第七十一話 ゴリゴリの理不尽
―――ダンジョンはびこるこの世界。
出現して以来、各国政府がその利権を巡ったり、痛い目を見たり、仲良くして腹黒く裏をかこうとしている国々の裏話も垣間見ることができるだろう。
いまでこそ、配信者と言う存在が出来上がったことで表に出すのは不味いということで引かえ目になっているところも多いが…それでも、人の溢れ出る邪悪な野心と言うものまでは、完全に抑えることができないのかもしれない。
「いや、むしろ野心が溢れたほうが良いか。得られるものが多いからな」
「そうでゲスなぁ。グーデンベルグ閣下」
‥‥その野心溢れる者たちの中で、とある大使館の中で紅茶を優雅に飲みながらそうつぶやく人物、グーデンベルグはゆったりとくつろぎながらそうつぶやいていた。
「何にせよ、ここが配信されなければそれだけで十分だな。この海洋ダンジョン…海の中に潜む巨大な怪魚で出来たダンジョン『ゴルベルズ』。この地に眠る魔法鉱石が、一体どれだけの富を生むのやら」
くくくと笑いを漏らしつつ、本日分の採掘量を見るだけでも、それがこらえきれなくなるだろう。
「それにしてもゲスが、その鉱石でどうしてこれほどまでの富が生まれるんでゲス?」
「正確に言えば、売却によるものではない…将来的に、我が国で生み出される兵器で、各国を蹂躙できる分を見越してだよ。この『ゲノマタイト』はそれだけの価値があるのだ」
「ははぁ…」
部下の言葉に対して、しっかりと答えて置くグーデンベルグ。
彼の手に持つその鉱石…このダンジョンで産出されるや否や、すぐさま確保に向かったこれは魔法鉱石『ゲノマタイト』と呼ばれるものだった。
アダマンタイトに、ミスリル、オリハルコンにヒヒイロカネ…有名どころのモノに関して言えば、各国では確保するために激しく争うこともあるだろう。
だがしかし、その中でゲノマタイトの有用性に関しては、まだダンジョンで出てくる魔法鉱石の歴史の中では浅く、知名度が大きいわけではない。
「とはいえ、知名度が低いがゆえに有用性が無いというわけではない。この鉱石単体ではなにも意味を持たないが…もう一つの鉱石があれば、爆発的な破壊力を産むことを、最近になって我が国が見つけたのだよ」
一方だけが見つかっても、単なる新物質でそこまで価値が無かった。
そこに新たに別のものを組み合わせることで…兵器として、非常に価値が高い代物になったのである。
「あまりも危険すぎるゆえに、詳細な情報は出回っていないがね」
「ほほぅ、そうなんでゲスなぁ。残念、知ったらそれはそれで面白そうなことに‥」
「その前に、他国へ情報を売り渡すだろう?」
「え」
「…さてと、既につかんでいたものは良いとしてだ…おい、掃除はしなくても良いぞ。死体はダンジョンが喰いつくすからな」
「はっ、しかし閣下、何かご不安な点でも?」
ずるずるとその部屋からいらないモノが運び出される中、呼び出された彼の部下たちがふとそう問いかける。
「ああ、この海洋ダンジョンは掘り尽くすまで秘匿するはずだったが…どうも、侵入者がいるらしいな?未だに、見つからないようだが」
「その件ですが、未だに捜査中です。ただ、間違いなくわが軍のレーダーにて、何者かがこのダンジョンのある怪魚の中に入り込んだものだということはわかっております」
グーデンベルグが気にしているのは、先ほど受け取りつつも、進展のない情報。
鉱石を取り尽くし、自国の有利を確立させるまでダンジョンを可能な限りバレないようにしていたつもりだったが、それでも全てを把握しきれず、どうも侵入者が入ったらしいという情報を彼は気にしているのだ。
「単なる偶然の遭難者ならまだしも、他国のスパイが気が付いて、入り込んできている可能性もある。先ほど始末した裏切り者も例にもれず、軍内部も一枚岩ではないからな…」
いや、そもそも捜索を行っているというのに、見つからない時点で怪しむべきだろう。
奥深くにまで侵入されており、もしも鉱石に関してすぐにはわからずとも、後でバレたらそれこそとんでもない不利益を産む可能性が非常に高い。
「…だが、入ったところでこのダンジョンから出るには軍港を抑えねばならぬだろうし…ふむ、すぐには出てこれぬな」
怪魚そのものが、ダンジョン。
管理する上ではそれがかなりの利を得ている。
入ってくるには、怪魚が大きく周囲の海水を吸い込む際に紛れなければならず、出るには内部で作られた軍港から潜水艦を経て出なければならない。
入る際にはどうしても事故で別の者が紛れ込むリスクがあるが…出ることに関しては容易くいかない構造ゆえに、侵入者はすぐに出ることができないだろう。
「何にせよ、見つけ次第拘束。場合によってはその場で発砲し、始末することを許可する。ただ、最悪の事態としては、ダンジョンコア…ここでは怪魚の心臓部に潜り込まれ、破壊でもされたら非常に不味い。そこまで行くのかはわからないが、確実に見つけ出せ」
「はっ!!」
ある程度の利益は得ているので、ここいらで去るのも一つの手段。
しかし、それでも余裕と言う者は気が付けば失われているものであり、可能ならば盤石な状態にしておきたいところであり、ダンジョンを失うわけにはいかない。
そう考え、グーデンベルグは部下たちへ指示を飛ばし、侵入者の確保を急がせ始めるのであった…
「…ところで閣下、本国への連絡はいかがいたしましょうか?」
「ああ、ジャミングでつながりが悪いがゆえに、しづらいが…念のために、後5分後にいったんジャミングをやめ、簡潔に報告しておこう。黙っても処分できそうだが、報連相を欠けさせて痛い目を見るのは歴史が証明しているからな…」
…さて、企みも運が良ければそのままだったが
今回は悪かった模様
どうなるかは…次回に続く!!
…配信微妙になってきたし、いっそいったん中断して新作やるべきか…




