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あてどなく
火照った顔に夜風が沁みる。
衝動に身を任せて出てきてしまった。
夏の夜は思ったより肌寒く、薄着を後悔した。
一気に酔いの波が引いていく。
このあたりは都会から少し離れているから、夜道は暗い。
もっとも、自分の地元は街灯もない山の中だったから、別段困ることはないけれども。
ぐるりと散歩をして帰ろうと思った。
あーあ。
虚しさが霧のように立ち込める。
そいつらを振り払うようにただただ歩いた。
公園を猫が横切った。
「猫だ!」
横を向いて叫ぶ。
そこには、誰もいなかった。
彼女は猫が好きだった。
「いつか猫を飼いたいな。」
ずっとずっと言い続けていた。
「それなら、二人で住む時は動物可の物件にしよう。」
そうして今の家を借りた。
二人で猫を迎えることは、もう、ない。
気づいた。
気づいてしまった。
心のどこかで、彼女はきっと帰ってくるような気がしていた。
今も、家に帰ったら。
「さっきはごめんね。」
そういわれて。
「悪かった。俺も言いすぎたんだ。」
そう返事して。
仲直りの乾杯をして。
暖かい家で並んでテレビを観る。
そんな気がしていた。
彼女は、帰ってこないのだ。




