いていた。
まるで蛾みたいだと我ながら思うが、その光には、安心感だろうか、妙に惹かれるものがあったのだ。
だんだんと大きくなってゆく光に、あっと叫んだ。
光っているのはコンビニだったのだ。
僕はコンビニが嫌いだ。
資本主義やらなにやらをかき集めて一つ所に放り込んだようなあの空間が大っ嫌いだ。
二十四時間、存在を主張してくるやつらが目に入ってくるのがひどく鬱陶しかった。
そのはずだった。
目頭がじんと熱くなる。
思わずしゃがみ込み。ぺかぺかと光るコンビニの前からしばらく動くことが出来なかった。
「大丈夫ですか?」
優しい声がした。
若い女性だった。
なんでもないんです、と言おうとした。
ただちょっと、スマートフォンを忘れたのを思い出したんです。それがもう衝撃で。
そんなことより、いたづらにこんな夜中に他人に声を掛けるのは危ないですよ。それも若い女性が。僕が犯罪者だった可能性だってあるんですから。
手の甲に水滴が垂れる。雨だろうか。
「どうしたんですか?体調が悪いんですか?」
水が流れる源は、空ではなくて俺の目だった。
「いや、大丈夫です、ほんと、すみません。ちょっと、色々あって、ちょっと混乱してて、いま」
いったい何年振りだろう。声を上げて泣いた。
なんだよ。
なんだよ、なんだよ。
好きだった。好きだったんだ。
ちゃんと。
東の空が白んでゆく。
何はともあれまずは風呂でも浴びよう。
風呂をあびたら昼まで寝て、そしたら蕎麦でも食いに行こう。
全ては、それからだ。




