第六十七話 水着騒動はポロリともげたり
「ーーーふぅ…疲れたぁ。一生懸命遊び終えた後に、波間を漂うのが楽過ぎる…」
【分かりますよ、主様…ぷかぷか漂いつつ、こうやって背中に乗せるのが幸せです…】
【その浮き輪を用意した私の苦労も見舞ってほしいものですけれどネ…というか】
【普通に、遭難だよな、コレ】
「【【…】】」
サクラの言葉に対して、全員が黙りこくる。
青い海、白い雲、これだけ見ればまだ南の島にいたと思うだろう。
だがしかし、現実と言うのは悲しいほどに甘くはなかった。
「というか、こうなった原因が二人にあるんだけど~~~~」
ぎゅうううう!!
【アイタタタタ…!!】
【いたいデフ、主様…!!】
確実に力では負けるが、ひとまずはこうなった元凶のエリーゼとクロハのほっぺをつねって怒る異土。
そう、現在異土たちは…見事に、海の上を漂っていた。
エリーゼの海難救助用に用意していたという即席浮き輪で身を寄せ合うが、どうしてこうなったのかは…
「大体、波打ち際でドッカンバッカン喧嘩したせいで、爆発で巻き込まれて海の上に落ちるとか、どこのやなかんじ~で吹っ飛ばされる子悪党だよ!!」
【しかもすさまじかったな爆風…アレで良く、オレたちが怪我しなかったな】
【試作マジックアイテム『こけおどし風船』でしたからネ。本来は、強烈な爆風と音で、相手をひるませるだけのもので…ダンジョン内で緊急時に、戦闘を避けたい時に全力でぶっ飛ばすためにだけに使えないかと思って持ってたんですよネ】
【そんなもの、私にぶつけないでくださいよ!?】
【貴女がご主人様を攫って全力ハネムーンとか浮かれポンチなことをやったからでしょうガ!!】
「二人とも喧嘩するな!!ただでさえ、爆発の衝撃で水着が吹っ飛んでいるだろうが!!」
【【ご主人様《主様》だけなら問題ないのでは?】】
「大・問・題だよ!!」
【オレが言えた義理はないが…その、暴れるたびにばゆんぼゆんっと間に主殿がいるせいで、弾力でメッチャ弾き飛ばされているからやめたほうが良いぞ】
【【うっ】】
呆れたように言うサクラの正論が、二人に突き刺さる。
はた目から見れば羨ましいかもしれない光景だが、当事者からすれば彼女たちが暴れるたびに弾き飛ばされてたまったものではない。
と言うか、見ちゃ駄目だと思って目を閉じているから、その分避けることができないというのも…スーパーボールのはじけ飛ぶ玉になった実感が、きつい。
「ひとまずは、この状況をどうにかしないと。エリーゼ、救難信号とか出せないか?」
【それが、吹っ飛んだ衝撃で…私たち、すっぽんぽんになったので、ポケットも何もかも流されたのデス】
【道具が出せないメイドは、ポケットの無い青狸みたいですね】
カチンッ
ガシャッ、バチィンッツ!!
【ピィウッ!?】
【…でも、腕変形が可能なので、ピンポイントで攻撃できる武器は出せますヨ】
「変形が可能なら、携帯とかなってよ…」
【クロハ…雉も鳴かずば撃たれまいだったのだが…】
【いえ、それが先ほどから実はSOS信号を出してますヨ。メイドたるもの、衛星もハッキングしてどこからでもご主人様の救援要請を出せるようにしているのですガ…】
「え?」
いまさらっと、やばそうな発言が聞こえた気がしなくもないが、その口ぶりには何か妙なところがある。
「出してるって言うけど、助けが来る様子が無いんだけど」
【…実は、ジャミングされている反応が出ていマス】
「は?」
まさかの、救難信号が届かないという状態。
いや、そもそも通信妨害と言うことは…
「助けを呼べないというか、どう考えてもヤバそうなのが近くにいるってことか?」
【そうなりますネ】
ダンジョンはびこるこの世の中、基本的に公に公開されているものが多い。
だがしかし、それでも人の欲望と言うものは隠しきれないものであり、噂程度ではあるが、どこかの国が資源溢れるダンジョンを見つからないように秘匿していたり、妨害工作をして見つけられないようにしている‥なんて話も、出てきたりするのだ。
そんな事情を知っているからこそ、ジャミングが発生している海域となれば、相当ヤバい予感しかしない。
「急いで離れないと…あ、というかエリーゼ、その変形機能で反動が強い砲を使っての推進は…」
ーーーゴゴゴ!!
【っ!!いけません、ご主人様!!】
【うぉっ!?な、なんだ、渦潮だと!?】
【駄目です!!糸で引っかかりを見つけたくともこれでは…!!】
「はあっ!?」
何やら不気味な水音が聞こえたかと思えば、引っ張られるような加速。
海の上で、まさかの渦潮が生じて…それに巻き込まれているようだ。
「逃げるしかないって、逃げられないか!!」
【駄目デス!!渦のほうが…】
…引き寄せられ、全員がギュッと異土を守るように囲んで抱きしめ、一気に水の中へ落ちていく。
自然のモノにしては強すぎる水流に流されつつも、異土は意識を失うのであった…
(…内部センサー、ジャミング反応…水中?いえ、これは…海底にダンジョン…?)
…水底へ、連れていかれるその先へ
何が待ち受けているのかはわからない
ただ一つ言えるのは…南の島、短かったな…
次回に続く!!
…上へ向かう者がいる一方で…




