15. レオVSオーガ
超音速飛行機に乗っていると、スピーカーから「オーガが視界に捉えられました」という声が流れてきた。
オーガの移動速度を基に経路を予測し、我々が地上に降りた時に遭遇できるように操縦するという。
計画通りにいけばどんなに良いだろうか。世の中、いつも計画通りにはいかないものだ。
予期せぬ状況に人々がざわめいた。
「我々が遅かったのか?」
「オーガが速すぎるんだ。」
「隊長、どうしますか?」
「このままでは、我々が地上に降りる頃にはオーガは予測地点を通り過ぎてしまいますよ?」
全てのスケジュールは、我々が桜島火山から現れたオーガよりも早く行動するという前提で立てられたものだ。このままでは、オーガと都市で対峙しなければならないかもしれない。そうなれば、戦場となる福岡市の被害規模は計り知れないものになるだろう。
画面にオーガの姿が映し出された。
途方もない速度で動いており、行く手を阻むものは木であろうと車であろうと構うことなく、躊躇なく進んでいた。
シンイチロウ隊長が考えを終えたのか、口を開いた。
「レオ、お前が行け。」
「承知しました。ただし、私が死ぬ前に来てくださいね。終わったら一週間の休暇もください。」
頷き。
マサヒロ隊長の許可に、レオは歓声を上げながら席を立った。
休暇とはそんなに良いものなのだろうか。
「ユマ、俺が先に行くからゆっくり来いよ。」
「え?」
どういうことだ?
ここは飛行機の内部。
我々がいるのは空中だ。
高速道路のような場所ではない。
パラシュートのようなもので降りるというのだろうか?
しかし、レオ班長の姿からはパラシュートを身につける気配すら見えなかった。
彼は立ち上がったままドアの前に立つ。
そして私はすぐにレオ班長が言った言葉の意味を理解した。
ガタン。
プワアァー
ドアが開いた瞬間。
爆発するように押し寄せた風が機内をかき乱した。
目を開けられないほど風が吹き荒れる。
その中で、機内のドアを開けた当の本人は、聞き取れない言葉を残して消え去った。
「アディオスー」
◇
レオはドアを開けて飛び降りようとした瞬間。
どこかで聞いた異国の挨拶を思い出した。
「アディオスー」
こうするのだったか?
そして飛行機の外へのジャンプ。
「いやっほー!」
刃のような風が全身を包み込み、地上に縛り付けられていた足枷を断ち切った。胸がすくような解放感を満喫していると、雲間を落下する視界の下、人間が作った建造物と自然の光景が一幅の絵のように広がった。
本当に美しい光景だった。
飛行機から飛び降りるのは初めてだが、たまにはこうして気分転換をするのも悪くないと思えるほど爽快な気分を後にし、レオは自分の任務を思い出し、今回の作戦の目標であるオーガを探すために目を凝らした。
しかし、あまりにも高い高度と、目がくらむほど強い風圧が邪魔をした。
レオは砂漠で針を探す方がこれより簡単だと確信した。
遠くて識別が難しいなら、近づけばいいだけのこと。
低い高度に降りるために頭を下に向け。
矢が射られたように、大地に向かって真っ逆さまに落ちていった。
以前よりも速くなった落下速度にもかかわらず、レオは超人的な集中力を発揮して地上をなめ回した。そして戦車のように荒々しく疾走しているオーガを見つけた。
目標物を見つけた瞬間、覚醒能力を使用。
ユマやレンに見られた一部の変形とは異なり。
今回は全身を鋼鉄に変化させ、体を丸めた。
落下速度と質量の力で一撃を加えるためだった。
飛行機から飛び降りたが、自殺を望んだわけではない。
衝撃に備えるために頭を抱え、まもなく来る衝撃に備えた。
レオが体を丸めて空から大地へと落ちる瞬間。
鋼鉄でできた体と、前だけを見て疾走していたオーガが正面衝突した。
クワアアーン!
隕石が大地を強打するような衝撃に、まず地面が揺れる。
砂と土、小さな岩石が嵐のように跳ね上がり、空気は衝撃波で裂けた。
石ころが銃弾のように飛び散り。
土煙が舞い散る修羅場に。
レオは丸めていた体を伸ばした。
「ぺっ、ぺっ……」
臓器を保護するために口を少し開けたら、口の中に土がいっぱい入ってきて気分が悪くなったが、オーガの状態を確認するために急いで体を起こした。
半壊したオーガ。
いくらA級モンスターでも、無茶苦茶な質量と速度には耐えられなかったようだ。
A級モンスターと何回か戦ったことはあるが。
これまでは他の者たちと一緒に戦ったもので、単独行動は今回が初めてだった。普通は上半身の半分が吹き飛んだ時点で終わりも同然だが、今回は状況が違ったため、気を揉みながら心の中で「そのまま死ね」と繰り返した。
ブルク、ブルク。
レオの懸念が目の前で現実になった。
速いとは言えないが、傷口から赤いオーラがあふれ出し、肉が盛り上がり始めた。
「!!」
さすがA級。
力タイプに見えるが。
回復能力まで優れているとなると、相手にするには厄介な部類だ。
まだ怪我の半分も回復していないのに、どれほど頑丈なのか、殺気に満ちた眼差しで近づいてきた。
レオも空から落ちて負った怪我を回復するために周囲を見回した。
彼の能力は身体変化で、鋼鉄の体にしか変身できないが、力が飛躍的に上昇し、回復にも優れた能力を発揮した。
ちょうど、道路のガードレールがレオの目に留まった。
手を伸ばし、ガードレールの鋼鉄を吸収した。
インゴットを直接食べるよりも効率は高くないが。
このくらいの量なら、差し迫った火事を消すことはできるだろう。
レオは道路にあるガードレールを吸収し、最大限体を回復させた。
いつの間にか至近距離まで接近したオーガ。
巨大な肉体には傷一つ見当たらなかった。
力では相手にするのは骨が折れるだろう。
回復能力のせいで殺すこともできないので、このまま逃げて時間を稼ぐことはできるかもしれないが、もし奴が追ってこなければ、これまでの努力は全く意味がなくなる。
彼の役割は、仲間たちが来るまでオーガをこの場に釘付けにしておくことだ。
レオは不確実なことに冒険せず、ここで勝負を決めるという気持ちで、とりあえずぶつかった。
ドスン。
二つの存在が衝突すると、人間とモンスターが素手でぶつかったとは到底思えないような鈍い爆音が連続して響き渡った。
鋼鉄と化したレオの拳は破壊力を増し、オーガの岩のような筋肉は彼の攻撃を容易に受け止めた。
一歩下がればすぐに反撃が返ってきた。
アスファルトがえぐれ。
街路樹が折れ。
空気までもが振動する乱打戦の中。
衝撃で意識を失いそうになったが。
レオは歯を食いしばって拳を振り回した。
時間が経つにつれて、奴もダメージを受けていた。
ダメージを負ったオーガが口から黒い血を吐き出した。
ここにはもはや技術も戦術もない。
ただ、ぶつかり合い互いを倒そうとする意志だけが残った戦いの最中。
「レオー!」
その名を呼ぶ声に、レオは限界まで追い詰めていた精神を失った。