朝が来なければいいのに、、
「朝が来なければいい」――そう思ったことはありませんか?
仕事、責任、人間関係。
逃げ出したくなる日々の中で、
そんな小さな願いが、もしも“現実”になってしまったら――。
私はときどき、こう思うことがあります。
「朝なんて来なければいいのに」と。
朝が来なければ、仕事に行かなくてもいい。
嫌なことも、つらいことも、何も起きない。
そう思いながら、毎日いやいや車を運転して職場に向かい、ストレスを溜めては帰る――。
そんな日々の繰り返し。
だから今日もまた、「明日なんて来なければいいのに」と思いながら眠りにつきました。
ところがその日、いつもと少し違いました。
目が覚めると、外はまだ暗い。
「まだ夜か」と思い、もう一度眠ることにしました。
数時間後、再び目を覚ましても外は真っ暗。
おかしいと思い、携帯を見ると――
画面に表示された日付は“昨日”のまま。
「……え?」
本当に、朝が来なくなってしまったのです。
私は嬉しくなり、友達に電話をかけました。
でも、いくら呼び出しても応答はありません。
次に家族の様子を見ようと1階に降り、声をかけました。
「お母さん? お父さん?」
けれど返事はなく、どれだけ揺すっても動かない。
まるで“時間が止まっている”みたいでした。
テレビをつけても映像は止まり、音も出ない。
窓の外の車も、人も、風さえも動いていません。
動いているのは――私だけ。
どうすれば戻れるのか分からず、
何度も何度も「お願い、元に戻って」と祈りました。
けれど時間は動かない。
世界は夜のまま、静止したように沈んでいました。
そして今も私は、この止まった世界で、
来るはずのない“朝”を、ただひたすら待ち続けています。
――あんな願いを、しなければよかった。
誰もが一度は「明日なんて来なければいい」と思うかもしれません。
でも、朝が来ることは“苦しみ”であると同時に、
新しい一歩を踏み出す“希望”でもあるのだと思います。
この物語は、「逃げたい」と思った心が
どんな小さな願いでも現実を変えてしまう、
そんな“もしも”の世界を描きました。




