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魔導書を拾う  作者: jo2
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17. 温泉であったこと

桜島火山のオーガとの戦いが終わり、私たちは疲れを癒すために旅館に来ることになった。

なぜまたそんな場所に、と尋ねると、防衛庁が運営する旅館があるのに、九州まで来て手ぶらで帰るつもりかと問われた。


耳を傾けてしまう提案。

タダで行けるってことか。

それなら行かないわけにはいかない。


そうして今泊まっているのは、生まれて初めて訪れる高級旅館だった。


「レオ班長、休暇は今日から消化だぞ。」

「え?ユマや他の人たちは?」


やけに私まで巻き込もうとするレオ班長の言葉に、ぶっきらぼうに言った。


「班長、なぜ私を巻き込むんですか。」


もちろん、私が他の人に比べて何もしていないのは認める。

それでも、マサヒロ隊長を補佐し、心の中で防衛隊員を応援した私の気持ちが加わって、少しでも勝利に貢献したのではないだろうか…?


「皆、オーガを倒すのに苦労したんだから、次に向けて気力を回復する必要があるんじゃないか?まさかすぐに投入しろとは言わないだろうな?」

「うーん…私は飛行機から飛び降りたんですが、じゃあ休暇をもっともらうべきじゃないですか?」

「私はもっと与えようとしたんだが、君が1週間でいいって言ったじゃないか?」

「…じゃあ、追加で1週間だけください。」

「もう決済済みだから、覆すのは難しい。ダメだ。」

「あ、もう。」


温泉にも入った。

でも、温泉があんなに熱いとは。

最初は何も知らずに足を入れたら、皮膚が焼けるかと思った。

他の人たちはちょうどいい温度だと喜んでいたが……


温泉から上がって食事をしようとしたら、部屋に料理を運んでくれるルームサービスと、食堂で好きなものだけ選んで食べるビュッフェ式のどちらかを選べた。

私は当然ビュッフェ式を選んだ。


夕食をしっかり食べて部屋に入り、のんびり横になっていると、熱くて入れなかった温泉が思い出された。


ここまで来たのに、ただ帰るわけにはいかない。

私は酒をたっぷり飲んで伸びているレオ班長を部屋に残し、温泉に向かった。


湯気が立ち上る温泉に。

私は心の準備をして、足先を浸した。


「あ、熱っ……」


熱い。

大人たちはこういうのが好きなのだろうか?

それでも今回は足を抜かずにじっと我慢してみた。

お茶一杯飲むくらいの時間が経つと、なんとなく水温に慣れてきた。

慣れたというより、セルフ拷問のようだが、まあどうでもいい。

足先から膝を通り、太ももまで、そうやってゆっくりと温泉に体を浸した。


ものすごく熱い。

このままだと私のゴールデンボールが茹だってしまうかもしれない。


石に頭を預けて私は空を見上げた。

都会から遠く、空気がきれいなせいか、夜空に星がよく見える。


あの黄色くほのかに明るい星が北極星だったか。

何も考えずにこうして温泉に浸かっていると、人々がなぜ温泉を好きなのか分かる気がするな…このままじゃ中毒になるかも。


ちゃぽん。


誰かが温泉に入ってくる音が聞こえた。

この時間に私以外に誰か来る人がいるのか?


顔を上げて誰か見てみると。


「隊長、この時間にどうして…?」


私は慌てて立ち上がった。


「私もこの時間に人がいるとは思わなかったよ。立ってないで座りなさい。」


マサヒロ隊長が私の隣に近づいて座った。


なんだか気まずい。

個人的に会ったことは何度かあるが、こうして温泉に二人きりだと、以前のように楽しめそうになかった。

そろそろ出て牛乳でも飲むかと考えていると、彼が話しかけてきた。


「今まで成果はあったようか?」


主語のない言葉だったが。

何を言っているのか分かる気がする。

きっとレオ班長のことに違いない。


「まだ特異な行動は発見していません。」

「そうだろうな。スパイなら諜報に自信のある者を送っただろうし、でなければ何も出てこないだろうからな。悪く聞こえるかもしれないが、防衛隊に入ったばかりの君に大きな期待をしているわけではないから、そのことで心の負担を感じているなら下ろしても構わない。防衛庁は数人抜けたところで軋むようなずさんな組織ではないからな。」

「…はい。私も仕事で負担を感じるタイプではありません。」

「なら、よかった。」


口では必要ないと言ったが。

その中に込められた温かい気持ちが感じられた。


私もレオ班長と一緒にいると、時々隊長の任務を思い出させるが。

実力や経験から見て、たとえ彼がスパイだとしても見破るのは難しいだろうと思う。


心の中では、ただそうでないことを願うばかりだ。


事務的な話を終えると。

あくまで私の気分に過ぎないが。

温かい体とは裏腹に、雰囲気がぎこちなくなった気がして。

雰囲気を変えようと、マサヒロ隊長が使った能力が何だったのか尋ねることにした。


「以前、オーガを一撃で殺した時に昇天する龍?昇竜とおっしゃいましたが、それが隊長の能力ですか?」

「能力と言えば能力だし、違うと言えば違う。」


能力なのか、違うのか?


「どういうことですか?」

「はは、どういうことかと言うと…覚醒する時に一つずつ能力を得るだろう?」

「そうですね。」


私だけでも覚醒能力で念力を使えるし。

おまけに身体能力も見た目と違って格段に良くなった。


「私は覚醒能力で霊波という技術を使える知識を得たんだ。だからどっちつかずだと言ったのさ。」


つまり本源能力ではなく技術?

ものすごく強かったし、もし学べれば戦力上昇が飛躍的に上がるだろうと、欲が出た。


私は興奮した声で尋ねた。


「技術なら他の人も学べますか?」

「学べないことはない。」

「じゃあ、私に教えていただけませんか?」

「だけど誰でもは学べない。」

「やはりそういうのは弟子でないとダメなんでしょうね……」


私が学べないという言葉にしょんぼりしていると、彼が豪快に笑って言った。


「はは、そうじゃなくて、私も防衛隊員に教えたいんだけど、霊波を学べる適任者が別にいるんだ。」


ああ、そういうことだったのか。

確かにそんな技術に制約がないはずがない。


「残念ですね。色もきれいで、学べたらよかったのに。」


心底残念だった。

もし私にもっと力があったなら、レンにそんなことは起こらなかったかもしれないから。


「今、何と言った?」

「え?」

「今、何と言ったんだ?」


笑って話していた会話はどこへやら、急に変わった雰囲気に、マサヒロ隊長が真剣な顔で問い直した。


「ええと…学びたかった、という言葉ですか?」

「いや、その前だ。」

「よく覚えてないんですが…色がきれいだった…?」


ガシッ。


痛い。

隊長が私の肩を掴んで、どれだけ力を入れているのか血が通わなくて痺れるほどだった。


「ど、どんな色が見えた?」


両目を大きく見開いて問い詰める。

言わないと殺されるような目つきだったので。

私は記憶を辿りながら、彼の周りにあった色を思い出した。


「赤と紫だったような気がしますが、合ってますか?」


私の言葉に、マサヒロ隊長の口から呻き声が漏れた。

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