第七十七話 油断したくないもので
―――基本的に、相手が何であれ負ける気はない。
例外としては、自身の大事なご主人様による八百長での敗北などがあるだろうが、そんな命令は出されることはないだろう。
内蔵している武装も、日々着実に改良が進んでおり、かつては調整不足だったカノン砲も、0.0000001の狂いもなく適切な量で放出可能でもあるし、エネルギーの生成量も比較にならないほど増えている。
だがしかし、そんな身であったとしても…
(…油断してはいけないというのは、ありますからネ)
メイド足るもの、自身の力に驕りを持ってはいけない。
その決まり事は、姉妹機の中でも着実に受け継がれており、過去には慢心したことで無残にも主の目の間で爆散したという話も有るという。
そんな目に遭うつもりもないがゆえに、エリーゼは一時の状況把握も兼ねたこの休憩の場で、周囲の警戒を怠らないようにしつつ、準備を整えていた。
【‥‥良し、とりあえず道中のドロップアイテムも潤沢にありましたので、厳選したものを用いて装備品がかなり良くなりましたネ】
「わぉ、あのドロップ品の山が、エリーゼの手によってこんな武器に…」
自分の大事な主にわたすのは一振りのナイフ。
クロハが持っているタラテクトナイフとは異なり、こちらはつか部分から水が放水される仕掛け。
しかもただ水を打ち出すのではなく、瞬間的なウォーターカッターとして、鉄すら切れるように施したもの。
【あとは、個人的に要らないような気がしなくもないですが、防御力強化も兼ねての装備品デス】
【オレの大盾に何か付けているな?】
【アンコウマーマンからのドロップアイテム、『怪魚の目』を埋め込みまシタ。スイッチのオンオフで、狙いをずらせマス】
【…私には?】
【生魚のお面で十分でしょウ】
”いきなりひでぇ”
”前二人との落差がすさまじいなぁ…”
休憩しつつも、流れている視聴者たちのコメント。
その指摘は間違っては無い。でも、必要のなさは確かではある。
(認めたくはないですが、戦闘技術が道具に頼らなくても高いですからネ。ご主人様を乗せての機動力で、命を守ることも長けていますガ‥‥)
この面子の中で、道具が少ない状況でもかなりの脅威になるとすれば、クロハだろう。
サクラの防御力も侮れないが、今は生存力のほうが良い。
異土もまた素早く動けるが、人間であり、防御力もあるわけではない。
ゆえに、いざとなれば素早く逃げることができるクロハに乗ってもらうのが、もっともご主人様を活かすには良いのだが…
(…それでも、不安感しかないデス)
命の危機ではなく、貞操の危機がありそうなのが、普段の行いゆえか。
いざとなれば彼女の弱点も狙えなくはないが、それは切り札としておこう。
【…あとは、センサー感度で確認してみてと…やはり、何かいますね、コレ】
この先の、ガーディアンがいるはずのダンジョン最奥部。
この距離でも感じ取れる、強力なエネルギー源。
ダンジョンコアを守る、ラストガーディアン?
違う、その反応はあったが、先ほど急激に膨らんだ別の何かが、潰したようだ。
それがこれだが…いかんせん、どう考えてもろくでもないものしか感じ取れない。
間違いなく、何者かが手を加えてしでかしたことであり…少なくとも、このダンジョンを秘匿しようとしていた者たちがもっていたものではないこともまた、エリーゼには感じ取れていた。
(ほんのわずかでしたが、干渉もあったような…仕方がないですね、本当に非常時に備えてこちらも用意をしっかりしておきましょウ)
ここへ来る前にあった通信妨害も既に無力化している現状、その手段が使えないわけではない。
とはいえ、絶対に使いたくはないその手は奥にしまっておきつつ…非常時に備えての逃走ルートもエリーゼは構築し始めるのであった…
「それにしても、今更だけど…こんな肉感あふれる何かの生物の体内のようなダンジョンのガーディアンモンスターって何になるんだろう?」
”こういう場所だと、共生するような感じのものが多いらしい”
”ヤドリギとか、寄生虫とか…”
…コメントで流れてはいるが、そのガーディアンはもういない。
ダンジョンコアを守るべき守護神がすでに食い荒らされ、コアに手をかけられていることを。
ソレが本能的に、破壊したらこのダンジョンが壊れることを理解して、取り込みつつあることを…
不穏な空気を前に、準備を念入りに
奥の手はいくつか用意して、しっかりと対策を
それでも悪意は…次回に続く!!
…認めてはいるけど、やらかしそうなのがねぇ




