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第五十二話 向こうから来ないのであれば、こっちからくるもので

―――家族とは常に一緒にいるものではない。


 巣から巣立つ鳥のように、いつしか独り立ちして離れていくもの。


 それでも、心が通じ合っているのならばいつでも一緒のようなものであり…それでいて、思う心があるのならば、多少は顔を見せに来るべきであろう。


 たとえそれが何の名目であっても良いのだが…




(…それでも、寮生活で離れるだけの距離とはいえ、夏休みぐらいは帰ってきてと言いたいのに…!!)


 ぷんすかと怒りを隠さずに、配信を見ているひとりの少女。


 目の前の画面に映るのは、ここ最近彼女の同級生の間でも見るようになった配信映像であり…



『さて、今日の異土チャンネルが潜っているのは、中級ダンジョン【ゴブロノストン】!!こういうダンジョンでは定番だけど、悲しいことに容姿の関係でコボルトとかに人気を取られつつある場所だからこそ、結構湧き出てきている様子!!』


 しゅばばっと素早く画面内を駆け抜け、疾走する一人の少年。


 ローブに身を包みながら一つの風となり、次々に前衛に出てきたゴブリンたちの背後に回っては素早くナイフを軽く振いながら即座に解体し、魔石を貫いては抜きとり、振るわれた石斧を軽く薄いローブの布地で容易く受け止め、次の瞬間には別の場所へ身を移し、ヒットアンドアウェイの戦術ですぐに攻撃から身を守る。


 その素早い動きを止めようとして、退路を断つためかゴブリンアーチャーたちが弓を構えて弓の雨あられを降らして仕留めようとするが、その前に彼らの前に大きな鉄の壁が立ちはだかる。


【どっせぇぇぇい!!】

ドッゴオォォォン!!

【【【ゴブェェェェ!!】】】


 振りかぶられるのは、鋼に輝く巨大な蛇の尻尾。


 薙ぎ払うようにして弓矢を構えていたゴブリンたちが瞬時に瓦解し、吹き飛ばされていく。


【ゴゴンブ!?】

【ゴゴゴゴ!!】


【おっと、私の大事な主様(ぬしさま)に傷つけるのはむりですよ】

ザシュンッツ!!

【【ゴブェエッツ!?】】



 いつの間にか彼らの背後に忍び寄っていた、大きな蜘蛛の影。


 振り返る間もなく、瞬時に漆黒のナイフが降るわれて宙を舞い、何分割にもされた肉体はいくつか取られたかと思えば…


ギュッツ、ボンッツ!!

【【【ゴボボブウウッツ!?】】】


 さくっと蜘蛛の糸で多くのゴブリンたちがまとめ上げられ、ぎゅっと一袋にされて白い光が包んだかと思えば、一気に巨大で醜悪な肉塊へと変貌する。



【そぉれっ!】


 何やら色々と尊厳やら何でもかんでも潰したかのようにして、群れへ肉塊が投げつけられ、爆散する。


 元からそうであったかのように一つの肉で出来上がっていたその醜悪な肉団子は、ぶつけられた衝撃であっけなく縫合が解けたかのようにばらけて、肉の弾丸となって群れへ牙を剥く。


【ゴブェェテツ!!】

【ゴブゲェェエ!!】


 押し寄せる肉弾丸の津波。


 一気に流されて、壊滅していく群れに追撃として・・・・




ズダダダダダッツ!!

【【ブェェェエエエ!!】】


「…ふぅ、とりあえずこれで良いでしょうか」


 残さず掃除するかのように、メイドの腕から煙が上がり、すぐに元の形状へ切り替わる。



 ものの数分、それでも出てくる映像は色々衝撃的な物ばかり。


 一応は自動補正で多少のグロそうな部分はモザイクが思いっきり入ったが、それでも彼らの戦闘力は目を見張るものがあるだろう。



 これぞ、異土チャンネル…たった一つのマジックアイテムのメイドを掘り当ててから、何かと仲間に恵まれ続けていった配信者の姿。


 高校生ではあるが、見た目がややショタ気味であり、周囲が中々大きなお姉さんだからこそおねショタのような雰囲気も味わえつつ、規格外の力を有した者の集まりでもあるため、配信者の中でも目を引かれる者たちであることは間違いない。


 だがしかし、彼女にとってはそんなことはどうでも良い。


「うぐぐぐ…ここまで強くなっているのは良いけど、距離がちっかぁぁいい…!!」


 ぎりぃっと歯ぎしりを立てつつ、画面に映る映像に腹を立てる声。





「やっぱり、やっぱり…だめっ!!お兄様に、この巨峰三姉妹は危険すぎる!!」


 だぁんっと音を立てて、思わずそう叫ぶのは、大事な相手を思ってのものなのだろうか、それとも鏡を見ていないからだろうか。




 とにもかくにも、映像で元気な姿見れるからでにこやかに過ごしていた時間は過ぎ、今はもう黙っていることはできない。


「お母さん!やっぱり私、お兄様の元へ突撃してくるーーーーーーーーー!!」


 やらない善行よりもやる偽善。


 動かぬ怠惰よりも有言実行即行動の大爆走。


 その声は家中を響き渡り、すぐさま彼女は行動に移すのであった…






「え、行くのは良いけど迷わないかって?大丈夫大丈夫!!お兄様のバッグにGPSを仕込んで…って、いつの間にか反応が無い!?」












「…ん?なんか今、悪寒がしたような」

【大丈夫ですか、ご主人様?】

「いや、まぁ問題は無い…かな?」


暴走するは思う心

例えそれがどんなものであれ

人によってはかなりの迷惑を被るもので…

次回に続く!!



…ちょっとかわいいの買った…でも何このやる気のない顔…これはこれで良いな

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