第七十五話 足並みそろわず
「ぬゎ、ぬわぁ、ぬわぁにを自らゲロるようなことをしでかしてんだ、我が国はぁあああああああああああああああああああああああああああ!!」
「ぐ、グーデンベルグ閣下!!落ち着いてください!!」
「閣下がご乱心なされたぞぉおおお!!」
…この秘匿すべきダンジョンの中の情報を暴露している配信自体は、まだ百歩譲ってギリギリ良くはあったグーデンベルグ。
異土チャンネルだが何だか知らないが、侵入者が堂々と配信している姿に関しては、このまま放置しておくだけでも、ギリギリ関わっていないなどの言い訳も出来そうだったが…そんな思惑をぶち壊すかのように、無能な味方からの射撃が入ってしまったのである。
”いやいや、本当に我が国は関わってございません!”
”ええ、ガチでマジで、これが軍部が勝手にやっただのと言うことも…”
「説明責任がド下手くそ!?」
「お、落ち着いてください閣下!!これが、我が国の広報部とかそういうわけでは」
「アカウントがおもいっくそ我が国のだよ!!おのれぇ、確かムーノンだったかそういう奴だったはずだが、なにをしでかしてくれてんだぁあああああああ!!」
怒髪冠を衝くとは、まさにこのことか。
激怒しまくっているグーデンベルグの姿に、部下たちは凶気すらも感じ取れるほどの怒りが見えた。
「幸い、まだギリギリボロボロこぼし過ぎているからこそ、逆に怪しすぎるからバレなさそうだが、このままでは時間の問題か…」
はぁはぁっと怒りも度が過ぎれば多少は平静を取り戻せるもので、グーデンベルグは考える。
一番最悪なのは、自国が元凶であることがばれてかつ、このダンジョンで得られるものは全て失われることだろうか。
「しかもよくよく考えれば、この配信チャンネルの相手か…ふむ」
異土チャンネル…それは、グーデンベルグから見ても並大抵の実力ではない配信者。
チャンネルの創設者である異土と言う少年自身は動きが素早いだけで、所詮はまだ幼げさがある人間なので、そこまで脅威ではない。
しかしながら、その他の面子が大問題しかないというべきか、軍を率いるものとしてはできれば当たりたくないのが事実だ。
ガトリング砲が火を噴き、鋼の巨大な鞭が振るわれ、癒しの光が無理やり捻じ曲げてくっつけ…敵として出てきた場合、大軍を率いたらどれほどの損害が出てもおかしくはない。
「うぐぐぐぐ…だ、だがこのままではガーディアンモンスターのいる場所まで…」
明かにだが、このまま進まれてはダンジョンが攻略されてしまう。
コアを守るモンスターも、この面子を前でどれほどやれるのかが分からない。
いや、このダンジョンでの採掘を行う合間に、調査をしていないわけでもなかったが…いかんせん、実力不足なのが目に見えている。
ゆえに、ここで取れる判断としては…撤退か、それとも攻めるか。
前者であれば物凄く惜しいが、今すぐに軍に被害が出るわけではない。
しかし、長期的に見ればダンジョンと言う資源の宝庫を見放したも同然であり、責任追及は免れないだろう。
後者であれば被害は甚大だが、これ以上何かしでかされるよりも、将来的なものを見れば得られるものがあるはず。
だが、その判断は最も愚かでしかないということも同時にわかっている。
(…このダンジョンにいるもの全軍仕向けても、いけるものなのか?並大抵の配信者であれば、軍で制圧できるが…この面子相手だと…)
軍を率いているからこそ、どれほどのやばい相手なのかも理解できる。
ゆえに、このままなら愚かな選択をしない…
‥‥そのはずだった。
【ナラ、チカラガホシイカ?】
「!?」
耳に響いた、誰かの声。
人ならざる存在のような、耳を傾けてはいけないような声の主。
この状況で素直にうなずく馬鹿はいないだろうが…いかんせん、状況が悪すぎた。
「ああ、欲しい…そうだ、力欲しい…!!」
下手をすればこのまま物理的に、自身の首が飛びかねない状況。
焦りが、怒りが、冷静な判断も狂わせて、悪魔の選択をしてしまう。
【--ナラ、アゲチャウヨウ】
キャハハッっと、どこかで無邪気で、異質な異界の悪意が牙を剥く。
その選択が何を産みだすのかはわからない。
ただ一つ、言えるとすればそれは…愚者になり下がった哀れな道化師が出来上がったことであった…




