表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/80

第五十七話 メイドだからこそ見ているのデス

―――深夜、寮の誰も彼もが寝静まり、寝息を立てていた。


 消灯され、本日は曇り空ゆえに星々の明かりが差し込むこともない、闇夜の中…その領の一室では目を光らせている存在がいた。



【---オートスキャン完了。本日も、その他怪しいものはいないようですネ】


 センサーを稼働させ、周囲に潜む悪意が無いのか確認するエリーゼ。


 マジックアイテムとして存在しているからこそ、他の生物のように眠る必要性もそこまでも無く…だからこそ、こういう夜間の油断する場に、文字通り警戒の目を光らせるのだ。


 


【ん…すぅ…】

【ふにゅっ…】


…すやすやと、室内で眠るクロハにサクラ。


 ハンモックに揺られ、巻き付く機を抱きしめ、穏やかに眠るのは個々がダンジョンの中ではない安全な場所だというのを理解しているからだろう。


 普段の配信時の中で、見せないような姿はこの場所限定と言うべきか。


(いえ、ご主人様の側で安らぐ時も見れますネ)



 ちゃっかりクロハが自身の器用さを活かして、異土を模して作ったぬいぐるみをぎゅうと豊満な胸で抱きしめ潰している姿を見ると、そんなことが容易に想像できる。


 あと絶対に、一緒に寝かせたらこのひしゃげかけて中身が飛び出かけているぬいぐるみのようなことになるのも目に見えているため、やらかす未来にならないようにしようとも心に思う。




 まぁ、それはどうでも良いとして、今は別のことに目を向けたい。



【…それで、そちらは起きているようですが、眠れていないのでしょうカ】

「…どうやら、わかっていたようですわね」


 エリーゼが目を向ければ、ベッドで寝息を立てていた雪夜が目を覚まし、そうつぶやく。


 むくっと体を起こし向き直るが…その目の色は、昼間に見たものとは異なっていた。




 昼間に見た時は、その透き通るような青白い髪色に合わせたような、深い蒼色。


 しかし今、その目の色合いは…薄い金色に変化していた。


「それに、その感じ…おそらく、わたくしがどういうものなのか、もうわかってますわね?」

【ええ、ハイ】


 メイドだからこそ、ご主人様の周囲にある者たちの素性を把握することは必要であり…許しが無ければそこまで調べることもなかったが、今回ここまで近くに来たからこそ、彼女は自動で解析してしまい…そして、雪夜が何なのか理解してしまった。


【見た目こそ人であり、風呂に入ったり布団で熱を籠ったりしてますが…()()()()()()()()()()()()()()()()()?】

「…」


 センサーが捕らえた、人としてあってはならないもの。


 メイドたるもの、人の体調管理にしっかりと眼を光らせるのだが…雪夜のその中身は、人ではありえないほど低すぎる。


【そのうえで、色々と探った結果…おそらくは、『雪女』ですネ】

「…驚きましたわ。まさか、そこまで言い当てるとは」


 驚愕したように目を見開く雪夜。


 その姿はいつの間にか、先ほどまで来ていたパジャマ姿から昼間の着物…いや、氷を纏っているかのような透き通るもの変化しており、周囲の気温がわずかに下がった。





…そう、雪夜は人ではない。


 雪女…冷気を纏った、妖。



「でも、モンスターではないですわ。ダンジョンのほうが、外からのモノで、わたくしのようなのは…そうですわね、わかりやすく例えるのなら、在来種?とかそういうものですわ」

【外来種扱い…ううむ、間違ってはない…のかもデス?】


 その例えに首を傾げたエリーゼだったが、それでも正体を看破したのには間違いない。


 

【ですが…そうだとすると、貴女の元々の父親はその雪女の母親ト…】

「あ、そこは違いますわよ。あのドぐされ外道は、本当に最悪でしたもの」


 雪夜が人ではなく雪女であるのならば、その母親も雪女。


 ならば、かつてのDV下衆男がそのような存在と交われたのかと思ったが、そうではないらしい。


 かくかくしかじかと雪夜の説明によれば…かつての父親、異土にとっての二番目の父にして数々の最悪の愚行を犯した外道は…偶然、とある雪山にて、まだ赤子だった雪夜を見つけ攫ったのだ。


 つまり、最初から連れ子と言うよりも堂々とした誘拐犯だった。


【思いっきりその時点で、アウトですネ。いえ、まずその赤子の時のことを覚えているのハ】

「ええ、不思議かもしれないですけれども、覚えてますの。…あの外道、恐らくはわたくしをゆっくりと育て上げ、見世物小屋に売りつけるか、はたまたは考え無しか、あるいは本当に大馬鹿すぎて飛びぬけていたのか…そこまではわからないですわね」

【愚者の思考と言うものは、読めないものですからネ】


 とにもかくにも、そんな父親…いや、情報が集まってくるにつれて色々と頭のおかしすぎる父親に色々と恐れおののくが、まだ幼い時は逆らえなかった。


 暴力で脅され、将来を見越すあの外道な目。

 

 再婚した異土の母親に必死でやめるように説得しようも、何をどうしてかふせぎきれず、起きてしまった暴力の日々。


 そんな中で人に絶望する中だったが…それでも、消えることはなかった。


「…闇の中のような、最悪の中でもお兄様はわたくしを、助けてくださったのですわ」


 父からの暴力に耐え、雪夜が傷つかないようにして、少しづつその証拠も固めた日々。


しっかりと警察に訴えることができるようにして下地を固め、血のつながりが無いとはいえ妹を守ろうとする兄の姿はどれほどまで頼りになり、そして救われたか。



「まぁ、お兄様は今もですけれども、小柄なもので…わたしくも当時はまだまだ非力であと少しでと言う時で…あの愚か者はしでかしたのですわ」

【というト?】

「…わたくしたちの用意していた証拠を見つけて…愚者でも不味いことを理解して激高して大暴れして…お兄様が、命の危機に陥りかけたのですの」

【…】


 普段も酷かったが、その時はさらに比較にならないほど怒り狂った愚か者。


 雪夜を殴ろうとしたその拳を異土がかばい、それに余計に邪魔だてされたことに腹を立てたのか更に暴行を加え‥‥雪夜の目の前で、異土の命が奪われそうになった。


「あの時のことはもう、思い出したくもないですわね。…怒りに飲まれ、わたくしは何をしでかしたのか、よく覚えていなかったというのも正しいですわ。でも、気が付いた時には男は体の一部を残して消え失せ、部屋中が凍り付いて…ええ、暴走したともいえますわ」



 何が起きたのか、実は正確にはわかっていない。


 しかし、その後に起きた父の末路を考えると、何か気に触れるような…それこそ、瘴気を失わせるだけのことをやってしまったのだろう。


 幸いと言うべきか、異土自身も何が起きたのか、あるいは命の灯がギリギリだったゆえに覚えることができなかったのか、その真相は…闇に葬られた。


 それでも、何かしでかしたのは間違いないからこそ、雪夜は自身の力を畏れ、何よりも大事な兄に畏れられたくないと思い、隠すことにしたのだ。








―――そして現在、異土には雪夜の力は知られておらず、その容姿の違いも単純に彼女の本当の母親がそういう色合いの外人でもあったのだろうと思われている程度で済んでいるらしい。


「雪女と言いましても、わたくし熱に耐性があるようなので、常人とさほど変わらない生活が出来たのでほぼバレなかったですわね。というか、お兄様は自身の尊厳の危機とかには敏感なのに、家族を見る目は激甘なのか…問題は無いのですけれども、もうちょっとこう…」

【バレないほうが都合が良いけれども、どんかんすぎて逆に心配になってきてしまうト】

「そうなのですわよ!!ああもう、お兄様なら心配はないと思いたいけれども、うっかりあのドぐされ外道な人と再婚するようなお母様の血を引きますもの!!お兄様も一歩間違えて、ろくな女に引っ掛からないかそれはもう心配で心配で‥‥!!」




 心からの、思いのこもり過ぎているその言葉に思わずエリーゼは同情する。


 哀れなものを見る目と言うべきか、それとも苦労人な姿に本当はDV男よりも何よりも兄のことを心配しまくっていたのではなかろうかと。


【まぁ、大丈夫ですヨ。ご主人様ならば、変な女に引っ掛かることはないデス。そのようなもの、私たちのほうが許さないですからネ】

「あの、わたくしとしては貴女たちも十分変な女カテゴリですわよ」

【---え”】






…フォローしたつもりが、何の慰めにもなっていないようであった。


自覚無いものほど厄介である

まぁ、自覚以前に周囲が色々あり過ぎたらね…

次回に続く!!



…そんなこともあって、家族仲としてはまだ悪くはないが…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ